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なんでも受け入れてみる

顔面崩壊事故から一年が過ぎようとしていた。

顔に褐色のケロイドがいくつも残っているけど、
8割元の顔に戻ってきた頃だった。
顔が元に戻らなかったら、もっとお金を貯めて整形しないといけないかな〜なんて考えていたけど、なんとかしなくても生きていけそうだ。
毎日休まず働いて少し貯金もできた。

人生をやり直すためニューヨークへ単身、長期留学する目標を立てたので、まずは1ヶ月間、下見を兼ねて行くことにした。
日本からミッドタウンのドミトリーを予約した。
午前中〜お昼までは語学学校に通い、午後はダンスレッスン、ボイストレーニングをしながら空いた時間に街を散策した。
次にNYCに来る時は、5年の長期ビザを取りたかったから、とにかく沢山歩いて土地勘を得ようと思った。
毎日、一日のエネルギーを全て使い果たしたかのように動き回って、ドミトリーに帰る頃にはもうくったくた…重すぎる体をなんとかベッドに倒れ込ませて死んだように寝て…朝また起きて学校に行く。そんな日々が楽しかった。


ダンスレッスンの帰り、タイムズスクエアのVirginRecordでCDを見ていると背の高い黒人男性に声をかけられた。
彼はジョンと名乗った。
仕立てのよいスーツに質の良さそうなキャメルのコートを着ていた。
私が想像する黒人、アフリカンアメリカンのイメージとは全然違っていて、物腰の柔らかな穏やかな話し方だった。
彼は私の服装をやたらとベタ褒めし、ダナキャランニューヨーク(DKNY)でデザイナーとして働いていると言った。
私は半信半疑で話を聞いていたが、
『今度ウチに来て、僕がデザインしたドレスを着てほしいんだ』
と何度も誘ってきた。

それって家に連れ込む手口なんじゃ...?
私は疑いながらも、面白そうなので行ってみることにした。
そう、あの事故に遭ってからは人生来るもの拒まず、先入観なく何でも受け入れてみようと思っている。

ただし、ここはNYC、なにか危ないことに巻き込まれることも今後あるかもしれないので、犯罪とドラッグ以外のことでは何でも楽しんじゃお!
と決めたのだ。

つづく


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