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【蓮ノ空】104期活動記録第8話「Not a marionette」後篇を読んで【リンクラ】
0 はじめに
フラワー! 先日、活動記録の後編がリリースされましたね。私はリリース即視聴といかなかったので、視聴できるタイミングまではSNS断ちをして気持ちを落ち着かせながら、臨んだ次第です。
読了後、前編に引き続き居ても立ってもいられなくなったため、今回も感想noteを執筆することとなりました。
よろしければ、最後までお付き合いいただければ幸いです。
1 “綴理先輩のオープンキャンパス”を終えて
活動記録前編にて、綴理先輩は3つのお仕事を体験しました。市役所、『茜や』、近江町市場のいずれにおいても、先輩の人に寄り添う姿勢と温かい声掛けは、訪れた人たちの心を満たしてくれるものでした。
綴理先輩大活躍の報を聞いて、後輩たちはもちろん同期の2人も、我がことのように喜んでいましたし、先輩自身も進路調査票を書こうと向き合うところまで、気持ちを整理することができたのが嬉しかったです。
さて、親の判子をもらうため、実家へ帰宅した綴理先輩。先月の幕間ではこずめぐと一緒のお泊り会でしたが、今回は独りの我が家です。翌朝、親が戻るまでの間、寂しさを募らせそうになる先輩を元気づけたのは、スクールアイドルクラブもみんなからのグループチャットでした。
さらに先輩は、眠くなるまでみんなの写真を見て過ごそうと考え、スマホのアルバムを見返しながらこの3年間を振り返り始めました。このパートで沙知先輩の居る写真が出てくるたびに、偉大な先輩のことを思い出し泣きそうになってしまったのは私だけではありますまい……!
沙知先輩を囲む102期から始まり、103期のかほさや入部後の4人体制、ルリめぐ加入後の6人体制、沙知先輩の卒業そして104期9人体制と、我々好き好きクラブもみなさんにとっても懐かしい思い出のラッシュですね。
これは余談ですが、めぐちゃんの休部と沙知先輩の脱退、梢センパイとのすれ違いといった辛い時期には、写真を残す余裕も必要性も無かったためか、その期間一気にすっ飛ばされて103期登場の写真まで行っていましたね……
独りで写真を眺めながら過ごしている自宅を指して、綴理先輩は「空っぽの部屋みたいだ」と言います。家具や物があっても、そこに他者のぬくもりが無ければ、綴理先輩にとっては寮のお隣さんの部屋と同じなのです。
そもそもこの第8話、綴理先輩が卒業を意識し塞ぎ始めるきっかけとなった、空っぽの寮の部屋が、形を変えて再び先輩の心に影を落としたと言えるでしょう。この構成も巧みですね。
2 大事の前の大掃除と、卒業についてのメンバーの想い
連想ゲームのような流れで部室の大掃除を思いついた綴理先輩に尋ねられ、梢センパイを筆頭に部室の大掃除をすることとなったスクールアイドルクラブ。例年、12月~1月は北陸大会と全国大会が控えて忙しいため、この機会に一度部室を綺麗に片づけておこうという提案です。
去年はそれに加えてネット禁止令の一件もありましたし、確かに大掃除どころではありませんでしたね……
掃除の最中に、綴理先輩以外の面々の卒業に対する気持ちや考え等が、雑談交じりにチラホラと語られていたのが興味深かったです。
梢センパイは、まずはもちろんラブライブ!優勝を第一目標に置きつつ、卒業後も乙宗家の娘として恥じぬよう音楽に携わる道を進みたいと言います。
一方で花帆ちゃんは、卒業という単語を聞く度に何とも言い難い複雑そうな表情をしていましたね。それはそれとしてウサギさんポーズはあざといぞ日野下。
めぐちゃんはザックリ「世界中を夢中にさせる」という目標は変わらない、と宣言。姫芽はそれに感嘆の意を示したものの、ルリちゃんの方の反応がこれまた複雑そうなのを見て、またしてもルリめぐが離れ離れになることへの不安を抱きます。
ルリちゃんは自分が最上級生になった時、「世界中を夢中に」という同じ目標を自分なりにどう表現していくか、今から少しづつ考え始めていると言います。
この2ユニットについても、今後スポットが当たる時が来そうな予感がしますので、今はビクビクしながら楽しみに待つとしましょう。
事態が急展開を迎えたのは、まさかの“ぺきんだっく“をめぐるやり取りからでした。綴理先輩お気に入りのそれを、めぐちゃんとさやかちゃんは「せっかくだから持って帰れば」と提案してくれます。
そ れを聞いた綴理先輩は、言葉の意図するところが読み取れず、困惑。続けて「もちろん部室に残しておいてもいいけど、綴理がすごく気に入っていたので」「持って帰ってあげれば、その子も喜ぶのでは」という言葉を受けて、ついに綴理先輩の感情は飽和状態になってしまいました。
「どうして……この子もボクも、ここにいたいのに」
この言葉を受けて、綴理先輩が卒業への気持ちの整理を完璧につけられた訳では、決して無かったことが明確に示されました。ぺきんだっくの持ち帰りを勧めるめぐちゃんやさやかちゃんの言葉には一切の他意が無く、また職業体験を終えてからの先輩はずいぶん落ち着いたし自信も持てるようになったと、みんなの目には映っていたでしょうから、誰もこの反応は予想できなかったと思います。
前編の感想の時にも多くの好き好きクラブのみなさんが懸念していた通り、「卒業後の道行きに希望を持つこと」と「今居るスクールアイドルクラブへの未練を断つこと」は、イコールではありませんでした。後者にどう向き合うかが最大のネックであり、それがぺきんだっくを通して爆発した形ですね。まさかの重要アイテム過ぎる。
ですが、ここがTrueエンドへの分岐点でもあると言えます。
3 “ひとり”になっても、あなたの幸せを願う
飛び出していった綴理先輩に追いついた徒町。2人はそこで、正しいか正しくないかなんてものを取っ払い、本心から思う気持ちを発し合います。
そして徒町は、綴理先輩を置き去りにして進もうとする“時間”に対し、「止まれ」と叫びます。綴理先輩が泣いてしまわないようにと、自分が泣きそうになりながら。
その様子を見る綴理先輩の表情は、微かに穏やかなものになっており、私は徒町のひたむきさと優しさが、先輩にとって確かな救いのひと支えになったのだろうと感じました。
徒町の叫びを聞きつけ、さやかちゃんが後からやってきます。その先の場面での彼女の言葉と意志は、恐らくこの活動記録を読んだすべての好き好きクラブのみなさんに大きな衝撃を与えたことと推察します。
卒業したくない、ずっとここに居続けたい気持ちは分かるけれど、それはできない。
これから先の人生で、誰かが常に傍に居てくれるとは限らない。
これは、前述の綴理先輩が吐露した気持ちに、真っ向からぶつかる言葉です。
それだけではありません。綴理先輩に言い聞かせるための説得の言葉というより、さやかちゃん自身が自分に言い聞かせている言葉なのではないでしょうか。
前編の市役所パートで、自分の仕事を終わらせてから綴理先輩のフォローに行こうと考えたさやかちゃんが、「これじゃよくないこと、わかってるんですけどね」と複雑そうな表情で呟いている場面がありました。あそこも、綴理先輩を独り立ちさせようとする意図とは別に、先輩と離れることを自分も受け入れようと努めている、さやかちゃん自身の心の揺れに感じました。
今回の「ボクはさやとなら」という言葉に対して「わたしだって」と呟いた時の反応も、その表れでしょう。
綴理先輩によってスクールアイドルのステージに引っ張り上げられ、隣で共に歌い踊り、時に背を押し時に支えられて、ここまで歩んできた村野さやか。今更当たり前過ぎることですが、そりゃあ彼女だって寂しいし嫌に決まってますよね、綴理先輩の卒業なんて。
パッと見は落ち着いて割り切っているように見せているだけで、本心から何も未練を抱いていないなんてことは無いと思うのです。なればこそ、「置いていくなら、振り返らないでよ!!」という綴理先輩の決死の叫びを受けて、さやかちゃんのメンタルが揺るがぬままで居られるはずはありませんでした。
正に夕霧綴理こそが、村野さやかを置いて卒業するのに振り返っている、張本人なのですから。
もし明日自分が死んだらどうするつもりなのか、という、ジャックナイフばりのキレ味を見せる極論が出たのだって、さやかちゃんの内心も台風みたくなっている証左と言えるでしょう。
5月の時の「私は、小鈴さんの指導を誤りました」を持ち出すまでもなく、さやかちゃんは本当に感情が動揺すると、一切の体裁やオブラートで繕わない劇薬じみた言い方をしてしまいがちです。
村野さやかと夕霧綴理が、真正面から感情をぶつけ合い、言葉も表情もぐしゃぐしゃになりながら口論するシチュエーションは、103期から今日までのドルケストラの歩みにおいて初のことです。
そして、ひと一番繊細で敏感な感性を持ちつつもそれを整った言葉で表現しづらい綴理先輩と、内に強い熱情を宿しながらも理性と理論を組み立てて傷つかない言葉にできるさやかちゃんが、一切飾らない感情通りの言葉をぶつけ合ったことで、綴理先輩の“答え”を導き出す化学反応が起こりました。
みんなと離れても、幸せであること。すなわち、誰かから幸せにしてもらうのではなく、夕霧綴理が、夕霧綴理自身を幸せにするということ。
このパートの、不意に答えの筋道を見出して、さっきまでの絶望的な感情の揺れが嘘のように消えた綴理先輩の表情と声が、私は好きです。台風の目に立ったかのような静けさを感じた、と言うと大げさでしょうか。
4 ビッグボイス選手権、開幕
後日、綴理先輩によって考案されたイベントは、先輩曰く“ビッグボイス選手権”とのことでした。ご存じの通り、102期生のこずめぐが言い争いの喧嘩をする様子を指して、綴理先輩はこのように呼んでおりました。
今回開催されたのは、心の内に抑え込んでいるどうしようもない気持ちを、思い切り吐き出すというもの。言うまでも無く、さやかちゃんとの気持ちのぶつけ合いを経て、思い浮かんだ企画でしょう。
先鋒を務めたのは我らが徒町小鈴。部室でも、綴理先輩に追いついた時も、実は一貫して「卒業してほしくないです!」という気持ちを述べていた彼女は、この場でもやはり同じ想いを叫びます。
正しいから、という理由だけで、気持ちを押さえなきゃいけないなんて嫌だ──シンプルで分かりやすい徒町の考え方は、さやかちゃんとは別ベクトルで切れ味抜群と言えますね。
例え無理なのが明白でも、案の定ダメで失敗しても、チャレンジだけはし続けるという、彼女の生き様に通じます。
花帆のビッグボイスは、一生一緒にスリーズブーケ宣言! 前編でもちょくちょく梢センパイの卒業を気にする描写が挿入されていた彼女ですが、ここで叫んだのが「このまま傍に居てほしい」ではなく、「この先ずっと傍に居ます!」という能動的な気持ちなのが実に日野下花帆らしい。
それはそれとして、やっぱり花帆ちゃんだって先輩たちには卒業してほしくありません。「センパイ方のいないスクールアイドルクラブ」という、彼女が初めて体験する時が、この先に迫りつつあることへの不安と寂しさで、感情はいっぱいでした。
ここまでの活動記録では比較的落ち着いている“ように見える”梢センパイと、この先どのような向き合い方をするのか、目が離せません。
姫芽は、みらくらぱーく!の一員であると同時にみらぱ推しの最前線として、「るりめぐ離れ離れなって嫌だー!」という魂の叫びを上げました。めぐちゃんは何だか割り切ってる風だし、ルリちゃんもそれに強く異を唱えていないという、活動記録を見る我々にとってもヤキモキしてる部分を、バッチリ指摘しているところがありがたい。
当人たちが納得しているからと言って、第三者が無理やり納得しなければならないのか、という、非常に繊細で難しい問題が、姫芽のビッグボイスには潜んでいます。
それに対しめぐちゃんが「姫芽ちゃんの気持ちに向き合ってあげなきゃ、か」と言っているので、姫芽のビッグボイスはちゃんと効果を発揮したと言えるでしょう。
ルリちゃんは、過ぎ去る時間が寂しいのは認めつつ、だからこそ残り1日1日を大事にしたいと言います。めぐちゃんが卒業しても、ルリちゃんの思う世界中を夢中にさせる方法を模索しながら、頑張っていくと。
ここまでのメンバーと違って、寂しさよりも前向きな気持ちの方を押し出したこのビッグボイスは、決して建前などではないでしょう。気持ちを正直に発表するこの場で、ルリちゃんは確かにこう感じて宣言したのです。この場を設けてくれた綴理先輩への感謝と、巣立っていくめぐちゃんへの応援も忘れないのが流石ですね。
そして、発起人である綴理先輩の番が回ってきます。自分で主催しておきながら、先輩自身は大声(ビッグボイス)で叫びません。
蓮ノ空で、スクールアイドルクラブで、夕霧綴理として積み重ねてきたこれまでの日々が、先輩の心と気持ちにどう作用したか。卒業を控えて紆余曲折を経てきた中、過去と現在と未来にどう向き合うことにしたのか。
それを静かに、優しく、そして力強く言葉に紡いで、みんなに聞かせてくれました。これが彼女のビッグボイスです。
恐らく綴理先輩にとって“ビッグボイス選手権”とは、大声で口論することを指した表現ではなく、抑えられない気持ちを言葉にして伝え合う行為のことを指しているのでしょう。
結果的に102期のこずめぐは、大声で口喧嘩すること自体が抑えられない気持ちを言葉にして伝え合っていたと捉えられているのが面白いですが。
綴理先輩の発言が終わり、会もお開きかと思いきや、最後にステージに上がった者が居ました。103期第6話「わがまま on the ICE!!」を髣髴とさせる、ステージから客席の綴理先輩に向けて手を差し伸べるさやかちゃんの姿は、あまりにも眩しく。
蓮ノ空を去った後の未来でも、綴理先輩の幸福を願うという彼女の想いは、大きくてとても優しい“愛”そのもの言えますね。
そしてこれは、スクールアイドルたちの歩みを見守り、見届け、応援する私たちにも響く考え方です。私たちには、彼女たちが卒業した後の歩みを見届け、傍で応援し、寄り添いながら生きることはできません。
けれど、高校を卒業しスクールアイドルではなくなった後の彼女たちに幸多からんことを、私たちの誰もが願っている、と私は思っております。
104期蓮ノ空の歩みが佳境に入りつつある11月に、この特大のテーマを引っ提げて活動記録として編み上げたライター陣と運営のみなさま方に、この上ない感謝と愛をお伝えします。
5 話せないような壮大な夢の続きは
活動記録第8話のラストでは、綴理先輩と慈先輩の会話シーンが描かれます。元々つづめぐの関係性は非常にバランスが良く、月並みな表現になりますが“尊さ”が溢れるものであると思っておりました。
103期11月の活動記録や、2人が出演するWith×Meetsでのやり取り、そして今回の顛末を見届けたことで、その気持ちは一層強まりました。
綴理先輩から率直に尋ねられると、衒いなく答えてくれるめぐちゃんが良いですよね。みんなと居るのは好きだけど、ずっとひと所に縛られるのは嫌で、変わっていく風景やみんなの姿を見るのが好きという、藤島慈の心情(信条)がここで明確に示されます。
「未来は明るいって、信じてるからさ」という言葉は、102期・103期の様々な困難を踏み越えてここまでやってきた彼女だからこそ、ここまで説得力を持って受け止められるのでしょう。
そして、スクールアイドルだった自分が卒業後に何をできるのか、未だに迷いのある綴理先輩。めぐちゃんからの言葉を受けて、誰かのきらめきを見るのが好きだと、言葉にします。
だからこそ、たとえ沙知先輩のようなやり方はできなくとも、綴理先輩のやり方で、頑張ろうとする誰かのきらめきに寄り添う方法を、探していくことができるのです。
夕霧綴理の3年間が、ここにひとつの夢として、結実したと言えるでしょう。
なお、私は8話前編の感想noteで活動記録とドルケストラ楽曲の関係性について触れました。
その中で、『AWOKE』は既に103期時点で『KNOT』というアンサーソングが提示されていたにも関わらず、今回新たな観点から活動記録に絡めてきた、という旨の言及をしております。
後編を観終わってみると、今度はそこかしこに『KNOT』の歌詞を髣髴とさせる要素が潜んでいるように見えてくるのですから、深読みオタクの発想は不思議ですね。
102期からの3年間で、綴理先輩はいろんな経験をしましたし、たくさんの出会いがありました。それは直近の職業体験での経験も含まれます。そのどれも、後から振り返れば過去ですが、進んでいる最中は他でもない現在(いま)です。
そんな今を何百回、何千回越えたとしても、それが正解だったのか間違いだったのかは分かりません。ですが、正解だから良いことだった、間違いだから悪いことだったなどと断じてしまえるわけではないことを、ここまでの活動記録を追ってきた私たちならばわかりますよね。
なので、そうやって選んできた日々の積み重ねすべてを、ひとつひとつ大切に確かめていくことを、これから先も続けていく。
それこそが人の歩みであり、人生というものなのです。
結局、綴理先輩が進路希望調査票に何と書いたのかは、“秘密”のまま終わりました。話せないような壮大な夢の続きを、彼女がやがて自らの歩みと行いによって、世に解き放つ未来が来ると私は信じています。
6 おわりに
毎度のことながら感情のままに書き連ねてしまい、まとまりのない記事になってしまいました……蓮のシナリオの力が恐ろしい。
今回の活動記録は、これまでリアルタイムに蓮ノ空の歩みを追ってきた私にとって、ひとつの集大成と言っても過言ではないものでした。この先に待つラブライブ!大会と、その向こうの卒業と、願わくばさらにその先の未来まで、引き続きスクールアイドルクラブの行く末を見守っていきたい所存です。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!