Trainee Delegateに応募してから1年が経ちました

 タイトルの通り、Trainee Delegateに応募してから1年が経過しました。
 新型コロナウイルス感染拡大の影響などもあり、大会がほとんど開かれなかった1年でしたが、SCJの設立準備に関わったり、昨年末に開催されたWelcome Back Ayase Winter 2020で初めて大会実行委員長を務めたりする中で、色々わかったこともあったので、ダラダラ書いていきます。


Trainee delegateに応募した理由

 昨年2月23日に、SCJの前身であるJRCAからTrainee Delegate募集のお知らせが発表されました。
 10年以上スピードキュービングという競技に取り組んできて、コミュニティに恩返ししたい気持ちが以前からあったことや、自分が競技者としてバリバリ活躍できるのはあと数年間だけだろう、という考えもあったので、「自分で大会を開催(監督)できるようになれば、自分にもプラスなことがあるはず」ぐらいの気持ちで、それほど深くは考えずにDelegateに応募しました。私にとって非常に自然な判断でした。


Delegateのお仕事

 無事に選考を通過し、Trainee Delegateに就任したのは4月のことでした。この頃には国内の大会はいくつか中止が決まり、日本大会2020の開催是非についても、議論が行われている最中だったように記憶しています。

 Delegateの役割としては、例えば以下のようなものが挙げられます。

・大会の監督
・WCAページ上での大会の作成(WCATへの大会承認申請)
・大会結果の送信
・大会レポートの作成
・各大会における実行委員の監督
・WCA内での活動
・地域団体との関係づくり
参考)WCA Motion, Delegates, 5. Duties of WCA Delegates

 ほとんどは大会絡みのことになるので、大会が開かれない間は、最初の5つについてはやることがありません。WCA内での活動についても、(積極的に関わろうとしなければ、)1日数件送られてくる英語のメールを読む程度です。

・大会の監督
 文字通りです。大会に参加したことのある方はお分かりになると思いますが、いわゆる大会当日のDelegateのお仕事です。競技が問題なく進行されているか監督し、インシデントなどの問題が発生した際には対応します。

・WCAページ上での大会の作成(WCATへの大会承認申請)
 大会ページを見てもらえればお分かりになるかと思います。例えばWelcome Back Ayase Winter 2020では、このページを作成しました。大会の概要や開催種目、タイムスケジュールなどについて、大会作成ページのテンプレートに沿う形で入力したり、そのほか大会独自の特別な対応があれば、「COVID-19対策 / Countermeasures for COVID-19」や「集合時間と競技スケジュール / Gathering and competing schedule」といったタブを新たに作成して、その旨を掲示します。

・大会結果の送信
 大会で出された各競技者の記録を、WCA Liveを使ってWRTに送信します。大会当日、会場の片付けが終わった後にその場で済ませます。やり方がわかっていれば短時間で終わる作業です。

・大会レポートの作成
 大会概要、大会実行委員の体制、当日のスケジュール進行などの各種項目について、テンプレートに沿って入力していきます。こちらについても、(英語がある程度できるなら)そこまで大変な作業ではありません。

・各大会における実行委員の監督
 これについては、私もほとんど経験がないので何とも言えません。
 WCA Motion (Delegates)内では、「5.8.2 For every WCA Competition that they are overseeing, WCA Delegates make sure Competition Organizers and Competition Staff are fully capable, equipped, and prepared to make the competition successful」と書かれていますね。自分が監督する大会について、Delegateは、実行委員や当日スタッフに大会をうまく開催する十分な能力が備わっているか、そのために必要な道具はそろっているか、そのための準備が整っているかを確認する必要があるわけです。
 十分に経験のある実行委員ならDelegateが深く関与せずとも問題なく大会を開催できるかもしれませんが、大会の企画・運営が初めて、あるいは経験が浅い実行委員については、Delegateがちゃんと監督したり手伝ったりしてあげてね、ぐらいの意味だと思っていいでしょう。


今年1年何してたの?

 国内で大会が開かれなかった間は、日本大会2020における種目ごとの参加制限を満たすための、国内における各種目ごとの大会開催回数の調整や、法人化の過程で必要になった資料の作成(アフターコロナの大会開催プラン、SCJの管理下における大会開催方針、etc.)など、つまり、地域団体における活動を行ってきました。これらについては、Delegateとしてではなく、法人化準備室の一員としての立場が大きかったと思います。
 元々、Trainee Delegateに応募した理由は新法人のことに全く関係なかったので、時々「こういうことをするためにDelegateに応募したわけじゃないのにな」と思うこともありました。無論、国内におけるコミュニティの活動継続のために重要なことだというのはわかっていましたが、いまいち乗り気になりませんでした。
 新法人の設立は、それまで国内で個々に活動していたWCA Delegateを組織化することで、属人化していた運営ノウハウをマニュアル化し、次世代の人材に引き継いでいく意味合いもあったので、その流れで私も法人化準備室に所属することになりましたが、正直なところ「自ら志願して」という感じではありませんでした。

 昨年9月頃からは、SCJ体制下での初めての大会となる、Welcome Back Ayase Winter 2020の企画が始まりました。11月末には無事SCJが設立され、12月末にはWelcome Back Ayase Winter 2020を予定通り開催することができました。これについてはあとでもう少し触れます。

 コロナ関連の情勢が今後どうなっていくかはわかりませんが、今年は去年よりたくさん大会を開催(監督)したいですね。そのためにTrainee Delegateに応募したので。
 SCJ設立以前と違って、Delegate自身が大会を企画する機会は今後少なくなると思いますが、公募した大会企画をサポートする形で、大会の開催に貢献できればと思っています。


日本のDelegateの現状

 日本ではここ最近、長年にわたって日本のWCA文化を支えてきたDelegateの方々が、プライベートの都合などにより数多く退任しています。2019年には須賀さん、徳田さん、大畠さんが退任、2020年にはRaphaëlさん、巣瀬さん、大艸さん、田中さんが退任されました(田中さんについては、現在退任手続き中)。
 退任するDelegateがこれだけたくさんいるのに対し、ここ最近は新たにDelegateに手を挙げる人もおらず、次世代への役割の引継ぎができていません。Delegateに興味のある人がいなかっただけかもしれませんし、あるいは、Delegateの役割を次世代に引き継ぐための努力が足りなかったのかもしれません。何にせよここ数年、Delegateは減る一方でした。

 2021年3月現在、国内で活動しているDelegateは、大村さん、鈴木さん、塚本さん、私の4名のみです(私はまだTrainee Delegateの立場ということもあり、1人で大会を監督することができません)。このうち、SCJの管理下で大会の開催にしっかり関与できているのは、大村さんと私の2名のみです。塚本さんと鈴木さんについては、プライベートが多忙なこともあり、大会の企画にあまり積極的に参加できていないのが現状です。


Delegateが少なくなると

 Delegateが少なくなると、大会開催の機会が減ってしまいます。SCJ体制下においては、継続的に大会を企画・運営してくれる人材を育成するため、各公募企画について担当のDelegateが割り当てられ、実行委員にアドバイスなどをすることになっていますが、複数の企画の掛け持ちは時間的な制約から難しいわけです。
 大会の企画・運営に手を挙げてくれる人がたくさんいたとしても、同時に複数の企画に対応できるほどの人材が、日本国内、SCJには現状いないのです。
 また、大会の金銭的な面についても、Delegateのいない地域で大会を開催しようとすると、他の地域から派遣されるDelegateの交通費や宿泊費などを実行委員側で一定額負担する必要があるため、大会参加費を増額したり、利用費の安い会場を見つけたりするなど、何かしらの工夫が必要になってしまいます。


Delegateとしてのキャリア

 今後国内でDelegateになりたいと思った場合、私と同じく、Trainee Delegateの立場からそのキャリアを始めることになります。1人で大会を監督できるJunior Delegateに昇格するには、大会の企画・運営経験や、大会での監督経験が必要なため、Trainee Delegateに応募してから1人で大会を監督できるようになるまでに、(大会の開催数自体が少ない昨今の情勢を考慮すると、)少なくとも1年程度の期間が必要になるでしょう。
 Welcome Back Ayase Winter 2020での私の大会実行委員長の立場は、Junior Delegate昇格のために必要な経験の1つだったわけです。


Welcome Back Ayase Winter 2020を主催して

 Welcome Back Ayase Winter 2020で初めて大会に最初から最後まで関わってみて、思ったことを書いていきます。Trainee Delegateとしてではなく、大会実行委員長として思ったことがほとんどです。
 Welcome Back Ayase Winter 2020は、コロナ禍では初めての大会開催だったということもあり、Junior Delegate昇格のために経験を積む必要がある私を筆頭に、3人のSCJ社員が大会実行委員として作業にあたりました。

 大会を主催するにあたり大変だったのは、なんと言ってもコロナ禍における特別対応でした。
 WCAが発表したCompetition Safety Policyを確認し、それを考慮した会場レイアウト・競技スケジュールを考え、来場者の個人情報の収集や見学申請の方の対応、これらの特別対応を導入した大会の開催許可をWCA Boardに申請、WCAページ上での各種情報の掲示、また、これらに必要な文書・スライドの作成など、特別対応の内容は多岐にわたりました。作成する文書は、当然日英両言語です。
 幸い、私は英語が比較的得意な方だったので、文書類の作成はそこまで苦労せずにやり遂げることができましたが、それよりも煩わしく感じたのは、個人情報の収集や見学申請の方の対応、個人情報を送信していない方へのメールの送信など、毎日のメール対応でした。
 個人情報入力フォームや参加者からのメールを毎日チェックして、適宜メールに返信し、各参加者の情報を管理するというのは、思った以上に面倒な作業です。大会の申込期間開始後に、メールのテンプレートも何もない状態からあれこれこなすのはなかなか大変でした。
 「たくさんの人やモノを管理するのは、やっぱり大変なんだなあ」と改めて思いました。

 ネガティブな感想をつらつら並べましたが、作業の多くを私が担当したこともあり、こうした感想を持ったのかなとも思います。4~5名程度の実行委員で作業を上手く分担すれば、全然大変じゃないとは言いませんが、かなり負担は減るでしょう。

 こうした面倒な作業とは裏腹に、WCAページ上に自分の作成した大会ページが公開されたときや、大会当日、久しぶりに会うキューバーが談笑している姿、熱心に競技に取り組む参加者の姿を見たときには、得も言われぬ達成感がありました。
 また、小規模かつ制限の多い大会であったにもかかわらず、大会後のアンケートにはポジティブな内容の回答が多く、とても嬉しかったのを覚えています。
 競技者としては、NRチャレンジに失敗したり、従来の大会とは違って種目数・ラウンド数ともに少ない大会だったりと少し残念な点はありましたが、10か月ぶりに国内で大会が開催できたこと、1人の感染者も出すことなく無事大会を終えられたことについては、本当に良かったと思っています。
 大会関連の作業や、大会当日にお手伝いいただいたスタッフの方々、コロナ禍での特別対応にご協力いただいた来場者の方にも、この場を借りて改めてお礼申し上げます。

 競技者とは違う目線から「大会」を知ることができたのも、個人的には面白かった点でした。主に大会予算の話になりますが、「大会の規模がこれぐらいだと、これぐらいのお金が動いてるんだなあ」とイメージできるようになったのでよかったです。新しい目線から物事を見られるようになると、新しい発見がありますね。


最後に

 Trainee Delegateに応募してから1年という時間がたったので、やる気のあるうちにあれこれ書いてみました。けっこう長くなっちゃいましたね。
 国内のDelegateが不足している現状について、皆さんに知っていただけたなら幸いです。今はコロナ禍で大会企画が少ないこともあって、なんとか作業をこなせていますが、今後どうなっていくかはわかりません。こうした現状があるんだということを、頭の片隅にでも入れておいてもらえればいいかと思います。

 Trainee Delegateについては随時募集中です。SCJホームページ内に募集要項も掲示されているので、興味がある人はチェックしてみてください(ページ内下部)。
 個人的に聞きたいことがあれば、Twitter等で連絡をくれてもかまいません。可能な範囲で回答します。

 また、先日発表があった通り、WCA日本選手権2021(仮称)の開催が決まりました。今後国内の情勢がどうなっていくかは予想がつきませんが、無事開催できるように頑張っていきたいですね。

                               おわり


※文中の「大会」は、全てWCA大会のことを指しています。


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