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[第2弾]ZOOM株は未来のGAFAか?それともオワコンなのか。ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ徹底考察②

この記事は企業としてのズームを理解する目的で書いています。前回の記事は多くの方に訪問頂き、またツイッターでも励ましを頂きありがとうございます。投げ銭頂いた多くの方にも感謝致します。記事を書く原動力となります。
また決算を控えての株価とトレードの話は、考察とは別の記事で書いていますので宜しくお願いします

さて、今回も長文になってしまいましたがズーム・ビデオ・コミュニケーションズ徹底考察の第2弾です。書き始めてわかりましたが、頭の中に情報は沢山あってもそれを文章としてまとめるのは難しい💦。それではどうぞ。

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4.市場シェア

ビジネスモデルチェックシートには市場シェアという項目を入れています。シェアという概念は、例えば自動車業界で総販売台数のうち何パーセントがベンツだったとか、そういう視点において有用です。しかし「フリーミアム」を戦略の要とするアプリ業界についてはあまり重要ではないかもしれません。ユーザーはアプリをすぐにインストールでき、そしてすぐに浮気されます。Easy Come, Easy Go. またWebビデオのアプリとしてズームは強いですが、Teamsなどチャット機能を売りにしている競合アプリも多いため、カテゴリーの曖昧さも考慮する必要があります。
IT Mediaビジネスさんにこんな記事があります。学校はZoom、広告はGoogle Meet、通信業はWebex 業界によって異なるWeb会議ツールシェア。ズームの主な課金対象である、企業や学校においてシェアを獲得することは意味があります。業界でデファクトスタンダードになると継続的な大口顧客になる可能性があるからです。
ただし現在小中学校などの義務教育には、ズームは機能を無料開放しておりあまり収益になっていません。高等教育以上については、授業料に対するパフォーマンスの悪さが非難にさらされているため、キャンパスを保有している場合、平常化すればオンラインを継続しない可能性があります。(現在この点の評価はまだ定まっていません。参考記事)
また個人ユーザーについては、ズーム飲みや家族通話に使ったとしても課金率は低いでしょう。よってコロナ禍で作られている一時的なニーズは、シェアを取るというよりも市場の確立が優先となります。
そうなるとやはり、企業や組織における継続利用をどれだけ取り込めるかが当面の鍵となります。
前回記事ではアプリのダウンロードランキングを紹介しましたが、ズーム本体は現状まだPCでの利用が主力と見ていると思います。市場の主な比較先はチャットアプリではなく、Zendesk, Dropbox, Docusignのような、企業で使われるサービスとの中で「予算枠」を確保するという視点が適切です。従って当面ズームの理想形はAdobe(時価総額2220億ドル)になるかな、と思う部分もあります。顧客の継続課金が安定し裾野が広いという意味でです。

5.競合との差別化・独占性

前項でも触れましたが、市場が複数にまたがっているので競合と単純比較は難しいです。わかりやすいのはRing CentralやマイクロソフトのTeams, Google Meetといったサービスが競合と言えるでしょうか。Ring Centralについては使用したことがないので、比較記事などを参考にしてください。またマイクロソフトの製品が浸透している組織ではTeamsが有利です。チャットを軸に、企業で使われているドキュメントやメールなど他のツールとの親和性があります。それと比較してZOOMはミーティングに特化していますので、大手他社が同等のシステムを実現した時に乗り換えられるのでは、という懸念が多くの投資家にもあるでしょう。
ズームが便利な点はオンラインミーティングができて、かつ録画して保存も可能な点です。自動議事録機能も利用可能です。今まで全員会議室に集まって資料を配り、議事録係を置いていたような作業が要らなくなるわけです。ミーティングは録画保存され、発言は文字起こしで記録される。近い将来翻訳も。便利ですね。そうなるとむしろ参加者が近くにいてもオンラインでやった方が良くなります。でも録画や議事録機能はZOOMの専売特許ではありません。他社も同じ機能を揃えられますので、差別化が盤石とは言えないでしょう。
そこでズームは他社と立ち位置の軸を少しずらしてきています。有力な他企業とガチンコ勝負して勝つことを目的とせず、「貴社の基幹システムのお供にこの機能どうですか~?」と入れ込む戦略を取っているように見えます。食事に例えれば、刺身やハンバーグといったメインディッシュにこだわらず、ある時は冷奴のようなサイドディッシュとして…またある時は味の素のような隠れた調味料として(合っているのか?この例え😅)…ズームの機能を入れておいてくださいという売り方です。協業ですね。まあ元々SaaSにはHorizontalとVerticalという括りがあるのですけれども。
実際、先月のZoomtopia 2020で発表した「Zapps」で、セールスフォース、SlackやDropboxといった、著名なBtoBサービスとの連携を発表しました。

と、ここまで書いて気づいたのですが、Zapierから名称の盗作だと訴訟を起こされていた「Zapps」(ZapierはZapsという名称を以前より使っている)。個人的には「この名前ダサっ」と苦々しく思っていたのですが、公式では単語が消えているじゃないですか。どうやら名称はZoom Appsにしたみたいです。おそらく。

Zoom Appsのイメージと連携先

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気を取り直しまして、Zoom Apps。メリットは、顧客からすると既存のシステムからわざわざ乗り換える必要がありません。連携先企業からすると、
・自社製品がメジャーである場合は顧客の利便性に繋がる
・まだ知られていない場合はZOOMのユーザーに自社製品を売り込める

という利点があります。共存共栄。それは可能なのか。この辺りはチェックシートのエコシステム度の項目で改めて考えます。
また同じくZoomtopiaでは、Alameda Health Systemという医療チェーンが、ズームを利用し数日で遠隔医療の体制を整えた事例を発表しました。システムが安定しないと支障がある業界に対して、カスタマイズしてしっかりシステムを構築する。こういった方向性も力を入れていくようです。今後売上の柱に育てられるかも注目です。
以上のようにズームは自社ユーザーの過度の囲い込みではなく、知名度・システムを生かした多様化戦略により、競合との差別化及び生き残りを図っていると言えます。

〇疑問

ここで1つの疑問が出ます。それは

・ZOOMは企業や組織向けサービス(BtoB)だけでも、今の成長と株価は維持できるのか?
・それとも個人市場も取らないと頭打ちなのか?

という問いです🤔。

6.顧客の心理的抵抗の低さ

心理的抵抗という物差しには2つ含んでいます。1つは「導入するのに心理的抵抗があるか」、もう1つは「使い続けるのに心理的抵抗があるか」、の2点です。
導入については前述しました通り、フリーミアム作戦があるので元々かなり低いです。
特にズームは「ズームという単語がメディアやネットで拡散している」ことにより、著しく有利です。
日本ではZOOM映えという単語が流行語大賞にノミネートされるほど、ズームの知名度は上がっています。「ググる」みたいなもので「ズームする」と動詞化されています。この宣伝効果は莫大で、もしネーミングを例えば"Meet on Web"みたいな難解な名前にしていたら、ここまで広がることは無かったでしょう。ズーム、ズームと話題になるお蔭で「え、まだズームしてないの?」という雰囲気が出来上がります。ブランディングの勝利です。
ズームという会社の価値を測る上で、この知名度による知的財産・intellectual propertyの価値はもっと評価されて良いと思います。仮にもしズームという会社を誰が買うとしたら、価格としてかなり上乗せされるべき財産です。多数のメディアが無料で宣伝してくれている訳ですから。
さて次に、使い続ける上での心理的抵抗についてはどうでしょうか。私は今、機会あってヨーロッパの大学のオンライン授業に参加しています。使っているのはズームでなくMicrosoft Teamsなんですけれども。実際に授業をオンラインで受けていると「ああ、これは難しいな」と感じることが多いです。
まず出席管理がおざなりになります。目の前にいないので、生徒は聞いているフリをしてさぼったり、出先から接続したりやりたい放題です。カメラを切って参加している人もいますので、もはやそこにいるかどうかもわかりません。講師もいちいち突っ込んでいると授業にならないので一方的に話を進めることになります。学ぶという環境の創造に支障が出ます。
そしてなにより学生側のモチベーションが持ちません。通学して人と会うことなく家で画面と向き合っていると、なんのための学校かわからなくなります。キャンパスライフどころか自室から出ない訳ですから、友人も出来ずこれはやる気に影響大です。意欲がもともと高い学生や、卒業に意味のある難関大学とかなら大丈夫かもしれませんが、中途半端な学校では学生が離脱しやすくなります。なんとか運用方法で対策しても先生側がついてこれなくなる可能性があるので、仕組みとしてキツイです。(ただしオンラインで授業をする前提で、広い地域から学生を募るメリットがあるバーチャル学校のようなものでしたら、その限りではありません。)
これは学校の例ですが、ほかにもズームを使うことがtorture=苦痛である、早く元に戻してほしいという分野もあり、そこからは長期的なニーズは見込めません。
しかし逆にメリットの多い分野もあります。今まであまり触れていませんが講演会やセミナー、〇〇教室など人を集めるイベントです。
私も経験ありますが、セミナーを開こうとすると通常、
1.日時を決めて会議室を予約、料金支払い
2.見込み先に案内を出す、出欠を回収
3.現地でプレゼン資料のモニター確認、マイク確認、飲み物の手配など
4.当日は受付と名刺・参加費回収、席案内
5.終わったらアンケート回収、後片付け…
といった感じでものすごく手間です。まず何人来るかわからない段階でお金を払って会場を押さえないといけません。それも交通の便と見栄えが良いところに。出欠についても土壇場まで返事が来なかったり、ドタキャンされたり。当日は受付担当を置いて対応してもらい、参加が少ないと見栄えが悪いなと考えながら話し、最後はアンケートまで書いてもらって回収…思い出すだけで疲れてきました😅。
今書いたような手間とコスト、オンラインでしたらほとんどいらないです。会場費もかからないので一回当たりの参加費も落とせますし、お互い移動しなくても良い訳ですからWin-Winです。課金もアンケートも仕組みで楽々ですね。こういった使い方は心理的抵抗をとても軽くします。今まで受け入れられなかった文化が根付くであろう例です。
それもありズームは"OnZoom"で今後このテーマを注力する予定なのでしょう。売上の拡大は「利用を始めやすくて、やめにくい」分野をどれだけ創出できるかにかかっています。OnZoomについてはまた後でエコシステム度の項目で触れます。

7.非離反性・継続必要性

非離反性、という言葉があるかわかりませんが勝手に入れてみました。言いたいことは、一度顧客になった人たちが抜けない度合いですね。ビジネスモデルチェックシートでこの項目は低い評価にしています。また前項で、学校では継続必要性を感じないのではないかと予想しました。
学校以外の在宅コミュニケーションについても、"現状では"離反が起こりやすいと"思われている"、と思います。実際はコロナ後も一定のニーズが残ると思いますが、ズームが動詞化され、象徴化された反動として「我々はコロナウイルスに打ち勝った。さあズームを捨てて外に出よう!」という浮かれキャンペーンが出る可能性を捨てきれません。コロナの悪夢と共に忘れ去ってしまおうと。
ユーザー数が減るかは問題ではなく、連想から不人気化するというシナリオの話です。現状ではその局面に差し掛かっていますし、大いにあり得ます。
「え、じゃあ早く売った方が良いのでは!?」と思うかもしれません。もう少し考えてみましょう。上記5の後に書いた疑問、
・ZOOMは企業向けサービス(BtoB)だけでも今の成長、株価は維持できるのか?
という問いを思い出してください。
企業がズームを導入している理由は、「コロナに勝つため」などという精神論ではなく、項目2で挙げたようなコストダウンに繋がるからです。または利便性が優れているからです。コロナが落ち着いたとしても、一度変わった文化を元に戻すでしょうか。豪華な会議室を借りなおしたり、対面しないと失礼だからズームはやめようとか、なるでしょうか?あるいは来店しなくても受けられるサービスを開始した店が「これからはやはり来店してください」と言うでしょうか?
一部は戻るかもしれません。しかし多くは戻らないでしょう。思うに対面回帰を声高に叫ぶ人は、既得権益者か高齢者ではないでしょうか?(偏見)。そうではない、合理的なもの、便利なものを選択する人はむしろ増える可能性があります。
したがって、私はワクチンが出てきた後、
・学校利用は抜けていきやすい
・個人のプライベート利用も減るかも
・企業はあまり抜けて行かない
・新しいニーズ、セミナーや遠隔サービス等の利用はむしろ増える
と予想しています。
多くの人が、コロナ終了⇒ズーム終了の例として見ているところは大した収入源ではなく、実際の売上は成長を続けられる可能性があります。決算として7月までのデータしかわからない現状では仮説に過ぎませんが、今後次第です。
この項目の評価値を低くしたのは、業績と関係なくともしばらく(既得権益者達の)風評被害にさらされる可能性を加味してあります。そして美人(美男子)投票と言われる株の取引において、その影響は無視できないと思うからです。

これで全項目の半分が終わりました。長い😅。ズームに関して理解が深まりましたでしょうか。
この連載は決算前にズームについて考えてもらうために始めたのですが、思いのほか時間がかかってます。決算前トレードには間に合わないと思うので、最初に書きました通りトレードの意見は別記事にしてあります。この考察は要望がありましたらまた第3弾を書く予定です。
投げ銭や感想、良いねなど、反応があると嬉しいです。引き続きよろしくお願いします😊。

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Star@アメリカ株/米国株投資家 from欧州
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