三麻データ本の解釈 その2
今回は、天鳳三麻における「押し引き」についてです。
『データで勝つ三人麻雀』の押し引きの項目では、各シチュエーションにおける「要求打点」が示されています。
著者のみーにんさんが「この本のキモ」と表現されている通り、斬新かつ圧巻のデータ群と言えるのではないでしょうか。三麻の強者は自身の押し引きの答え合わせに使っているとも聞きます。
しかし、この数値を記憶するのは相当厳しいため、データを実戦に活かすには「翻数への落とし込み」が必要になります。
ところがこの作業を実際にやってみると、ある程度ざっくりにならざるを得ないことが分かります。例えば同じ2翻の手でも30符と40符では期待値が違う訳ですが、あらゆるパターンに対応しようとすると、今度は煩雑過ぎて機能性を失ってしまいます。
注)私が追いかけリーチの押し引きを考えるときは、30符と40符の平均値を目安にしています。またフーロ手の30符とダマ30符は同等に扱っていますが、ダマの40符は局収支が少し高くなるため+0.5翻相当になると考えています。
次に、例えば「テンパイ時に15%の危険度の牌を切る」という想定をしたとしても、実戦で牌の危険度を詳細に精査することはできませんので、牌の危険度に関する最低限の知識も必要です。さらにベタオリと比較してプラスマイナスゼロとなる要求打点が分かったとしても、いざ押して良いのか引いた方が良いのかもよく分かりません。
したがって私は、15%の危険度の牌を切るという前提を置きつつ、危険度20%のラインまで考慮に入れて必要翻数を決めています。ということは少し厳しめな基準で作成してありますので、表示されている翻数であれば平面的には押して問題ないと考えていただいて結構です。
とはいえ、ファジーな要素が複数あったり自分の主観で決めている部分もありますので、内容の信憑性については皆様のご判断にお任せいたします。おそらくこちらに掲載している表と全く同じものは他に存在しないと思いますので、ご質問等があれば宜しくお願いします。
【押し引き表を使用する際に必要となる知識】
・ベタオリの局収支がどの程度か理解している。
・ベタオリ成功率の高い手牌が前提になっていることを知っている。
・要求打点とはベタオリした場合の局収支との比較で、イーブンになる打点のことである。
・押す場合の自分のアガリ素点やリーチ棒の扱いについて理解している。
・危険度15%の牌とは、11巡目で残り筋が6本ある場合の無筋19や無筋28の牌が目安である。なお、無筋456は危険度20%を超えるので該当しない。
・役ありの手は「追いかけリーチvsオリ」だけでなく、ダマテンにした場合の比較も考える必要がある。
①リャンメン待ちでリーチに押せる翻数
(1) 危険牌を切ってテンパイする場合
先制リーチに対して、11巡目に危険度15~20%の牌を切るときの押し引きについて考えます。表の見方は以下の通りです。
表の凡例)
◉1翻
1翻あればベタオリより押す方が局収支プラスになる(宣言牌の危険度が15%なら概ねプラス、危険度20%の牌でも±0付近かプラス域)。
◉1~2翻
1翻だと微妙だが(宣言牌の危険度が15%なら±0付近だが危険度20%の牌だとマイナス域、あるいは30符と40符の間に境界線がある)、2翻あれば押し有利になる。
◉抜きの数
リーチ者が北(抜きドラ)を抜いている枚数
※追いかけリーチできる翻数
自分親 子対子 子対親
抜き0 1翻 1翻 1~2翻
抜き1 1翻 2翻 2~3翻
抜き2 1翻 2〜3翻 3~4翻
※フーロ手かダマで押せる翻数 (30符)
自分親 子対子 子対親
抜き0 1翻 1~2翻 2~3翻
抜き1 1翻 2~3翻 3~4翻
抜き2 1~2翻 3~4翻 4翻
注)ダマ40符は+0.5翻相当になります
(2) アンパイを切ってテンパイする場合
アンパイを切ってリャンメンテンパイする場合は、ほぼ全ての場面でリーチがベタオリよりも局収支で上回ります。例えばこんなケースです。
例)北を2枚抜いている親が先制リーチをしている状況で、自分は11巡目にアンパイを切ってリャンメンテンパイしました。その際の要求打点は2700点になります。一方、子の40符1翻のリーチの期待打点は3800点、30符2翻の期待打点は4700点となるため、いずれも要求打点を満たしています。
以上より、アンパイ切りリーチであれば、北を2枚抜いている親のリーチ(平均放銃打点14700点)に対しても、リーチのみやメンピンで追っかけてもベタオリ(-3000点)より局収支が良くなるという計算になります。
「いや、それは無謀じゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし局収支の解釈としてはこれで正しそうです。私自身も四麻で同様の押し引きに関する局収支を計算したことがありますが、牌譜解析結果を元にした各パラメータを代入していくと、だいたいこんなものかなという感じで特に大きな違和感はありませんでした。裏を返すとベタオリ時の-3000点の存在が、いかに大きいかを物語っています。
とはいえ、40符1翻の追っかけリーチはベタオリに比べて+500点程度の局収支増にとどまりますので、状況によってやむなくダマにすることは十分ありそうです。40符2翻あれば基本はリーチですが、リーチすれば自身の打点に関係なく約6回に1回は15000点程度を失うという事実も受け入れる必要があります。
少し難しいのが、アンパイを切って1翻の役ありテンパイになる場合です。局収支自体はダマツッパよりリーチした方が上ですが、ダマテンにしたときにベタオリよりやや有利になる程度の場合は、ダマを考慮します(→目安は下記の表をご参照ください)。
※アンパイ切りで、役あり1翻手をリャンメンテンパイする場合の追いかけリーチ判断
自分親 子対子 子対親
抜き0 リーチ リーチ 微妙
抜き1 リーチ 微妙 ダマ
抜き2 リーチ ダマ ダマ
ダマにするメリットは「濃い危険牌で降りられる」「スライドで放銃を回避できる」という主要な理由のほかに、「脇のもう一人がベタオリとは限らない」という不確定要素への対応や、「鳳凰卓八段以上や特上卓六段のポイント配分なら放銃回避が優先される」というルールへの順応性などが挙げられます。
リーチに耐えないという理由でダマを選択した場合、どの牌を引いたらオリるのか?については、アンパイ切り良形テンパイの牌譜解析の結果を参考にします。アガリ率が48.7%で放銃率が16.6%ということは危険度15%程度までの放銃リスクは許容できますが、危険度20%程度の牌を引いたら撤収するというのが一つの戦略になると考えています(→個人的な意見です)。逆にダマでも当面突っ張れる手なのであればリーチして局収支アップを狙います。またリャンメン待ちと言っても期待できるアガリ率は局面によって結構違いますので、山に居そうで自信のある待ちなら、更にリーチ寄りになると言えそうです。
②愚形待ちでリーチに押せる翻数
(1) 危険牌を切ってテンパイする場合
条件はリャンメン待ちの場合と同じで、先制リーチに対して11巡目に危険度15~20%の牌を切ることを想定します。
※追いかけリーチできる翻数
自分親 子対子 子対親
抜き0 1~2翻 3翻 4翻
抜き1 2~3翻 4翻 5~6翻
抜き2 3翻 5〜6翻 7~8翻
※フーロ手かダマで押せる翻数 (30符)
自分親 子対子 子対親
抜き0 2翻 3翻 4翻
抜き1 3翻 4翻 5~6翻
抜き2 3~4翻 4~6翻 6~8翻
注)ダマ40符は+0.5翻相当になります
役無し愚形待ちの手に関しては上記の基準でリーチ判断を決めて良いと思います。ここで敢えて役無しに限ったということは、役ありの場合は必ずしもリーチが有利になるとは限らないということです。
リャンメン待ちの場合は危険牌を切ってテンパイする場合でもほぼリーチで問題ないのですが、愚形待ちの場合は「アガリ率が低下」して「放銃率が上昇」することから、1翻低い役ありダマとの局収支差が薄まります。そのサンプルケースを一つ提示します。
南1局の2着目の手牌ですが、ここでは分かりやすく開局の場合の押し引きを考えてみます。
抜き2枚の子のリーチに対して、自分は8巡目に愚形ダマ4翻(リーチ5翻)の役アリのテンパイをしました。テンパイ時に切る牌は2sですので危険度はおよそ12%程度と考えられます。
まず追いかけリーチをする場合ですが、要求打点は約9000点、自分のアガリ時収入点は11100点、アガリ率は31%程度ですので、ベタオリより650点ほど局収支が高くなりそうです。
一方、ダマゼンツする場合の要求打点は約7000点、自分のアガリ時収入点は8100点、アガリ率は31%、放銃率も約31%となります。よってダマゼンツした場合もベタオリより340点ほど局収支が高くなります。
この状況は、①の(2)の2枚抜きの親リーチに安全牌を切ってピンフのみをテンパイする場合に似ています。ダマにした場合のベタオリとの局収支差が小さいことから、とりあえずダマ4翻役ありのテンパイを選択し、危険度20%程度の牌を引いたらオリも考慮するのが柔軟に思えます。中盤のマンガン手でも状況次第でオリる可能性がある訳ですから、天鳳三麻の愚形テンパイがいかに不利かを物語っているシーンとも言えます。
もし仮に上家のリーチが抜きドラのない子のリーチなら、ダマテンで危険牌を引いてもオリる必要がないだけの局収支がありますので、基本的にリーチが有利です。しかし愚形テンパイの場合はリャンメンに比べてリーチとダマの局収支差が小さくなりますので、アガれる見込みが薄いなど、少しでもダマ寄りの要素があればダマにしても問題はありません。
(2) アンパイを切ってテンパイする場合
リーチに危険牌を切ってもダマテンにすることがあるのが三麻の愚形テンパイですから、全体として「三麻の愚形テンパイの押し引きは多様性に富んでいて難しい」というのが結論です。
アンパイを切ってテンパイする場合についても、役ありの場合は自分の翻数等でリーチかダマかの判断が変わり、ダマの場合にどの危険牌まで押せるかは相手のステータスによって変わってくるため、全てのパターンを一般化して解説するのは難しいです。ここでは分かりやすく役無しで追いかけリーチできる翻数を示しておきます。
※自分が追いかけリーチできる翻数
自分親 子対子 子対親
抜き0 1翻 1~2翻 2翻
抜き1 1翻 2翻 3翻
抜き2 1~2翻 2〜3翻 3~4翻
③良形確定の1シャンテンでリーチに押せる翻数
最後におまけですが、リャンメンx2の1シャンテンの場合に押せる翻数の目安も載せておきます。詳細な解説は省きますので、前提条件等は「データで勝つ三人麻雀」のP146からの説明文をよくご覧になってください。
8巡目に切る初手の危険度が約10%(片無筋456程度)、テンパイ時に切る牌の危険度も約10%という設定です。
※リャンメンx2の1シャンテンで押せる翻数
自分親 子対子 子対親
抜き0 2翻 3~4翻 4~5翻
抜き1 2~3翻 4~5翻 6~7翻
抜き2 3~4翻 6翻 8翻以上
三麻データ本の解釈は以上となります。
前回・今回と2回にわたり、みーにんさんの著書から沢山のデータを引用させていただき、誠にありがとうございました。
今回の押し引きの記事は要求打点の翻数変換だけでなく、独自路線の個人的な解釈も盛り込みましたので、多少間違ったことを書いている可能性も否定はできません。拙い部分があった場合は、無名の麻雀好きの記事ということでご容赦いただければ幸いです。
参考図書)
データで勝つ三人麻雀 みーにん著 福地誠編
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