劇スを控えたWS 世界線における一考察
かいちょー
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1.調査背景
『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(以下、劇ス)が2021年6月に公開されて以降、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト -Re LIVE-』(以下、スタリラ) や関連ライブや舞台、書籍、音楽、同人活動など様々なスタァライトコンテンツが盛り上がっている。例えばスタリラでは3周年やエーデルの舞台、朗読劇が行われ、ライブではオーケストラコンサートが開催された。また、ウイルスの感染対策が緩和されたこともあり同人イベントも開催され始めている。
その中でイマイチ盛り上がりに欠けているのが「ヴァイスシュヴァルツ」(*1)(以下、WS)というトレーディングカードゲーム(TCG)コンテンツである。劇スの円盤やスタァライト展など各イベントでPRカードは何種類か登場したものの、最後にブースターパックが登場したのは2019年の11月であり、2022年4月1日現在までの2年5ヶ月の間、大きな追加カードはない。
WSへの着目理由として付け加えたいのが、スタァライトが今現在でも頻繁に活動しているブシロードコンテンツであるという点だ。自社内ではないタイトルや自社内でもイベントなどが動いてないもの(『ひなろじ~from Luck & Logic~』『探偵オペラミルキィホームズ』など)であれば仕方ない部分もあるかもしれない。しかし同じくブシロードコンテンツであり、イベント等の活動も盛んな『アサルトリリィ』はスタァライトよりも短い期間で同じぐらいの収録枚数が発売、『BanG Dream!』(バンドリ)に至っては2017年以降ブースターパック5種と特別パック5種が発売されている。
そんなもどかしい状況のWS界のレヴュースタァライト(以下、WS界での通称に則って“レヴュー”と表記)であったが、2022年10月14日に待望のブースターパック『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』の追加が決まった。そこで今回は、今までに発売されているTVアニメ版やスタリラ版のカードについてまとめていくと同時に、劇スではどのような内容のものを期待するかを1人のスタァライトオタク兼WSプレイヤーとして考察する。
*1 ヴァイスシュヴァルツ公式HP, https://ws-tcg.com/about/
2.ヴァイスシュヴァルツについて
まずはじめにWS(ヴァイスシュヴァルツ)というカードゲームについて、認知していなかった方に向けて布教も兼ねて紹介していく。公式HPでは
と紹介されている。
ルールをごく簡単に説明しよう。WSは2人で対戦するカードゲームである。プレイヤーはそれぞれ50枚のカードで構築されたデッキを用意する。カードには、場に出して相手を攻撃できる「キャラ」カードと、一度だけ効果を発揮できる「イベント」カード、そして特別な攻撃パターンを展開できる「クライマックス」カード(以下、CX)の3種類がある。この3種類のカードをうまく組み合わせて使い、相手にダメージを与えて勝利を目指していくカードゲームである。なお、スタァライトが好きな方に向けて付け加えておくと、WS では攻撃カード(キャラカード)を出す場を「舞台」と呼ぶ。
WSは、カードゲームとしてプレイするだけではなくコレクションとして集めることもできるのが大きな特徴となっている。これに経験者として、著者が考えるWSならではの魅力を3点補足させていただく。
1つ目はなんといってもカードイラストがとても綺麗なところである。特に、1ボックスに1枚の割合で封入されているスーパーレア(SR)やスペシャル(SP)カードは、ノーマルカードとイラストが異なる場合がある。中には背景模様やイラストそのものにかなり凝った加工がされているものもあり、眺めているだけで幸福感が得られるものになっている。
2つ目は、他のTCG よりも敷居が低い点だ。既存のアニメや作品をカード化しているので、作品を知っている人ならば誰でも楽しめる。また、カードゲームとしては頭を使うより運を必要とする要素が比較的高いため、初心者でも勝てることがある。そして、自分の好きなタイトルのカードだけで最大限遊べる上、先ほども述べたようにコレクションとしても楽しむことができる。実際、著者はレヴュー以外のタイトルはお遊び程度でしか触れていない。またプレイヤーとして遊ぶ傍ら、レヴューのサインカードや同じカードを無限回収するコレクターとしても活動している。
最後に、参戦作品の多さが挙げられるだろう。今までに発売された作品は、2022年4月1日現在119タイトルある。ブシロードが手掛けている『バンドリ』や『スタァライト』だけでなく、有名アニメの『ソードアート・オンライン』や『五等分の花嫁』、ゲーム作品からはKey作品や『ペルソナ』シリーズ、さらに海外からはMARVEL作品や『スター・ウォーズ』など多種多様なタイトルが参戦している。これらたくさんの作品数によってWSの
知名度も高くなり、作品を見た人がコレクションやカードゲームで遊ぶきっかけになったり、カードゲームプレイヤーが作品を観たりプレイしたりするきっかけになっている。そして14年間と長い期間続いているのにコンテンツの勢いは衰えず、今後も『チェンソーマン』やピクサー作品など著名なコンテンツが登場する予定だ。
3.既存のレヴューのWSカードについて
次に今まで発売されているレヴューのカード情報について整理していく。最初に発売されたのが、デッキに必要なカードがそのまま封入されている50 枚セットの「トライアルデッキ」(正確には「トライアルデッキプラス」、以降“トライアル”と呼称、2018年9月発売)だ。以降、TVアニメの放送を受けたブースターパック(以降“TVアニメ版”と呼称、2018年12月発売)、そしてスタリラの内容を詰め込んだブースターパック(以降“スタリラ版” と呼称、2019年11月発売)が出ている。これらブースターパックは、それぞれ100種類のカードで構成されている。
なお、2022年3月には『少女☆歌劇 レヴュースタァライト-The LIVE エーデル- Delight』のポートレートブースター(以降“エーデル”と呼称)が発売された。これは舞台の写真を使った特別パックで、27種類が収録されている。表1に、それぞれのパックに封入されたレアリティ別の枚数を示した。
2022年4月1日現在では288種類のカードがあり、イラスト違いやサインカードを含めると440種類ものカードが存在する。カードイラストとしてはTVアニメやスタリラ(2019年6月12日に実装された“パンドラ” 叶 美空まで)の既存のイラスト、そしてTVアニメ版では9種のアニメスタジオ描き下ろしイラスト、スタリラ版で2種の新規描き下ろしイラスト、さらにメモリアルブックや実写の撮り下ろしなど、様々なイラストや写真が使われている(*2)。
ここからは、カードの内容に触れていきたい。WSの大きな魅力として、好きなキャラクターを選んでそのキャラが写っているカードだけでデッキの50枚を構成する「キャラ単デッキ」というものを作ることができる。WSをやっていない人にとっては理解が難しい内容になってしまうが、念のため説明させてほしい。
WSのデッキは42枚の「キャラ」または「イベント」カードと、8枚の「クライマックス」カード(CX)で構成されている。デッキの基本構築では、「1連動」(*3)と「3連動」(*4)、そして「集中」(*5)の3要素が含まれていれば安定して戦えるとされている。「1連動」「3連動」は、対応するCXカードと一緒に使うと特殊な効果を発揮する。対戦の序盤で使えるのが「1連動」で、終盤で使えるのが「3連動」だ。「集中」はデッキを動かしていく中での潤滑油の役割を持っている。
このデッキの基本構築を踏まえた上で、聖翔音楽学園99期生の9人について「キャラ単デッキ」を見ていこう。ただキャラクターによっては、まだデッキの基本構築の条件が揃ってない場合もある。そこで、キャラクターごとに、今までのカードで必要な要素が収録されているかどうかを表2にまとめた。
続いて、著者が作成したキャラ単デッキから、各キャラについての総評を分析した(表3)。なおデッキの参考として、デッキログ(*6)のデッキレシピ検索欄で検索可能な4桁の英数字を記した。興味のある方は検索していただきたい。
分析した結果、既存のカードでもキャラ単としてしっかり成り立つのは華恋とまひる、形はいびつではあるがWSのデッキとして成立するのが香子と純那とクロディーヌであり、それ以外はかなり苦しいということが分かった。
*2 著者が一番好きなカードは「私だけの星 星見 純那(RSL/S56-066SSP)」である。検索していただきたい。
*3 「1連動」とは対応しているCXとのコンボを決めるレベル1のキャラカードのことであり、WSで遊んでいるプレイヤーが使っている造語である。ex.「新たな舞台 愛城 華恋(RSL/S69-054)」
*4 「3連動」とは対応しているCXとのコンボを決めるレベル3のキャラカードのことであり、WSで遊んでいるプレイヤーが使っている造語である。ex.「“情熱とキラめき” 愛城 華恋(RSL/S56-036)
*5 「集中」とは基本的にキャラクターがアタックした時に発生する「ストック」というものを使い、手札を増やしていくなどの役割を持ったカードである。初心者が始めるトライアルデッキには必ず封入してある。ex.「私だけの星 星見 純那(RSL/S56-066)」
*6 DECK LOG(デッキログ)|ブシロード公式デッキ作成ツール https://decklog.bushiroad.com/
4.劇ス版追加に伴う考察
ここでは今までに記していった内容を踏まえつつ、著者の個人的な予想や願望も盛り込みながら劇ス版追加について考察できることを記していく。
・アニメスタジオ描き下ろしカードの収録
根拠としてTVアニメ版とスタリラ版で、描き下ろしイラストを使ったカードが収録されていることが挙げられる。さらにWSへの追加公表時期が2021年12月で、2022年10月の発売までに1年近く空いている。通常は追加の決定から半年前後で商品の発売が行われるため、他の参戦タイトルと比べてもかなり準備期間が長いことは明らかで、新規イラストを期待してよいと思っている(*7)。
・CX(クライマックスカード)の名前のオリジナリティ
TVアニメ版ではCXの名前として『ひかり、さす方へ』や『トップスタァ』など、レヴュー名でもレヴュー曲名でもなく各話のタイトルを引用している。果たして劇スではどのような名前で収録してくれるのかが楽しみである。著者はレヴュー曲名ではないかと予想している。またCXカードにはRRR(トリプルレア)という特別加工されたレアカードが存在する。スタリラ版ではRRRの仕様がキラ加工(表面が光を反射してメタリックに光る)しかされなかったが、TVアニメ版ではRRRのイラスト自体が変更されているため、劇ス版のキラ加工でもイラストが変わる可能性がある。
・幼少期華恋のイラストが収録されるか
TVアニメ版では、物語のかなり重要な場面であるはずの5歳のシーンはWSに収録されていない。しかし今回は劇スの中でかなり重要なパートであり、かつ占めている時間も長いため収録されるだろう。果たして“セーラ” 愛城華恋や中学時代の同級生の面々は登場するだろうか。して欲しい。また同じように雨宮さんなどのB組も前弾までには収録されていないので、WSという舞台に上がって欲しい。
・「リンク」システムの採用
この効果のシステムは、以前『グリザイアの楽園・迷宮』のWSカードに搭載されていたものである。条件を満たせば、普段はキャラカードに書かれている特定のCXカードを使わなければ発動しない効果を、別のCXカードでも使えるようになる。劇スは「ワイルドスクリ———ンバロック」をキーワードとして物語が進んでいくため、是非とも採用して劇スだけの一貫性をカードゲームでも再現できるようにしていただきたい。
・キャラ単を作る目線からの追加収録希望
表2からキャラ単としてデッキを作るために足りない内容を分析してみたが、ここではその目線から劇スの収録がどのように偏ればいいかについて考察する。今までの収録内容によると「1連動」はひとつのブースターパック内に4~5種、「3連動」は4種、「集中」は3種入っている。よって「1連動」でひかり・香子・真矢・純那、「3連動」でひかり・双葉・クロディーヌ・なな、「集中」で双葉・なな・真矢またはクロディーヌが収録されれば、聖翔の9人のキャラ単デッキはそれぞれうまく動くようになるだろうと考えている。しかし追加で華恋やまひるのCX連動が出ないということはないはずなので、完全にこの通り収録される望みは薄い。しかし、いい感じに収録されてキャラ単を楽しめるようになることを期待している。
*7 7/22公式HPより新規描き下ろしイラストを9種収録との情報開示があった。
5.最後に
まずは普段の考察論文とは分野が違うのにもかかわらずここまで読んでくれたことに感謝の気持ちしかない。いっちょ前に考察とはなっているはずだが、この予想も全て裏切って180°変わった内容になっているかもしれない。それでも、このような文章を書く「追加」というきっかけをくれただけでとてもうれしいためこれからの情報公開を楽しみにしている。また今回はイラストやキャラクターに関連した内容について注目してきたが、カードゲームとしての性能面やもっと詳細な収録イラスト予想などまだまだ考察できる部分はあるため、10月の発売を待つだけではなく研究を続けていきたい。
著者コメント(2023/11/30)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。この考察についてなのですが、蓋をあけて見れば見事に大外れという結果になってしまいました… ただ今回の最高レアリティのサインカードも完成度が高く、コレクターとしては大変満足です。皆様も是非手に取ってみる、もしくはカードショップでご覧になってくださればと思います。運営してくださった方を始め全ての舞台創造科に感謝を。ありがとうございました。
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