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映画『アートのお値段』

2019年/製作国:アメリカ/上映時間:98分 ドキュメンタリー作品
原題 The Price of Everything
監督 ナサニエル・カーン



予告編


STORY

 バンクシーが1億5000万円の絵を落札の瞬間に細断したり、ジェフ・クーンズのステンレス製のウサギの彫刻が存命のアーティストでは史上最高額の100億円で落札されたりと、日本でもアートオークションの話題がニュースを賑わすようになった。今やアート作品は株や不動産のように投資の対象となり、世界のアート市場はかつてないバブルに湧いている。世界各地でアートフェアやオークションが行われ、企業がアーティストとコラボする。私たちの生活でもアートを目にすることが増えてきた。その一方では投機目的で購入され、倉庫の暗闇に眠る作品もある・・・。

 だけどいつからアートが商品になったのか?誰が何のために買っているのか?そもそも、アートの値段って何だろう?

公式サイトより


レビュー

 アート(現代アート中心)とお金の関係を探りながら、芸術とは何か、そして人々はなぜ芸術を求めるのかを探求してゆくドキュメンタリー。
 
 様々な場所でアートを鑑賞したとき、一般の人が頭に思い浮かべることは多くの場合、以下の5つのことではないでしょうか。
 
①「自分がその作品を好きか、嫌いか、興味がないか」
②「制作者は誰か」
③「作品のお値段(購入価格)はいくらか」
④「制作されたのはいつ頃か」
⑤「何が表現されているのか」
 
 しかし、お金のある人や組織は(場合によっては)購入することもあるため、その他のことも思い浮かべているはずです。
例えば、
 
〇「本物か偽物か。作品の来歴はしっかりしているか」
〇「価格に見合った価値のある作品か、否か」
〇「将来、その価値(値段)が上がるか、下がるか」
〇「コレクションの価値を上げるものとなるか、下げるものとなるか」
〇「購入出来た場合はどの辺りに飾るか、又は倉庫に仕舞い込むか」
 
等です。
  
 何を言いたいのかというと、本作の一番の面白さは、芸術の売買に関する舞台裏を知る(制作する側と購入する側の人々の考え方や、その両者の間にて売買に関わる人々の様々な思惑や考え方に触れる)ということにあり、それにより鑑賞者自身のアートに対する考え方や立ち位置がより明確になるという部分にあるのではないかということです。
 またそうなることにより、アートのみならず「物の価値を、お金という数字に置き換えるという行為は、一体どのような行為なのか。そして全ての【物】の【価格】、【価値】とは?」と、「価格」と「価値」について広く思いを馳せるようになり、その後の人生における選択が大きく変化するかもしれません。
 
 というわけで、アート市場の裏側に興味のある方にも、特に興味の無い方にもおすすめです。
 
 
 
追伸①
 22歳のドガ曰く、
 
 今日、真摯な芸術家でありたい。自らのために、ささやかな独自の地位を創出したい。あるいは少なくとも、純粋な気性を最高の条件で維持することを、確実にしたいと望むのであれば、人は絶えず孤独に浸っていなければならないと僕には思える。
 噂話が、あまりに多すぎる。
 まるで絵画が株式市場の予測のように、利益を得たいと熱望する人々の間の諍いからつくられるかのようだ。
こうした商いのすべてが、人々の心をとがらせ、判断をねじ曲げている。

 
※ドガ:フランス印象派の画家
 
 
追伸②
  『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』『ペギー・グッゲンハイム アートに恋した大富豪』も、現代アートが多数登場するドキュメンタリーとして面白いです。
 
 
追伸③
  印象に残った作中の言葉
 
 「人は大きく分けて3種類。見る人、見せられたら見る人、見ない人
 
 
追伸⑤
  原題は The Price of Everything 「あらゆるものの値段



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