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自らエース社員の座を返上すること


「変化」というが、どうすれば変わっていくんだろうな。
進化成長していくんだろうな。

大体の意味合いで言えば、
なんか新しいことを取り組みさえすれば
それが前と比べて「変わった」と言えるんだろうな。

しかし最近気づいてきたのは
「変わる=手放す」ということでないのか?ということだ。

それはつまり、いつまでも同じ仕事をし続けることが
退化でしかないと気づいてきたからだ。
現状維持=退化というのは社会人になってよく聞く言葉だが
まさにその通りだと思う。

宇宙とは不変不動なものではないからだ。

仕事をすることで自らの個性を創り上げてきた

私もITに入って若い頃というのは、
会社に言われてやった仕事というのはとてもやりたくないものだったし
迷いを持ちながら仕事に打ち込んできた。

時にはブラック企業で潰されかけたこともあったし
一度居眠りしてクビになった案件もあった。

仕事をする時はいつも「葛藤」が生まれる。
「自分はこの仕事をやるために生まれてきたんじゃない」
「もっと別にやるべきことがある」
「やりたくもないこの仕事はやる気が起きない」

会社に居続けて仕事をやればやるほど生まれた葛藤を握りつぶして今がある。

会社にいる間は「やりたくないこと」しかできない。
心から納得できる仕事ができる人間は
本当の本当に一握りなんだろう。

「心からやりたいこと」というのは会社から離れた時に好きなだけやればいい。
ゲームをたくさんやって、頭がおかしくなるまで酒飲んで。

そう割り切ったからこそ、私は心を鬼にして、心を殺して、
「仕事をする機械」になった。

心からやりたい仕事でないが、だんだん仕事をやっていくうちに
そんなものは慣れてきたし、
だんだん慣れていくうちに迷いも消えてきたし
仕事の実力というのも身についてきた。

慣れていくうちに、できないと思ったことができた、というのを実感するうちに
それまで「やりたくないこと」と見下していた仕事が
楽しくなってきたのかもしれない。

最初のうちは誰かと一緒に仕事をしていないと不安だったが、
段々こなれていくうちに私一人で仕事をやることが多くなってきた。

そうして私の中で仕事が自分のアイデンティティになったし、
気づいたらやがて一人で仕事を回せるようになった。

自分の中では「仕事ができる人間」という自己評価にもつながった。

会社の部署の「エースプレイヤー」として

結果を残し続けていくうちに仕事での自信もついて。
やがて自分のいる部署では、エース格にのしあがったのである。
自分で言うのもなんだが、私は仕事ができる人間だと思っている。

だからこそ会社を辞めようとした時も引き止められたわけだし
「私は仕事ができる」からこそ、
あのブラック企業ですらも私を手放そうとしなかったのだろう。

私はここまでのことを一人でやってきたと言う自負を持ってやってきた。
フリーランスになってからなおのことそれが強くなった。

ITインフラの部署は人が中々入ってこない分野なので
私のエース社員の座が揺るぐことはなかった。

何しろ仕事して結果を出せばエース扱いだ。
トラブルシューティング力に優れ、どんなトラブルだって解決してきた。
生きるか死ぬかと言う修羅場すら潜り抜けたことがある。

そうした経験値とスキルの積み重ねが、
自分で言うのもなんだと言うレベルのエースプレイヤーを作り出した。

しかしエースだからこそ抱えてしまったネックもあった。
何でも独りで仕事のできるエースプレイヤーだからこそ
ワンマンになってしまったところがあった。

「一人で何でもできる」と言えば聞こえは良いが、
この仕事を別の人間がすんなりやるのは難しいのだ。

特に、私に技量が追いつかない後任担当者はたまったもんじゃない。
我流のやり方が磨かれていくので、
マニュアル見てやるのが精一杯の後任が置いてけぼり、
というのがいつものことだった。

マニュアルもどうにも丁寧な構造でなく、
手順から道を逸れたやり方を多用することが多い。

エースプレイヤーというのは孤独で
フリーランスという立場がそれを加速させた。

そこで私はだんだん気づいてきた。

「いつまでも同じ仕事をやっていていいのか」と。
人の上に立つのは、オレじゃあねぇ。

エースからバイプレイヤーへ

今私はITの仕事をしている、強いられていることに変わりはないが
少しずつそれを手放すべきムーブメントを感じているし、
現在進行形でそれをやりつつある。

若い頃は「仕事こそがアイデンティティ」であった、この私がだ。
一心不乱に打ち込んできたこの私がだ。

最近の業務でも、私は「技術者」から「技術者を見守る側」にシフトチェンジしようとしている。
手を動かす優秀な人を育てないとならないのかもしれない、と思い。

昔の私は手をバリバリ動かしていたエース技術者だった。
自分で言うのもなんだがエースだった。エース的存在だった。
だんだんとプレイングマネージャーになりつつある。

「社会で生きるために」と身につけてきたスキルを惜しみなく伝授し、
私はエースの座を返上しようとしている。

いつだか出会ったIT爺さんたちみたいに「生涯現役」と言う選択肢もあり得る。
プレイングマネージャーしながら技術者として一線で戦い続ける。
私なんか70歳近いIT爺さん連中に比べればまだ一線を退くには早すぎる年代だろう。

しかし私はエースの座を返上して、見守る側にシフトを試みた。
最初は慣れないことばかりだった、私が手を動かした方が圧倒的に早いし
答えまで全部言いたがるなど、
慣れないことばかり要求されてしんどかった。

だけどもエースひとりだけで野球はできない。
私が打席を食い潰しては、他の人間の成長するチャンスを奪ってしまう。
人はバッターボックスに立たねば成長のタイミングを失う。
だから私は打席を成長させるべき人間に投資せねばならない。
そうして失敗をしながら覚えていく。かつて私もエース社員になるまでそうだったじゃないか。

手を動かして数々の成功を収めてきたエース社員だった
ワンマンでも数々の実績を上げてきた私は
後進を「見守る」という重労働をし、手取り足取りという感じの
バイプレーヤーに転身していくことにした。

総括

今のペースだと、エース返上をするまでに5年10年はかかるかもしれない。

だけどこれは「チーム」なのだ。
いつまでも私がエースのままじゃダメだと思う。
私だけエースでもチームとしては強くならない。
他のメンバーもレベルを上げていかないとダメだ。

人を育てていかないと誰のためにもならない。
自分が仕事の仕方を変えて、目線を変えていく、立場を変えていくことが

本当の意味で「変える」ことなんじゃないだろうか。

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