10年前、僕らはイタリアにいた
昔の仕事のデータを引っ張り出そうと思って整理していたら、たった2GBのSDカードが出てきた。上書きできないようにロックがかかっている。なんだろうと思い開いてみると、結婚式を兼ねたイタリア新婚旅行の写真だった。写真の日付を見ると2010年6月7日。10年前。僕らはイタリアにいたのだ。
妻は小、中学の同級生。当時は一言も話したことがなかった。彼女は僕らの学校で唯一、東京の学校に進学し、僕は多分に漏れず地元の高校へと進学した。それから20年後、東京で再会し、その1年後に結婚した。
「結婚式と披露宴どうしようか」
ふたりともたくさんの人を呼んで、一度に大きくやることは気が進まなかった。それならば、小さな会を、地元、大学、会社、友人などコミュニティごとにやって、それぞれの人とじっくり話をしたかった。披露宴なら何度もできるが、結婚式はそうはいかない。それならば結婚式は二人でやろうという話になった。場所はどうしよう。東京や地元だと、人を呼ばないほうが不自然だし、失礼だ。そこなら二人で行ってらっしゃい!と、家族も友人も言うような遠い場所。「イタリアは?」と彼女が言った。彼女は昔オペラをうたっていて、ちょっとだけイタリア語も喋れた。ということで、新婚旅行も兼ねて、イタリアでの結婚式を決めた。
結婚式の場所はフィレンツェ。ドレスやメイクは日本で一度試着し、それがそのままフィレンツェに送られ、現地の日本人スタッフの方が着付けてくれて、式の立ち合いもしてくれて、そして涙も流してくれる。でもそれが嫌味じゃなく、とっても温かかった。ほんとうに二人だけだったら、そんなに感動しなかったかもしれない。山田さんとは今も年賀状のやり取りが続いている。
二人きりでフィレンツェで結婚式をあげ、その時、「10年後にまたイタリアに来ようね」なんて話をした。それからは、あと5年だね、3年だねなんて話をしていたら、今年。まさかコロナでイタリアどころか、県外への移動もできないなんて。
というかも仕事もやめてるし!どちらにしても今年は難しかったかな。
コロナが落ち着いて、そして仕事ももう少し軌道にのったら、イタリアへ二人で行こう。そして山田さんと、また涙を流そう。
10年前、イタリアにて。ボケてるけど、一番好きな一枚。