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ポールは聖人のような友人になった②

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話は少し逸れるが、
『男女の間に友情はあるか?』
の議題はよく話に出てくるけど、
私は“YES派“だ。
まぁ大抵の異性は、異性として見てしまう。
だけど、時々、性的な感情なしで男性を見ることもある。
理由をよく考えると多分、相手に男性としての色気のようなものがない場合や、年齢、恋愛対象にならない相手限定でお友達になれるのだけど、それはこちらの勝手な感情で、相手はどう思っているかは分からないんだけどね。

前回、ニューヨークで韓国人男性に、出会った初日にいきなり連れ出され、サブウェイに乗り込んだお話をしました。今日はその続きです。
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この人、とにかく良い人そう。なんだろう、男性という印象が全くない。かといってゲイでもなさそう。異性として見ることが出来ない中性的な感じ…。
少なくともこのポールという韓国人男性はそうだった。私より一回りも歳が上なのにとても無垢な人だった。
後に彼が打ち明けてくれたのだが、彼は従順なキリスト教徒で、結婚するまではセックスしない主義なのだそうだ。
今はまだ結婚していない。ということは35歳にして彼はバージンということだ。

たぶん、私は彼に出会った時からその純粋さや汚れのない少年のような心を感じ取っていたんだと思う。なので、初対面の男性、しかもひと回り年上の人に、いきなりランチに誘われても自然にOK!と言えたんだと納得した。
世の中には本当にいろんな人がいるもんだぁ〜、ニューヨークは本当に面白いところ。


ニューヨークの人は冷たいとよく言われるけれど、この街にきて以来、私は真逆の印象ばかり感じ取っていた。
とても思いやり深く温かいし、エネルギッシュでパワフル!
『ニューヨークはアメリカという国の中にあるが、アメリカじゃない。』
ニューヨーカーはよくそう言っていた。
NYCに住んでいる人の殆どが、別の場所から来た人や移民や夢を持ってこの街にやってきた人、この街で成功したい、という野心があり、孤独と闘っている、そんな人々の集まりでできている。
だからここの人々は知らない人同士でも挨拶をするし、目があったら微笑みを交わす。
困った人には手を差し伸べる。きっとそれは自分も過去、助けてもらったから。
私も知らない人にたくさん助けてもらった。

そしてニューヨーカーは911以来、変わった。
辛く悲しい経験をしたきたからこそ、人を思いやる人が多い。街全体、皆が皆をtake care し合っているように私には見えた。それはニューヨーカーのプライドのようにも見えた。


ポールに出会った初日、いきなり「ついておいで」と海に連れてこられた。
そして私たちはサブウェイに乗り込んだ。
行き先はブルックリンの南の終点駅、コニーアイランドビーチ。
TVなどで名前は聞いたことがあったがまさか自分が初対面のおじさんと真冬のビーチに来るなんて考えても見なかった。

今日は2月1日。ニューヨークでは一年で一番寒い季節だ。
今日の気温は確かマイナス2度位だったが、強風が吹き荒ぶ、誰もいない、荒々しいビーチは歩くだけで体感温度マイナス20度くらいになっていた。

寒いというより、痛い!!
顔の皮膚にヒビが入ってビリビリと音を立てて割れていきそうな痛みだった。
なぜこのおじさんはこんな日にこんな場所へ私を連れてきたんだろうか。

「なかなかこんな寒さ、感じることはないだろう?気持ちいいだろう?」

寒さでお互い顔がカチカチなのだが、笑いながらポールは言った。
もう寒さを通り越して全身の感覚がないんですけど。体の一部が麻痺してきた。それが心地いいとポールは言っているのだろうか?
人生で一番ヤバい寒さに、顔の筋肉も動かなくなってきていた。あぁ、顔面骨折した右頬骨までズキズキしてきたじゃないの。
でもなぜだろう、一定の寒さを通り越すと、この寒さと痛みが心地よく感じてくる…。

凍りついた海は溜息が出るほど美しかった。
波は白く凍りつき、ボードウォークの砂が強風でキラキラと舞い上がる。
私たちはその上を並んでゆっくり、ゆっくり歩いた。

時間が止まっているような感覚…。

砂浜には映画のワンシーンのように、大きな犬を連れて歩く人。杖をついてゆっくりとボードウォークを散歩しているおじいさん。
目の前に広がる景色は極寒とは思えないほど温かくやさしい時間が流れていた。

私たちは暫く、閑散とした真冬のビーチを歩いて家路に着いた。
本当にただそれだけの時間だったが、とても有意義で心が落ち着いていた。体は凍りついたけど(笑)。ポールに感謝した。
その後も、ことあるごとにポールは私を外に連れ出した。その連れ出し方と場所が酷く滑稽なのだけど…。それはまた今度お話したいと思う。
…続く。

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