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書くことを突き詰めると見えてくる「常識」の本質
この記事では、「書くことは考えること、常識を覆すこと」という言説から思考を飛躍させて、常識の本質を考えてみました。
『三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾』に学ぶ
朝日新聞編集委員・近藤康太郎氏の著作『三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾』。多くの文章の書き方の本が技術論に終始する中、この本は思考法を教えてくれます。
特に、「書くことは考えること、常識を覆すこと」と主張している点に共感しました。 起承転結で「転」が重要だと言います。
転を書けるとは、換言すれば「考えることができる」ということです。
転とは文字通り転がすことです。起で書き起こし、承でおおかたを説明した事象、この事象を自分はどう見ているかを書く。そのことで読者を転がす。読者の常識を覆す。読者が考えてもいなかった方向に話をもっていく。
どうやって常識を覆すか
近藤康太郎氏は、時間と空間を往来し、過去や別の場所で論じられていたことを知ることを、常識を覆す新たなコンセプトを考え出す手法として提示しています。
これは、私がビジネススクールで教えている「アート思考」と同じアプローチです。 「アート思考」は「個人の興味・関心を起点に、革新的なコンセプトを創出する思考」と定義しています。
実際に、受講生には、「自分の興味のある事象から革新的なコンセプトを考えて」アート作品を創るワークに取り組んでもらいます。ビジネスパーソンは、事象に対する統計データなどを探すのは得意ですが、その上で最初にその事象に言及したのは誰で、どのような経緯で見出したのかといった歴史を調べることで、多くの人が常識を思っていることとは違うコンセプトを考え出すことができるようになります。
常識とは人々が抱く幻想
長い歴史の中で読み継がれてきた本は、当時の常識を覆す思考が書かれていたといっていいと思います。歴史上、多くの人が信じていた常識は、新しい発見や思考によって覆されてきました。
マイクロソフトBingの AIチャットで、過去におきた常識を覆したイベントを聞いたところ、次の事象を挙げてくれました。
地球が丸いことを証明したコロンブスやマゼランの航海
太陽中心説を唱えたコペルニクスやガリレオの発見
進化論を提唱したダーウィンの研究
相対性理論を発表したアインシュタイン
かつては多くの人が地球が丸いわけがないとか、地球が動いているはずがないと思いこんでいて、それが常識になっていました。
現在も私たちは多くの常識に囚われています。
人類の歴史は常識を覆す歴史といってもいいでしょう。
とすると、常識とはいったいなんなのでしょうか?
非常識という言葉があるので、常識は正しいというイメージがありますが、
実は、自分や社会が望むようなことを正しいと思い込んでいる幻想なのかもしれません。
だからこそ、これからもいくらでも常識を覆す言説は出てくるし、あっと驚くイノベーションも生まれうるのです。