昔の男~season4~亮介という男01
亮介との出会いは、職場だった。
私がアルバイトしていたショップに、入社してきた2つ年上。
年上なのに、入社時期的に後輩だからと、ずっと敬語で話すような律儀な人だったし、
タトゥーが入って、怖そうな顔をしている割に、仕事に対してはとても真面目だった。
同僚に、孝史の愚痴を話したりしていたこともあり、
「あなたには、亮介くんみたいな人の方が良いんじゃないの?」と言われたこともあった。
孝史の束縛に嫌気がさしていたし、周りからも孝史とは別れた方が良いんじゃない?と言われていた。
亮介の仕事へ真摯に向き合う姿、同僚への気配り、紳士的対応。
気付けば私は、「いい人やな…」と思うようになっていた。
そこからは、早かった。
2人で仕事の日もあったし、空き時間には少しおしゃべりして、忙しい時間には協力して店を回す。
接客業ならではの、一致団結感も後押ししてか、亮介の事がどんどん気になっていくのに時間はかからなかった。
ある時仕事終わり、亮介と2人だった時、食事に行くことになった。
もちろん孝史には秘密で。
孝史への罪悪感はあまりなく、もはや『高校生の時に夜に男の子と会うのを両親にいかにバレないようにするか』といった感覚があった。
孝史の束縛は相変わらずだったけど、家へ帰ってるだとか、女友達と食事に行ってるだとか言ったかな…。
電話が何度も何度もかかってきたり、メールが何件も届いていたりしてたけど、その時にはもう亮介と一緒に居たいなぁ、楽しいなって、気持ちが動いてしまっていた。
孝史にはもう、怖いとか、しんどいとか、そんな気持ちしか持てなくなっていたように思う。
相変わらず電話が鳴るたびにビクビクしていた。
亮介も、そんな彼氏がいるのを知っていたから、大変やね…って慰めてくれたように感じた。
今思えば、フィルターを掛けて自分の都合のいいように物事を捉えてただけなんだけど。
この時は、楽しくて何も気付けなかった。
男女の始まりって、何が起こっても楽しいもんね。
何度か食事に行ったり、夜遊びしたりしているうちに、私亮介と付き合うんやろうなぁ…と思っていた。