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句養物語リプライズ 序章
オッサンの職業は、トラックドライバーだ。運んでいるのは主にアンドロイドである。最近のアンドロイドの進歩は目覚ましく、ほとんど人間と変わらなくなったせいで、皆が挙って仮初めの愛を求めるようになっていることは、前にもお伝えした通りである。そして、オッサンの熱心な営業活動もあって、この会社の実績はうなぎ上りとなり、例のキャンペーンがその勢いを確固たるものとしていた。
『最初の一言キャンペーン』
これは、ユーザーの事前情報を登録したアンドロイドを起動し、ユーザーからは一言も話しかけないというルールの元、アンドロイドが最初に発言した『ことば』を応募してもらうという主旨である。これが大変な好評を博していたわけだが、オッサンは納品時の熱烈なアプローチが会社から認められ、専用端末でキャンペーンの応募データ集計担当を任されるまでになっていたのだ。
これも前にお伝えした事だが、とにかくオッサンはこの応募企画に取り憑かれていた。応募通知がピコンピコンとなるものだから、オッサンは信号で止まる度に、端末の中をチラチラと確認するのだった。
もちろん、この日も表面上は同じ事が起きていたように思えた。いつもと同じように、端末はその一言が届いたことを、自慢気に伝えてくれていた。
オッサンは嬉しい悲鳴だとばかりに、「またかよ〜」と呟いてから、自分自身も短い文字列を口にした。
『通知ピコンピコン運転中だってば』
オッサンはなんだか可笑しくて、クスクス笑いながら、真っ直ぐ前の方を見遣った。次の信号でまた、新しい「ことば」に出会える。オッサンの運転は、その繰り返しになりつつあった。送られてくるのは必ず『一言』だから、信号が変わるまでの間に確認する事ができていたのだ。
だからこそ、オッサンは驚く事になる。次に届く一言は、二人のユーザーから送られてきたのだが、一見して何の関連性もなさそうなのに、その二つは明らかに紐付けられているように思えた。というのも、すぐ下に謎のリンクアドレスが貼り付けられていたからだ。
【句養物語リプライズ『箱』】
『秋蝶の飛んで鱗粉光る夜』
(鈴白菜実)
『嫦娥なる天女の君や水鏡』
(風早杏)
※『箱』の中身を確認する
【句養物語リプライズ『葉』】
『逢いたくてただ逢いたくて緋色の羽』
(猫のたま子)
『うるみゆくエンドロールや秋の空』
(猫髭かほり)
※『葉』を拾いに行く
【句養物語リプライズ『星』】
『転生の予行練習蝶眠る』
(森中ことり)
『最後はねルール破って星月夜』
(でんでん琴女)
※『星』が照らした真実を見に行く
【句養物語リプライズ『詩』】
『星月夜迷路の果のここにいて』
(ヒマラヤで平謝り)
『一瞬の胎児の夢か流れ星』
(山川腎茶)
※詩の欠片を探しに行く
【句養物語リプライズ『蝶』】
『遊園地へ行こう蝶々連れ出して』
(里山子)
『ひとりよりふたりのうたのあたたかし』
(ヒマラヤで平謝り)
※『蝶』を野へ放つ
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