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書籍『Humankind 希望の歴史 人類が善き未来をつくるための18章』 下巻

ルトガー・ブレグマン (著) 野中 香方子 (翻訳)
出版社 文藝春秋‏
発売日 2021/7/27
単行本
270ページ




目次

Part3 善人が悪人になる理由

第10章 共感はいかにして人の目を塞ぐか
 1 ナチスの心理の謎を解く
 2 史上最悪の虐殺へ駆り立てたのは友情だった
 3 幼児と道徳観ーベビー・ラボの実験
 4 身近な人に共感する
 5 戦争に勝つ方法

第11章 権力はいかにして腐敗するか
 1 現代に生きるマキャヴェッリ『君主論』
 2 権力が神を生んだ
 3 独裁、社会主義、共産主義、民主主義に共通

第12章 啓蒙主義が取り違えたもの
 
1 史上最大の過ちへの抗争
 2 利己性にもとづく社会をつくる

Part4 新たなリアリズム
 1 疑う意思 VS 信じる意思
 2 ピグマリオン効果
 3 多元的無知

第13章 内なるモチベーションの力
 1 在宅ケア組織の成功
 2 テイラーの経営哲学
 3 金銭的インセンティブはモチベーションを下げる
 4 マネジメントをしないマネージャー
 5 資本主義も共産主義もないー「そうしたいからする」

第14章 ホモ・ルーデンス
 1 子どもから自由と遊びが奪われている
 2 教育システムの出現
 3 ルールや安全規則のない公園
 4 クラス分け、教室、宿題、成績のない学校

第15章 民主主義は、こんなふうに見える
 1 当選したら権力を住民に譲り渡す
 2 7つの治療薬
 3 コモンズ(共有財産)
 4 コモンズ研究で女性初のノーベル経済学賞
 5 楽観主義でも悲観主義でもない、可能主義
 6 アラスカで行われた永久基金配当金

Part5 もう一方の頬を

第16章 テロリストとお茶を飲む
 1  リゾートみたいな刑務所
 2  未来の刑務所はなぜアメリカで頓挫したか
 3 「割れ窓理論」は本当か
 4  それは人種差別へと結びついた
 5 ノルウェーの刑務所に学ぶ

第17章 憎しみ、不正、偏見を防ぐ最善策
 1 双子の兄弟の物語
 2 南アの民主主義誕生を支える
 3 偏見を防ぐにはどうすべきか
 4 武器を置くー「勝者はいない」
 5 マンデラ・アプローチの成功
 6 アイデンティティを持ち、交流する

第18章 兵士が塹壕から出るとき
 1 1914年、クリスマス
 2 英兵と独兵が聖歌を贈り合う
 3 ゲリラに武器を捨てさせた広告企業
 4 優しさの伝染を

エピローグ 人生の指針とすべき10のルール

謝辞
訳者あとがき
ソースノート


内容紹介
 
上巻と同じため、且つ上記した「目次」が内容紹介となっているため割愛いたします。
 上巻のレビュー 


レビュー

 下巻においては「友情」「グループ意識」「共感」による危うさが、まず語られます。

 (中略) 共感できる相手は、救いがたいほど限られている。共感は身近な人に対して持つ感情である。わたしたちが匂いをかぎ、目で見て、耳で聞き、触れることができる人に対して。家族や友だち、お気に入りのバンドのファン、そしておそらくは、町で見かけるホームレスに対して。さらにはイヌに対しても。畜産場で虐殺された動物の肉を食べながら、わたしたちは、子犬を抱いたり可愛がったりする。また、テレビが映す人々に対しても共感を覚える。悲しげな曲をBGMにして、カメラがズームインする人々に対して。
 (中略) 共感は何よりもニュースに似ていることに気づく。第1章では、ニュースがスポットライトのように機能することを述べた。共感が、特別な人か何かにズームインしてわたしたちを騙すように、ニュースは例外的な何かにズームインして、わたしたちを欺く。
 一つ確かなことがある。それは、より良い世界は、より多くの共感から始まるわけではないということだ。むしろ、共感は私たちの寛大さを損なう。なぜなら、犠牲者に共感するほど、敵をひとまとめに「敵」と見なすようになるからだ。選ばれた少数に明るいスポットライトをあてることで、わたしたちは敵の観点に立つことができなくなる。少数を注視すると、その他大勢は視野に入らなくなる。
 これが、(中略) わたしたちを地球上でもっとも親切で最も残虐な種にしているメカニズムだ。そして悲しい現実は、共感と外国人恐怖症が密接に繋がっていることだ。その二つはコインの表と裏なのである。

 その後、戦争における殺害に関して少し語られ、第11章では非常に重要な問い、

 ホモ・パピーが生まれつき友好的な生き物であるなら、利己主義者や日和見主義者、ナルシストや社会病質者(ソシオパス)がなぜそのトップに立ち続けるのだろう。顔を赤らめる唯一の種である私たちがなぜ、恥知らずの見本のような人間が自分たちを支配することを、許すのだろう?

について語られ、第12章にてワンクッション置いた後、

 わたしたちは、頭を使い、理性を活用して、新しい制度を設計することができるだろうか。人間の本性についてこれまでとは異なる見解に基づく制度を設計できるだろうか。学校や企業、都市や国家が、最悪な人間ではなく、最良の人間を想定したら、どうなるだろう。本書の残りの部分では、これらの問いに焦点を絞る。

とし、次ページ 【Part4「新たなリアリズム」】を、ヴィクトール・フランクルの

 「それゆえわたしたちはある意味、理想主義者でなければならないが、それは、そうなって初めて、真の現実主義者リアリストになれるからだ

 という熱い格言の引用により開始します。

 別の言い方をするなら、「高い理想を持ち続けながら社会にコミットしてゆくことが、現実をより良くしてゆくための必須条件である」とフランクルは言っているわけです。
 これはホロコーストを実際に経験し生き延びた彼の放った言葉であるからこそ、よりその輝きと説得力を増します。

 その後に続く73~236頁に記されている内容に関しては、一人でも多くの方に読んでいただきたいと切に願います。
 世界の見方や印象が大きく変化する可能性は高く、何よりも間違いなく勇気や元気をもらえて、あなたの中に秘められている「善」なるものは力強く鼓舞され、その光を増すことでしょう。

 世の中の状態を悪くすることが可能であるということは、逆に言えば、間違いなく世の中の状態を「今よりももっとずっと良くすることは可能である」ということです。
 そのことに多くの人が気付けば気付くほどに、世の中は良い方向へと変化してゆく……
 そう、本気で思います。

 というわけで、最高に面白い上下巻。
 おすすめです。
 


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