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晩夏のパントマイム3

「でも、周くんは何故このボランティアに参加しているの?」

質問してから、私は心の中で「しまった」と呟いた。また一言多い、いつもの癖が出てしまったと自分の頭をコツンと叩いた。しかしながら、周くんはいつもの営業用とも取れる笑顔を崩さないで答えた。

「どうしよう、倉橋さんなら打ち明けても良いかな。僕、ゲイなんです。それで、更に言うと陽性なんです。」

「陽性…。ごめんなさい、そんな大切な個人的なことを問い詰めるつもりはさらさらなかったのよ。」

私は発送作業の手を一旦留めて、謝罪の言葉を述べながらはたと考えた。

でも、今どきこう言った内部疾患を抱えて生きている人々も少なくないんじゃないかしら。周くんの様子を見ていても、狼狽えたり、或いは嫌悪の表情を浮かべたりと言ったことは無く、笑顔で私の方を見つめ続けているし。私は続けた。

「でも見た限り、周くんは至って健康そうだし、周くんの目には私の方が元気なく映っているかもしれないわね。歳には勝てないものよ。」

「そんな事ないです。倉橋さん、女性としてとても素敵だと思います。」

「この際だから聞いて置こうと思うんだけれども、この内部疾患を抱えて生きていると色々と大変な事も多いと思うの。私に出来る事は無いかしら。」

彼の笑顔は本当に相手を和ませる。その笑顔のまま、私の静脈が浮かぶ両手の甲を指差した。

「倉橋さんは既に僕らの助けになってますよ。」

「ん?」

「こうしてボランティア活動しているじゃないですか。とてもありがたく思います。」

私は彼より数十年も長く生きているのに…自分が情け無くなった。

続く