昔の男~season3~孝史という男01
その男は、孝史(仮)っていう18歳年上のバンドマンだった。
とある大学生の時の夏。
私の友人が、彼氏が出ているからって、とあるクラブイベントに付いていった。
興味本位で付いていたものの、友人はみんなと挨拶を交わして、私の事も紹介してくれるけど、
誰も知らない人ばかりで、だんだんつまんなくなってきていた。
スピーカーの前にもたれて、ひとりでドリンクを飲んでいたら、孝史が声を掛けてきた。
「つまんないの?」
と聞かれ、「ちょっとね~」と私はこたえた。
「いくつ?」
「19です、もうすぐはたち」
「見えないね、大人っぽいよ。俺は29歳」と彼は言った。
嘘だった。後日知ることになるが本当は37歳だった。
29歳でも信じてしまったぐらい、彼はとても若く見えた。
友人が、彼氏のDJプレイに夢中になっているうちに、私たちは、連絡先を交換し、食事の約束をした。
彼は、身長は低いけど、自信に満ちあふれた立ち振る舞いで、魅力的だった。まぁ、実際に年令はかなり大人だったが。
単純に顔面がかっこいいってのも良かった。
よく「アルパチーノも、隣に自分より背の高い女連れてるけどかっこええやろ」とか言っていた。
帰り道、友人の運転する車の中で、出会いがあったことを話し、キャッキャ言いながら、新しい男と出会ったあのワクワク感を味わった。
数日後には、食事の約束をした。
私は、何事もスピード感のあるほうが好きなのである。
10代の頃から、それは変わっていない。