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ポールは聖人のような友人になった。


ニューヨークに来てから、たった一ヶ月の間に
一年分出会う人の数以上の人たちと出会った。
23年間の人生でこんな短期間に大勢と出会い、人と密に関わったのは初めてだ。
私は新鮮で濃厚な時間を過ごしていた______。

友人も知人もいない、誰も知らない外国に、
たった一人で乗り込んできたわけだから、
出会う人出会う人みんな初対面…。

そう意味では本当に自分の人生を、今、一から築き上げているんだと感じた。

全てを捨てて渡米した23歳の日本人女性がどのようにニューヨークで暮らす人たちに映るのか?
出会う人を通して自分を知ることができた。


ニューヨークに到着して、語学学校2日目の
朝だった。
英語のクラスが始まる前に、日本からのメールをチェックしておこうとコンピュータールームへ向かい、パソコンの席に着いた。

しばらくして、隣に座るアジア人らしきおじさんが私のパソコン画面をチラチラ覗き込んできた…。

”き、気になる…。何で見てくるんだ?“

何度もこちらを見るので知ってる人か?クラスメイトかな?と思って横を向いた。

『日本人ですか?』

少しおかしな日本語の発音だった。
『あ、はい。』
『ここの学生さん?』(ここはなぜか英語)
『そうです。もうすぐ授業が始まるので…』

見た目的に日本人なのかな?と一瞬思ったけど、
発音がちょっとネイティブ(日本語)ではなかったので、このおじさん何か学校のこととか、聞きたいことでもあるのかな?
私、まだここ2日目で聞かれても何も分からないですよ?
と心で思っていた。

彼は韓国からの留学生で、私よりもひとまわり以上年上に見えた。

『お名前は?』
『ミサです。』
『私はポールです。』

ポ、ポ、ポールってどう見てもアジア人でしょ?韓国からの来てるのに??ナゼ?

後から知ったことだが、韓国人の留学生は本名とは別に西洋の名前をつけて(男性ならポール、ベン、マイク、女性はキャリー、スージー、ケイトetc)、それを本名のように使っている人が多い。
日本人からするとなんで?本名でいいじゃん?
と思うのだが…。
それとアメリカへ移住する韓国人はキリスト教が多く、韓国人キリスト教の教会も多い。彼もそんなGodを信じる一人だった。

『今日はクラスが終わったら何しますか?』

彼の英語は完全じゃなかった。
私も大して話せないけど、あまり上手くない事はわかった。

『今日は特に何もないです。』

あぁ、しまった!答えた後に失敗した!
と思った。これじゃ誘われてしまう!
女の勘が働いた。

『じゃあ、クラスが終わったらここにまた来てくれませんか?』

ポールは言った。
おじさんだけど、優しそうだしお友達もほしいし、まぁいいかな。と軽いノリで午後からこの
おじさんとハングアウトする事になってしまった。

ただ世の中には、無害というか、自分の中にスーッと入り込んで、いい距離感で付き合ってくれる人っている。
ポールはまさにキリストの申し子のような人だった。
下心なく、ニューヨーク2日目の私に色んな事を教えてくれた。

ポールはまず、ランチに学校から近い34ストリートのコリアンタウンへ連れて行ってくれた。
日本でも在日韓国人の友人がいて(この人は後に私の人生で大切な存在になるんだけど…)一緒に韓国料理を食べたりしたなぁ。。。と思い出にふけっていると、ポールが話出した。

『ミサさんは、どこに行ってみたいですか?ご案内しますよ。』

なんていい人なんだろう〜!と思った。
ニューヨーカーは冷たいとか、自分勝手だとか色々話には聞くけど、自分のニューヨーク生活
2日目はこんな親切な友人ができました〜!と心の中で拍手喝采だった。

行きたい所と言っても、私は語学学校とダンスと歌のレッスンが目的で来ているので、特にないと答えると、

『ビーチは行ったことありますか?』

ん?ビーチですか?…ないです。
と言うと、
『じゃあ行きましょう。ついてきてください。』と後半強引な感じで、食事が終わると地下鉄へ向かった。

続く

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