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要件設計の失敗を防ぐ!採用成功へ導く考え方と進行方法
こんにちは!中途採用支援事業部 事業部長の大山です。
自社が求める人材に対して、妥当な要件設計ができているのか、不安や疑問を感じている企業や担当者は少なくないかもしれません。
そこで、本記事ではそのような疑問や不安を解消するために、「適切な要件設計・設計の方法」をご紹介いたします。
要件設計の失敗を防ぐために必要な考え方
中途採用を始める際には、大前提として、採用活動の目的を明確にすることが重要です。
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そして、それが退職者の補充といった欠員を補うためのものなのか、新規ポジションの創設や事業拡大・新しい部署の設立といった前向きな取り組みなのか、2つのプロセスに分けて考える必要があります。
次のステップとしては、要件を設計し、それを求人票に反映させ、選考時の基準とすることが求められます。しかし、この要件設計がうまくいかないケースとして、2つの代表的なパターンが存在します。
【パターン1】
新規ポジションの創設や事業拡大、新しい部署の設立目的の場合、要件が現実的ではなく、理想を追いすぎた内容になっている
【パターン2】
退職者の補充を目的とし、既存業務が明確に設計されている場合、前任者の経験やスキルをそのまま要件として設計してしまう
組織には達成すべきミッションが存在し、そのミッションに向けてチーム全体で業務を進めることがほとんどです。そのため、本来はそのミッションを達成するために必要な体制を計画し、その中で各メンバーにどのような役割を担ってもらうかを明確にした上で、要件を設計するべきです。
要件設計が失敗する例
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<新規ビジネスの場合>
例えば、非常に能力の高い方が30人在籍しているベンチャーフェーズのコンサルティング会社が「大手コンサルティングファームで就業しているプロフェッショナルを採用したい」とスカウトを送信しても、企業の知名度が低いことが原因で、希望に合う人材からの応募を獲得することが難しい場合があります。
<退職者の補充を行う場合>
現職者のスキルや実績を基準にしがちで、現実的ではない高望みの要件を設計してしまうことがあります。
【例】人事担当のAさんが退職する場合
Aさんは予算作成、人員計画作成、媒体選定、選考業務がすべてできる上に、アトラクト力もあった。さらにエンジニア対応もこなせて、役員とのコミュニケーションも円滑に行い、人事企画の経験も豊富だった。
だから、Aさんのような人材が欲しい。
「自社視点」に偏った採用設計が抱えるリスク
要件設計が失敗する原因の一つとして、市場を全く意識せず、自分本位な要件に偏ってしまうことも挙げられます。これが、事業会社でよく見られる「採用が上手くいかない要件設計」に陥る典型的なパターンです。
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冒頭で挙げた「自社が求める人材に対して、妥当な要件設計ができているのか」という視点で考えると、特にマネージャークラスの人が要件設計を行う場合、このような失敗に陥りやすい傾向があります。
「自社が何を求めているのか」を明確にするには、会社の規模や状況に応じて適切な人材に相談することが重要です。組織のWILLや全体像を俯瞰できる視点を持った人とともに要件設計を進めることで、1人の担当者やマネージャーだけでは見えなかった課題や可能性が明らかになることが多いのです。
先ほどのAさんの例に当てはめると・・・
「エンジニアの採用経験はないけれど、これまでの経験があり、エンジニア採用のスキルを後から学べるポテンシャルがあるのであれば、その要件を外して、まずはポテンシャルのある候補者を広く集めてみよう」というアプローチも可能。
「すべてができる人」を求めると、考え方が凝り固まりやすくなり、"ポテンシャル”という観点では可能性の幅が狭くなる場合があります。
このケースからも分かるように、「組織のビジョンに合致しているのか」といった点をしっかり議論し、合意を得た上で設計を進める必要があります。
さまざまな苦労を重ねて設計し、媒体選定やRPO企業へのスカウト依頼などに多くの時間とコストをかけたとしても、根本的な設計が適切でなければ、その候補者がNGとなるケースも少なくありません。
したがって、市場の動向を踏まえつつ、組織のWILLを確認し、現状の自社にとって必要な人材を明確にする視点を取り入れて要件を設計することが重要です。
市場動向を反映して成果を生む
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他社との競争を考える際には、市場動向の情報を収集することが不可欠です。自社内で「良い求人票ができた」と思っても、実際に外部のエージェントに提示した際に「該当する人材が市場にいない」と言われてしまうケースは多々あります。
そのため、エージェントと密にコミュニケーションを取ったり、コンサルティング会社に依頼したりして、マーケット情報をしっかり収集することが重要です。こうした取り組みを怠ると、理想的な候補者像が実際の市場とかけ離れたものになってしまいます。
陥りやすいケース例:従業員数200名規模のベンチャー企業
【企業の希望】
「拡大フェーズにあるため、優秀な人材が欲しい」と考え、大手企業で働いていた人材を採用したい
【問題点】
大手企業で活躍している人材が、自社で力を発揮する魅力や理由は本当にあるのか
企業側は「これまで成長を続けてきた会社だし、忙しいことはあるかもしれないが、成長フェーズならではのダイナミズムを感じられる職場だ」と考えるかもしれません。しかし、候補者側は「忙しくなる環境は避けたい」と思ったり、「現在の会社に残る方が生涯年収が高い」と判断することが少なくありません。
このように、企業側の視点だけで作成された求人票は、候補者にとって全く魅力的でない可能性が高いのです。
大手企業からの転職を検討する人の多くは、何らかの課題や不満を抱えている場合が少なくありません。そのため、条件面だけで候補者を選定すると、長期的に活躍できる人材を採用できなくなるリスクがあります。こうした点からも、市場の視点を反映させた要件設計の重要性を改めて認識することが求められます。
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例外となるケース
基本的には、自社を客観的に見つめ直し、「どのようにすれば人が来てくれるのか」を考えることが求められます。
ただし、「優れた人材がいれば、1~2年かけて1人採用できれば十分」といった場合であれば、企業側の視点だけで求人票作成や要件設計を行っても問題ありません。
エージェントやコンサルティング会社との繋がりが無い場合
新たにエージェントと契約し、人材紹介契約を結んだ上で成功報酬型で利用する方法が最も効率的だと考えます。
この場合、大手のエージェントと、小規模で柔軟なエージェントの両方を最低でも1社ずつ、できれば2社ずつは繋がりを強化しておくことが重要です。それぞれの特徴を比較することで、より効果的な採用戦略を立てることができるようになります。
このようなコネクションを構築しておけば、「この要件設計は高望みかどうか」といったフィードバックをもらいながら、最短のルートで採用目標を達成することが可能になります。
また、最近ではSNSを活用して情報を公開し、関心のある人から連絡をもらう形で繋がりを作る方法も増えています。公開できる情報であれば、そのような方法を活用するのも有効な手段と言えるでしょう。
採用成功のために欠かせない3つの視点
要件設計を行う際の具体的な視点としては、「スキル・スペック・スタンス」の3つが重要です。
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スキルは、これまでの実務経験や実際に積み重ねてきた実績を指します。
スペックは、学歴や資格といった客観的な指標が含まれます。
しかし、最も重要なのはスタンスです。
どれほど高いスペックや豊富な経験を持っていても、会社の事業フェーズや経営者の意向、社風にマッチしなければ、その能力を十分に発揮することはできません。そのため、スタンスは要件設計に必ず盛り込むべき要素です。
企業にはそれぞれ独自の個性があり、その個性と候補者の個性がマッチするかどうかが非常に重要です。採用ピッチ資料や自社の紹介資料を作成して候補者に提供することも大事ですが、採用要件を設計する際には、魅力的な部分だけでなく、ネガティブな側面もしっかり伝える必要があります。そうしなければ、入社後にミスマッチが起きる可能性が高まります。
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MUST要件とWANT要件で採用基準を整理する
それぞれで要件設計を行う際には、MUST要件とWANT要件を必ず明確に分けて設計する必要があります。
リクルーターが作成した求人票は、多くの人の目に触れる情報になります。そのため、見やすさや分かりやすさが非常に重要です。そして、求人票を見た候補者が「応募したい」「推薦したい」と思えるように、適切に言語化することが求められます。
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そのため、最初の段階で要件設計を行い、「これは絶対に必要」「これはあれば理想的」といった点を全員で確認し合った上で求人票を作成することが、大切になります。
スタンスに関しては要件設計が難しいと感じることもあるかもしれませんが、スキル、スペック、スタンス全てをしっかりと設計することが、採用を成功させるためには不可欠です。