フォロー牌の先切りについて
最近はどこのnoteや動画でも
似たようなテーマを扱うことが多くなった印象です。それだけ記事にしたいと思うようなネタはみんな似通っている、ということなんでしょうね。
さすがにコピペだけして記事にするような人は居ないので、各々が自分なりに噛み砕いて味付けし、更に洗練されたものとして発信できればそれで良いのではないかと私は思っています。
というわけで、今回のテーマは既に色々な方が書かれている内容です。重要な部分を出来るだけ網羅しつつ、オリジナリティを出せる部分があればそこにもこだわって書いてみたいと思います。
このような手でフォロー牌である7sを先に切るか、完全1シャンテンをキープするか?という話になります。
もし麻雀が1人でやるゲームであれば、常に完全1シャンテンに取るのが正解になりますよね。
しかし対人ゲームであればそうもいかないわけですが、10年くらい前までは基本的には「完全1シャンテンに受けるのがセオリー」みたいな風潮がありました。そのためか
といった河の字牌切りリーチなら、先切りのマタギである8sや9sは比較的通りやすい、という捨て牌読みの講座もあったような気がします。
麻雀は1シャンテン時がいわゆるボトルネックになっているため、これらの理論も部分的にはもちろん正しいわけですが
「トータルバランスで考えたらどうなのか?」ということに一石を投じたのが、雀ゴロKさんの著書である『現代麻雀最新セオリー』に書かれている内容でした。2017年12月発刊なのでちょうど3年が経過したことになります。
要約すると…
四麻の子で、ピンフのみの完全1シャンテンの手牌に完全安牌を引いた場合であれば
①フォロー牌が両無筋456なら、5-14巡目はフォロー牌を先切り
②フォロー牌が2378牌なら、8-13巡目はフォロー牌を先切り
というのが結論でした(縦受けの残り枚数が4枚残っていることが前提だと思われます)。
更にデータを提供したnisiさんのブログを参照すると、自分が親の場合は
①フォロー牌が両無筋456なら、8-13巡目はフォロー牌を先切り
②フォロー牌が2378牌なら、常に完全1シャンテンが有利
ということで、親なら完全1シャンテン寄りになっています。これは実戦の感覚ともマッチしているのではないでしょうか。
また、自分にドラが多い場合は放銃時の失点が相対的に低くなるため、先ほどの基準より少し完全1シャンテン寄りになることが予想されます。
しかし、「勝負手だからこそ先切りしてスリムに構える」ことを大事にする強者が多いように、自分が高打点だからといって基準が大幅に変わることはないと思われます(仕掛けられるマンガン以上の手は別で、基本ブクブクにします)。
その他、ゆうせーさんの著書の『実戦でよく出る麻雀講義』においても、完全1シャンテンに取る基準と取らない基準の目安を分かりやすく説明されています。イメージとしては、先ほどの雀ゴロKさんの基準よりも少し先切りを意識した内容になっていたかと思います。
それではこれらの著書を参考にしつつ、私なりの解釈も含めたフォロー牌先切りの基準や考え方を書いていこうと思います。
◉先切りしない基準
①鳴ける手
縦受けの枚数や場況にもよりますが、これは完全1シャンテンを維持する上での強い根拠になります。具体例などの詳細は割愛します。
②最序盤、終盤
1-3巡目の最序盤は素直に受け入れを最大化します。逆に終盤(捨て牌3段目)はフォロー牌を場に切り出すリスクが高まっていることに加え、形式テンパイを狙うメリットもありますので、先切りする効果は薄くなります。
③アガリ優先の局面
親やラス目の場合はテンパイチャンスを高める手組が相対的に有利になります(特に高打点手の場合)。またフォロー牌を跨ぐリャンメンが薄い場合も、先切りは不利になります。
④ドラ受けの対応や2度受けの解消
これは具体的な牌姿がないと分かりづらいので、ゆうせーさんの著書から類似の牌姿を提示させていただきます。
7sを先切りして良い場面だとしても、ドラの7p引きを考慮するなら打西となります(三麻はらドラにこだわるシーンは少なくなります)。ただしドラが7pでなくても、69sが弱くて69pが強ければメンツを振り替えるメリットは十分にあります。
こちらはソーズの2度受けを解消できる2p,4pツモに期待して、完全1シャンテンに受けます。これは割と頻出する形ですが、特に意識しなくても自然と西を切っていることも多そうです。
◉先切りを考慮する要素
①縦受けが2枚以上飛んでいる
縦受けが薄くなればフォロー牌を残すメリットが小さくなりますので、イメージしやすいかと思います。あと、少し形は違いますが「トイツ+トイツ+両面トイツ」の1シャンテンも受け入れが2枚しか増えないため、コーツ手が絡まない限りはフォロー牌の先切りを考慮します。
②フォロー牌の危険度が高いとき(3-7牌)
平面的には内側の牌ほど危険度が高まりますが、実戦では場況を確認しながらフォロー牌の危険度を推定することが重要です。先切りの対象になるのは3-7牌のことが多いですが、牌種よりもその場の牌の危険度で考えたいところです。
とはいえ、これはフォロー牌が6でしかも同じ筋で4枚使いになっています。こういう場合は典型的な先切りの対象となります。また自分が子の場合は、親に対して危険な牌なら先切りしますが、安そうな子に対してはブクブクに構えても問題はありません。
③中盤(捨て牌2段目)
捨て牌2段目に入ってまだ1シャンテンということは、テンパイしたときには後手を踏む可能性が高まっていると考えられます。よって中盤に入ったら先切りする選択をなるべく意識するようにします。
④先切りすることでピンフやその他の手役が付く場合
安牌との兼ね合いだけなら完全1シャンテンとそこまで差がつかないことも多いですが、先切りをすることで手役が確定する場合は先切り有利になりやすいです。ピンフが付くケースが最も多いですが、三色や一通の高めが出やすくなるような場合は更に差が顕著となります。
上記の参考牌姿は通常の先切りとは違い、フォロー牌同士の選択です。7sを切った方が受け入れ枚数は1枚多くなりますが、ピンフ高め一盃口を確定させる打3pの方が期待値的には優秀です。「受け入れを狭めて手役を確定させる」という意味では、先切りと似たような思考になるかと思います。
⑤手牌に3面張がある場合
上記のような3面トイツがある場合はフォロー牌を外してもテンパイ確率が高く、かつ3面待ちが残りやすくなりますので、先切り優位になりやすいです。
このケースは上記ほどではありませんが、リャンメンターツ2つの場合に比べれば、先切り寄りになります。ただし「ブクブクに受けて3面張で曲げる」という戦術もアリですので、どちらを選ぶかは状況次第になりそうです。
⑥相手の高打点が見えている場合(ドラポン、染め手、三麻の抜き枚数)
相手に対して危険なフォロー牌を手に残すということは、テンパイ確率を上げることと引き換えに放銃リスクを高める選択になります。したがって放銃打点が高いと分かっている場合は、先切り優位になる局面が増えます。
◉基準を使う上での注意点
①リャンシャンテン以下の場合
上記は1シャンテンでの目安でしたので、リャンシャンテン以下の場合は、先切りする巡目を少し早めるのが自然です(特にピンフ系の手牌は先切りする頻度が高くなります)。ただしテンパイから遠いということは手牌を構成するパターンも多くなるため、トイツ手やコーツ手が狙える場合はその都度の判断も必要です。
ここでは役牌トイツがある場合の例を考えてみます。
役牌ポンを前提にする手組ですから、3トイツの進行がベストです(4トイツをキープして5トイツになってもチートイツは見ない牌姿です)。よってここからは最終形の69pをイメージして7pを切り、西をホールドします。
この場合は4sの危険度と8pポンのしやすさを考慮して4sを切り、ソーズのリャンメンを固定します。
このように複合ターツの種類によって固定するターツが変わるのも面白い点です。実戦では切られている枚数や場況によっても変わりますので、更に判断は複雑になります。
②アンパイ候補の牌の安全度
先ほどの「現代麻雀セオリー」の基準は完全安牌をツモった場合の話でした。実戦では完全安牌を抱えられないことも多いわけですが、ブクブクになるのを必要以上に恐れて「何となく通りそう」な牌を抱えてまで受け入れを狭めてしまうのは良くありません。特に生牌の字牌をアンパイ候補と見なすのは少し厳しいため、先切りする際には留意したいところです(ただし役牌でポン→ロンになりそうな場合は先切り優位です)。ということでフォロー牌を切って手にとどめる安全牌の目安は「1枚切れ以上の字牌」と考えられますが、変則手の人がいる場合は別途注意が必要になります。
③巡目について
「序盤・中盤・終盤」などの巡目の記載については分かりやすい基準を作る上での目安でしかないため、河の情報から相手の相対速度を推定し、適宜調整を入れることが重要となります。
④最終的には総合判断
判断する項目が比較的多岐に及んだこともあり、「何項目を満たせば先切り」というデジタルな指針は決めないことにしました。「先切りしない基準」に該当しなければその時点で先切りする余地があり、「先切りを考慮する要素」が多ければ多いほど先切りに傾く、といったイメージです。
◉字牌切りリーチの読み方
ここまでを復習をすると
対戦者全員が遅そうな場合を除けば、中盤(7-12巡目)になったら先切りを考慮する必要があると述べました。
一方で、最序盤(1-3巡目)はあまり手を狭める必要がないことも説明しました。
もうお気づきだと思いますが、敢えて序盤(4-6巡目)については言及しませんでした。
その理由は5巡目前後については「どちらでもいい」と考えられるからです。それだけに打ち手の特徴が出やすくなるとも言えます。
これは以前、三麻のフリー雀荘で先制リーチを受けたときの河です。元々ブクブク傾向の強かった私からすると、8sや9sはかなり通りやすく見えましたが、見事に先切りの69sに刺さりました。
ここで、記事の一番上の方に挙げた8巡目の西切りリーチの河の画像と比較してみます。河の濃さには大差がないので、違うのは5巡目か8巡目かという差しかありません。
8巡目リーチの方については、これまで解説したことを踏まえると、相手が先切りを好む打ち手でないとしても、先切り牌のマタギは決して安全と言えるレベルではないことが分かると思います。とはいえリーチ者側に複数の選択の余地がある以上、リーチ宣言牌が数牌の場合に比べればやや安全ですが、押し引きに使いやすいレベルの安全度かと言われると疑問が残ります。
一方、5巡目の字牌切りリーチであれば、先切りのマタギは一般的には通りやすいと考えて良いと思います。「一般的に」と条件を付けたのは対戦相手次第では変わるという意味であり、更に言えば人読みのウエイトが大きくなるということになります。
つまり、ほとんど先切りをしない相手であれば筋19くらいの感覚でも切れそうですが、先切りを好む相手であれば立派な危険筋の一つになるということです。
このように「自分が○○するから相手も○○するだろう」という思考法は、この手の読みに関してはあまりマッチしないことになります。
そのためリーチを受けた局面だけに限定すると、先切りをよくしてくるタイプは少し厄介な存在になると言えます(その代わり一定の確率でテンパイをロスしているので、先手を取られる頻度自体は少し下がっています)。
先切りの可能性の高低を河から読むとすれば、先切り牌が他家の河に切られているかどうかの確認が一つ。あともう一つは宣言牌の字牌の性質にも依ります。先切りを好む人は手に留めた字牌の安全度にも概ね敏感ですから、宣言牌の字牌が完全安牌に近いほど先切りを疑う要因になります。逆に宣言牌の字牌が生牌の役牌などであれば先切りの可能性は少し下がり、重なりを期待したなど別の要因で保持していた可能性が増えます。
あとは点数状況や場況など、これまでに述べた先切りの基準と照らし合わせることも重要です。分かりやすいところで言えば、例えば同じ人でもラス目の親なのかトップ目の子なのかでは、先切りする確率がかなり変わることもご理解いただけるかと思います。
◉三麻ルール別の先切りの有効性
最後にオマケです。
四麻もルールやご祝儀等によって色々違ってくると思いますが、ここではルールによる差が大きい三麻のいくつかのケースをご紹介します。
そもそも三麻は、四麻より先切りが出やすくなるフィールドです(自分も相手も)。場況や他家との相対速度にも依りますが、四麻より牌種が少ないので受け入れ1種を狭めても相対的にテンパイ確率が下がりにくく、かつ将来の危険度が高くなるためです。
それでは具体的に見ていこうと思います。
※先切り優位になりやすいルール
①ツモ損ありの三麻 (天鳳など)
【有利な点】
・出アガリした方が打点が高くなる(ピンフがつく手なら尚更)
・先切りすることによって出アガリしやすくなる
・先切りすることによって放銃率と放銃失点が抑えられ、押し返しやすくなる
【不利な点】
・フォロー牌を先切りすることによってテンパイ確率(アガリ率)が低下する。相手に先手を取られやすくなる。
ただし天鳳の鳳凰卓レベルになると、メンツが固定されやすくなる上に、相手に合わせた戦術を取り入れるプレーヤーも増えてきますので、必ずしも先切りが有効になるとは限りません。
②ツモ損なしの全赤三麻(祝儀比率低め)
【有利な点】
・先切りすることによって出アガリしやすくなる
・先切りすることによって放銃率と放銃失点が抑えられ、押し返しやすくなる
【不利な点】
・フォロー牌を先切りすることによってテンパイ確率(アガリ率)が低下する。相手に先手を取られやすくなる。
祝儀比率の低いツモ損なしの全赤ルールの場合です(抜きドラもあり)。先切りにはメリットもデメリットもありますが、放銃打点が高いルールであることを考慮すると、フォロー牌を先切りすることによって放銃失点を抑える戦略がやや有利に働くように思います。
※あまり先切りしないルール
③ツモ損なしの全赤三麻(祝儀比率高め)
【有利な点】
・完全1シャンテンにすることでテンパイ確率(アガリ率)が高くなる
【不利な点】
・危険ゾーンが分かりやすくなってしまう
・危険なフォロー牌を抱えることで放銃率と放銃失点が大きくなり、押し返す際も回し打ちで迂回させられる
全赤に限った話ではありませんが、順位点に比してチップ比重が大きいルールでは、いかに相手より先にテンパイを入れ、一発、裏ドラ、祝儀牌による恩恵を増やせるかどうかが重要な戦略になります。
例えば、5巡目リーチの69sで刺さったケースも、祝儀比率の高い場であればあるほど、先切りのマタギの安全度は高くなりそうです。これは四麻のピン東などでも同じようなことが言えるのではないでしょうか。
今年の私のnoteは以上となります。
来年も楽しい麻雀ライフを送りましょう!