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着物デビューしました
長く憧れを抱きながらも近づけなかった和装に、生まれて初めて挑戦してみました。
思えば私は、昔から和風のものが好きで、趣味で書いている小説も、初めて発表した長編は和風ファンタジーでした。とりわけ和装が好きで、綺麗に重ねられた衿や、腕の動きに合わせて揺れる袖を見ると、胸がときめいていました。
そんな私ですが、物心ついてから、着物とはあまり縁がありませんでした。浴衣でさえ、着付けを必要としないタイプのものしか着たことがない有様です。大学の卒業式の袴も、成人式の振袖も、私は着ておらず、その晴れ着を諦めた気持ちも、今振り返れば、ずっとこじらせていたように思います。
着物に挑戦してみようと一歩を踏み出したきっかけは、端的に言えば、年齢でした。
好きなブランドの服が、年齢的に、そろそろ「卒業」しないといけないな、と感じ始めていたのです。
もちろん、「年齢なんて関係なく好きな服を着れば良い」という考え方もあることは知っています。でも私は、そのブランドの服を着ることに、違和感を覚えるようになってしまいました。好きだけど、しっくりこないという、矛盾。そうなってしまったら、好きだったはずの服も、着ていて楽しくありません。
今の私が、楽しく着られる服はどれだろう――今までのブランドより年齢層の高いブランドの服を、私は見てみました。けれど、着たいと思える服は、見当たりませんでした。
年相応の服には好きなものがなく、好きだった服はもう私には若すぎて自分自身に違和感を覚えてしまう……私は暗澹たる気持ちになっていました。
着ていて心がときめく服がほしい――気持ちが停滞する日々の中で、ふと、ひとつの選択肢が浮かびました。
着物なら、どうだろう――行き止まりだった道が、開けたような心地がしました。
ずっと憧れて、でもなかなか一歩を踏み出せなかった和装。挑戦するなら、今なんじゃないか。
調べてみると、普段着レベルなら、家で洗えて、新品でも洋服と変わらない値段で売っている着物はたくさんありました。呉服屋さんや着物のリサイクルショップに行くのは緊張してしまうけど、ネットショップなら落ち着いて自分のペースで選べます。着付けに必要な道具も、一式セットで売っていました。
あと越えるべきハードルは、着付けでした。私は完全な初心者で、着付けの知識はゼロ。着付け教室に通ったほうが良いのかなとも思ったのですが、フルタイムで働いていると、急な残業や休日出勤もあって、なかなか決まった曜日や時間に通えないし、先生との相性も心配……普段着として自分で着るだけなら、独学でも何とかならないだろうか……悩みつつ調べていくうちに、私はひとつの動画に辿り着きました。
本当に分かりやすくて、全くの未経験だった私でも、無理なくついていくことができました。途中でつまずいてしまったところがあっても、動画なら自分のペースで一旦停止できるし、何度でも戻って確認できます。
ネットショップから届いた着物と道具を用意して、初挑戦。
約2時間半かかりましたが、初めてにしては上出来ではと思えるクオリティで着ることができました。
カジュアルに着たかったので、下はカラータイツにパンプスを合わせて、上は防寒を兼ねて帽子を被りました。
着ていて心がときめく服――これだ!と思いました。
せっかくなので、そのまま着物に合う鞄を買いに出かけました。途中で着崩れて崩壊したらどうしよう、とか、着物警察って今もいるのかな、とか、一抹の不安もよぎりましたが、杞憂でした。往復5時間、そこそこの距離を歩き回っても、自分で気づくレベルの崩れはなく、着物警察にも遭わず、それどころか、鞄のショップで店員さんに、着物のコーディネートすてきですねと(たとえお世辞だったとしても)嬉しいお言葉をいただいて、明るい気持ちで過ごすことができました。
プライベートでは自分の好きな服を着たい、しっくりくる服を着たい、着ていて楽しい気持ちになれる服を着たい――それを叶えてくれたのが、私の場合、着物でした。
もちろん、格式とか、マナーとか、気をつけるべきことがたくさんあることも、着物について調べていく中で知りました。でも、普段着としてカジュアルに着るだけなら、着物は思ったよりずっと自由であることも知りました。
もっと綺麗に着られるように練習を重ねつつ、コーディネートを楽しんでいきたいと思います。