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書籍『非暴力を実践するために 権力と闘う戦略』

ジーン・シャープ (著) 谷口 真紀 (翻訳)
出版社 ‎ 彩流社‏
発売日 2022/4/5
単行本 240ページ



目次

第一部 権力と闘争
第一章 政治権力の性質と統制
第二章 非暴力行動 積極的な闘争術

第二部 非暴力行動の手法
第三章 抗議・説得をする方法
第四章 社会的に協力を拒む方法
第五章 経済的に協力を拒む方法 その1 経済ボイコット
第六章 経済的に協力を拒む方法 その2 ストライキ
第七章 政治的に協力を拒む方法
第八章 事態に介入する方法

第三部 非暴力行動の作用
第九章 非暴力行動の下準備
第十章 権力への挑戦者にふりかかる鎮圧
第十一章 鎮圧に対抗するための結束力と規律
第十二章 政治権力の「柔術」
第十三章 成功を勝ち取るための四つの経路
第十四章 権力の再配分

ジーン・シャープの著作案内
アルベルト・アインシュタイン研究所の使命
訳者解説 ジーン・シャープの非暴力行動のすすめー無責任からの脱却(谷口真紀)
訳者あとがき
198通りの非暴力行動の戦術一覧


内容紹介

 本書は非暴力行動への認識を深め、理解し、始めるための入門書である。

 非暴力とは、抑圧的な体制に暴力以外の方法で闘争をしかける積極的な行動のこと。権力者個人ではなく権力のシステムを攻撃し、協力を拒絶し、
支配の仕組みをひとつずつ崩し、最終的にその支配者がなすすべもなく
取り残される状態を、戦略的に作り出すプロセスである。

 シャープ氏の理論はミャンマーの人々にも広く読まれ、実際に民衆が独裁政権を打倒した事例も世界各地で報告されている。
これは、遠い紛争地のことだけではない。
 私たちの家庭・職場・学校など身近な権力構造にも目を向け、暴力を用いずしてその構造と闘い、私たちを解放するためにも活用できる理論なのだ。
 本書は、身近なところから遠い国の政治まで、様々な実践的なヒントが得られる実用書である。
 
 すぐに実践できる198の手法一覧付き!


レビュー

 ジーン・シャープ(以下:シャープ)は、マハトマ・ガンディーの研究を礎として非暴力論を構築した政治学者で、バルト三国の独立回復や、セルビアの独裁政権崩壊、エジプトのムバラク政権打倒を皮切りに広まった「アラブの春」等の非暴力革命に、多大な影響をもたらした人物です。
 
 シャープの登場以前まで隆盛であった「非暴力論」「平和論」の多くは、特別に深い「知性」や「宗教心」、「道徳心」を持つ、自らの命を顧みずに権力と対峙する「勇者」や「聖人」の類の特別なリーダーが、大衆の「宗教心」や「道徳心」に訴えることにより大きな集団を形成し世論を動かしてゆこうとするパターンが殆どですけれども、シャープの説く非暴力論は一味違います
 シャープは「普通の人々(大衆)」が、特別な誰かに率いられるのではなしに、普段の生活の流れの中にて平和活動の一翼を担うことを目標とします。
 またシャープは「非暴力と言う方法を用いるのは、それが宗教的、道徳的に優れているからではなく、「政治的に賢明な策」であるからだ」とも述べています。
 そしてシャープの「非暴力論」の、もうひとつの大きな特徴として「軍事から(相手の戦略から)積極的に学び、その発想を自らの提唱する非暴力論に積極的に取り入れ「戦略的に非暴力活動を展開する」というものがあります。
 平和活動の最重要課題は、理不尽な行為を行う権力側との「軍事や暴力との戦いに勝利すること」ですから、その戦いに勝利するためには、こちらもしっかりと「敵のやり口(主に【軍事】)」について学び、「作戦を立てた上で、集団にて粘り強く実行する」必要性があるということです。

 本書には、そのシャープの説く「暴力に対して非暴力で打ち勝つための方法(戦略的な作戦)」が理論的に体系化されており、具体的な説明が分かり易くまとめられて記されています。

 戦略も戦術も無く、只々突撃してゆくようなやり方では、各個撃破されてしまい良い結果にはなかなか繋がりません。
 ゆえに「戦略的」に戦うことが重要であると、シャープは説くわけです。

 イメージとして例を出します。
 以下の動画を御覧ください。

ということです。
 ※動画では相手(スズメバチ)を思いっ切りぬっ殺していますけれども、あくまでも非力な大衆が「暴力」に対し「非暴力」的な集団行動にて打ち勝つ姿をイメージしていただけましたらと思います。
 というか若干、日本ミツバチ側の命も失われている様子が「リアル」かなって思います

 ちなみに西洋ミツバチは個人主義で、一匹ずつスズメバチに向かっていっては各個撃破されてしまいます。
 ですから賢い「日本ミツバチ」流がオススメとなります。
 で、まさにその方法を(しかも「非暴力」にて勝利する方法を)シャープは詳細に記してくれているわけです。

 
 本書の個人的な白眉は、厳選された「198通りの非暴力行動の戦術」に関する解説部分なのですけれども、これが実に素敵で、巧い例えが思いつかなくてアレなのですけれども、なんというか「無理ゲーの大ボスを、その弱点をチクチクと突きながらスマートに攻略してゆくような面白さ」があります。
 兎に角、チクチクチックリな感じでダメージを継続的に与えてゆくわけですけれども、記されている198通りの戦術は、誰でも実行可能な上に実に効果的且つ実用的なものが多く(巨大権力を実際に打倒した実績が有りますゆえ説得力が違います)、例えば学校の酷い教師や、会社のアホな上司、あるいは〇んでほしいイジメグループのリーダーとかにも間違いなく応用可能な戦術であり、非常に有用な知識となっていて最高です。
 
 本書から何を学び、何を実行するかは人それぞれですけれども、間違いなく言えることは、非暴力にて法律にも抵触せずに相手にダメージを与える方法(知恵)を多数習得することが出来るということです。
 また本書と合わせて、同じくシャープの『独裁体制から民主主義へ』あたりも読んでおくと、より理解と勇気、そして実行力が深まるように思います。
 ※『独裁体制から民主主義へ』も、レビュー予定

 
 私たちの第一の武器は「知性」と「勇気」であることを、シャープは力強く、また且つ説得力を持って伝えてくれます。
 おすすめの一冊です。



Albert Einstein Institution(アルバート・アインシュタイン研究所)

 ※ジーン・シャープの著作等が、シャープの設立した研究所(非営利団体)のHPより無料ダウンロード可能となっております。よろしければご活用ください。


Albert Einstein Institution(アルバート・アインシュタイン研究所) Wikipedia(ウィキペディア)


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