![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/43552739/rectangle_large_type_2_50eb01cd206146f030dcd36ced2271d6.jpeg?width=1200)
12234にこだわる (後編)
前回につづき、12234の形にこだわっていきます。今回はヘッドレス1シャンテンのケースを扱います。
前半部分は説明が長いのでサラッと読みたい方は
後半の牌図が続くところからお読みください
ヘッドレス形ということは、12234の部分に1メンツ1雀頭または1メンツを見込むことになります。
12234を含むヘッドレス1シャンテンは、浮き牌のポジション、連続形の良形ターツの有無、暗刻を含むかどうかなどでパターンが多くなり、その結果1を切るのか、2を切るのか、あるいは浮き牌を切るかの判断が比較的難しいケースが存在します。
そこでまずは基本事項となりますが、1シャンテンの手から打牌をする際に必要な判断要素を挙げてみたいと思います。
※1シャンテン時の打牌判断要素(平面的判断)
(1)テンパイまでの受け入れ枚数
(2)テンパイ形のアガリやすさ(愚形、リャンメン、3面張以上など)
(3)アガリ時の打点
(4)特定の牌を残すことによる変化(好形変化、打点上昇)
(5)単騎待ちの仮テンにどのくらい価値を置くか
1シャンテンの手から何を切るかの判断材料としては、シャンテンが進む受け入れ枚数を計算して「何種何枚だからAを切る」という手法がよく用いられます。この中で良形待ちになる受けだけをカウントすることも多いかと思います。
しかしこれは上記の要素のうち、(1)と(2)の中の愚形か非愚形かを評価をしたに過ぎません。もちろんこの5つの中で(1)の要素が一番重要になりますが、(3)や(4)を無視した判断では片手落ちになりますし、(2)についても愚形待ちと良形待ちは明確に区別するのに、リャンメンと3面張以上を並列で扱うのはやや雑と言えます(例えば12345のリャンメンと4面張との比較ともなれば、アガリ率はかなり違ってくるのではないでしょうか)。(5)は愚形まで含めた受け入れを想定した際の考慮要素になりますが、単騎待ち仮テンの猶予があるかどうかは巡目や相対速度の影響も大きくなりますので、これをどう評価するのかはとても難しい問題です(平面的には評価困難です)。
ということで今回紹介する牌姿については
①受け入れ枚数(良形待ちになる受けと、愚形を含めた全受け入れ枚数)
②得点期待値(親のドラなし6巡目の数値をツモアガリ確率計算機で求めた)
を示し、期待値がツモアガリ想定で計算された結果であることを踏まえた上での総合的な判断を、私なりに記載させていただいております。
また12234から1か2を切る場合は、1を切ることでタンヤオが付く場合はほとんどのケースで1を切るのが正着となります。その他の分かり切ったケースも省かせていただくこととし、受け入れ枚数と実際の推奨打牌のイメージが異なるケースを中心に紹介していきます。
打1m:6種20枚
得点期待値:925→1023
打2m:6種20枚
得点期待値:925→952
打6p:6種20枚(9種29枚)
得点期待値:927→991
凡例)
表示された枚数は良形テンパイの受け入れ枚数(良形とは亜リャンメン、ノベタン以上の待ち)であり、カッコ表示があるものは悪形も含めたトータルの受け入れ枚数を示します。得点期待値については左側の数値が手変わりを考慮しない場合、矢印の右側の数値は手変わりを1枚考慮した場合の数値です。
得点期待値についての説明)
※手変わりを考慮しない場合の期待値
打1m:925,打2m:925,打6p:927
「手変わりを考慮しない」というのは「テンパイする牌以外はツモ切り、テンパイしたらそれを最終形として計算した場合」の期待値です。赤5m引きのテンパイは考慮されていないので、実際は打1mが打2mより少しだけ有利になるはずです。打6pはテンパイ確率こそ高いものの、愚形テンパイがそのまま最終形になってしまう計算法ですのでアガリ率が有意に高くなるとは言えず、トータルの期待値としてはそれぞれ微差という結果になりました。実際の麻雀には手変わりがあるのでこの数値は参考程度になりますが、全く無意味かと言われるとそうでもなく、おおよその大勢はこの数値に反映されていることが多いです。
※手変わりを1枚考慮した場合の期待値
打1m:1023,打2m:952,打6p:991
それぞれの打牌においてすんなり良形テンパイする場合はそれが最終形となります。そうでないツモを引いた場合に、1枚の手変わりがどのように反映されているかを考えてみます。
(1)打1m
ツモ3mは打6p、ツモ4mは打6p、ツモ5p,7p,8pは打2m、ツモ4s,5sは打2m
(2)打2m
ツモ3mは打3m、ツモ5mは打6p、ツモ5p,7p,8pは打1m、ツモ4s,5sは打1m
(3)打6p
ツモ3mは打4sで仮テン、ツモ4s,5sは打1m
まず打1mの場合を考えてみます。実戦でツモ3mの場合はツモ切りが無難ではありますが、打6pとして4s,5sの縦引きで高めイーペーコーのフリテンリーチを打つ含みを持たせる戦略も悪くはありません(あまり大差はない気がします)。
しかしこの計算機はツモあがり専門のためフリテンの影響がありません。よってこの場合は打6p優位という結果が出力されるので、この点は実戦とずれています。しかし、上記のツモ3mのケースが最終結果にどの程度影響を及ぼすかと言われれば、それほど大きく影響しないことが予想されるため、打1mの期待値は打2mよりやや高めに出ているという程度の解釈で問題はありません。
打2mにおけるツモ3mはツモ切りで問題なく、ツモ5mは打6pです。ピンズとソーズの変化は打1mと同様です。
打6pにおける4s,5sの縦重なりはテンパイ取らずになりますが、ここでも打1mと打4s(5s)に分岐があります。これも個人的には微差かなと思いますが、計算機はやはり打1m優位という結果を出します(理由は上記と同様)。したがってこの牌姿であれば打6p側にも同様の期待値上乗せが少しされていると考えられます。
※得点期待値に関するまとめ
以下の例においてもこの計算機の期待値を載せていきますので、内部でどのような計算がなされていそうか、解釈にあたりどのような注意点が必要かを先に述べさせていただきました(私が開発者というわけではないので、推測の域を出ないことはご容赦ください)。
この計算機の結果を信頼するかどうかについては当然賛否あると思いますが、私自身が実戦感覚とどの程度ズレがあるかについて、相当数をシミュレートしてきた経験で言いますと、今回の記事の出力結果についてはそのまま参考にしていただいて概ね問題はないと考えています。いずれにしても今回はややチャレンジングな内容になりますので、私の書いてることを信じるかどうかは皆様自身でご判断いただければ幸いです(笑)。
ということで前置きが長くなりましたが、牌図1の打牌について改めて検討してみると、上記の結果から打1mと打6pの期待値に大差はないという結論になります。受け入れ枚数だけみれば打6pの方が多いですが、良形テンパイの受け入れ枚数に差はなく、打1mの際にツモ3mで単騎テンパイに取れないロスは、ピンズやソーズ引きでの変化量でカバーされると解釈できます。また打2mとしても大きな問題はありません。今回はピンズが6678pでしたが6789pなら打9p寄りとなり、5678pであれば打1m寄りとなります。しかし、それらが大きな差を生むというわけでもありません。
打1m:6種19枚
得点期待値:814→1324
打2m:6種20枚
得点期待値:813→1093
打6p:7種22枚(11種34枚)
得点期待値:832→1046
今回のメインディッシュともいえるケースです。牌図1との違いはソーズのリャンメンが連続形になったことです。打1mは瞬間的な受け入れでは打6pに劣りますが(=手変わりなしの期待値は打6pが上です)、ピンズやソーズの有効牌が多く、最終的にタンヤオが付く変化も多いことから、総合期待値では上回ります。このくらいの差があれば打1m優位と言っても差し支えないでしょう。枚数だけを正確に数えてもそれが正解とは限らない例です。
打1m:6種20枚
得点期待値:683→868
打2m:6種20枚
得点期待値:738→864
打6p:7種23枚(9種29枚)
得点期待値:837→862
ここからは暗刻を含んだケースです。打2mは36s引きの打6pリーチでツモると符ハネするというややマニアックな牌姿です。いずれも微差の結果となりましたが、打1mが先述の通り(ツモ3mの分で)やや高めに見積もられていることを考えると、打2mか打6pが僅かに良さそうです。しかしとにかく僅差ですので正直どれを切っても良く、場況重視の判断になることに変わりはありません。
打1m:6種21枚
得点期待値:766→908
打2m:6種21枚
得点期待値:766→875
打6p:7種23枚(9種29枚)
得点期待値:746→870
今度は暗刻を含む複合形が出てきました。類似形の牌図1より全体にやや期待値が低いことや、打6pの期待値がやや劣る理由は、ピンフが付く受け入れが少ない点に関係しています。ただしトータルでは各選択の期待値はほぼ同じと解釈できます。
打1m:6種21枚
得点期待値:959→1285
打2m:6種21枚
得点期待値:959→1085
打6p:7種23枚(9種29枚)
得点期待値:972→1302
牌図4の789sを999sに変えてみました。そうするとこれは現麻本P59の牌8とそっくりの牌姿なります。打2mだけ期待値が落ちるのは三暗刻変化がないためと考えられます。ここでは打1mと打6pが候補になり、僅かに打6pが有利という結果になりました。
打1m:6種20枚
得点期待値:667→1161
打2m:6種20枚
得点期待値:667→936
打6p:7種22枚(11種34枚)
得点期待値:649→902
牌図4のリャンメンターツを12345sの連続形に変えました。打1mの期待値が高いのは牌図2と同じ理由です。
打1m:7種25枚
得点期待値:1166→1207
打2m:7種25枚
得点期待値:1166→1181
打6p:7種23枚(9種29枚)
得点期待値:799→913
牌図4の6888pを3面張の6777pに変えました。打1mと打2mは打6pに比べて良形テンパイの受け入れが多いだけでなく、ピンズの3面張を最終形に残せる可能性がある分、アガリ率でも有利です。またピンフが付く確率も高くなりますので、打6pより期待値が高くなります。逆に有効な手変わり要素がほとんどないため、手変わりなしの期待値でも十分な数値になっていることが確認できると思います。打1mと打2mは大差なしという結果でしたが、「ツモ5mがある分、打2mの方が良いのではないか?」と考えることもできるため、それを以下の参考牌姿で考察してみます。
打1m:7種25枚
得点期待値:1166→1211
打5m:7種25枚
得点期待値:1166→1182
打6p:10種33枚
得点期待値:1045→1055
牌図7で打2mを選択し、その後5mをツモった14枚の形です。ここでの打1mと打5mの微差は、打1m→ツモ6mの際のフリテン3面張受けの変化を考慮しているだけなので、(赤5m受けを考慮しなければ)打1mと打5mの差はほぼないと考えられます。しかし打6pとの比較についてはいかがでしょうか。良形の受け入れ枚数が8枚も違えば、打6pが優位と思われた方も多いのではないでしょうか。
実は以前、この牌姿についてネマタさんにお聞きしたことがありました。「計算機の結果はこうだけど流石に6pを切るって仰るだろうな~」と思いながら先入観なく聞いてみると、「どちらかと言えば1mを切ることの方が多そうです」という回答をいただき、大変驚いたことが今でも印象に残っています。理由は一緒で、ピンフが付く受けの多さと3面張テンパイの可能性、更に12345mの36m待ちがあまり優れたリャンメンではないということを挙げられていました。両者の優劣は難しいところですが、少なくとも打1mが打6pより有意に劣るとは言えないため、6pを切らないケースも十分にありそうです。
そこで最後に牌図7の話に戻ります。打2mとして5mをツモったとしても、打6pを選択しないケースがあることが分かりましたので、打2mが打1mより明確に優れているとは言えないということになります。よって両者の選択の期待値はほぼ同じと考えて良さそうです。
【まとめ】
・判断に迷うケースを取り扱ったこともあり、全体的に「大差がない」と形容した記載が多かったと思います。しかし私は、「十分に精査をした上でどちらを選んでも良い」と判断することには価値があると思っています。大差がないことが判明している訳ですから、自信を持って立体的判断で選択をすれば良い訳です。
・「変化や打点を重視し過ぎていないか?」
このような質問が聞こえてきそうです。確かにその要素はあるかもしれませんし、私も厳密な優劣については分かりません。なのでより感覚にあった選択をしていただければ良いと思います。ただし一つ言えることは、「大差がない」とか「ほぼ同じ」と結論付けたものは本当に微差である可能性があるため、選択Aしか引き出しにないプレーヤーは、場況によって選択Bを選ぶと言いつつも、実際はほぼ選択Aしか選べていない可能性がありますので、その点には注意が必要です。
・下記のような受け入れ枚数を表示する便利なツールがあり、私も結構使います。今回の記事を書くまでは、ヘッドレス1シャンテンの選択は「良形の受け入れ枚数至上主義」でした。というかその正確な数え上げですら、正直今でも怪しい訳ですが、今回のトピックで言えば枚数的にやや不利でも12234から1や2を切る機会がそれなりにあるということを確認することができたのが収穫でした。以上です。
参考図書)
勝つための現代麻雀技術論 ネマタ著 福地誠編