昔の男~season3~孝史という男09
孝史に初めて反抗したのは、働いていたショップの店長と、隣店の友人と3人で飲みに行った時だった。
みんな、私にどんな彼氏がいるか知っていたし、店長は店に私用で電話してくる非常識な大人。とも認識していたし。
私も、ちょっとだけ愚痴ったりもしていた。
その日は、みんなで居酒屋で話していて、すごく楽しかった。仕事の話や、それぞれの恋愛の話、等々。
孝史と付き合いだしてから、新しい友人を作る事は難しかったので、とにかく楽しかった。
そろそろ終電って頃に、いつも通り孝史からの電話が鳴り続け始める。
私は、気付かないふりをして、おしゃべりに夢中になっていた。
そのうち、友人たちも電話に気付いて、「出なくて大丈夫?」と気にしてくれたけど、、、全く出たくなかった。
楽しい時間を終わらせてしまうのがツライ、けどお説教は怖い、正直めんどくさい。そして、やっぱり怖い。
そうしているうちに、その日は友人が、泊めてくれると「まだまだ、私と飲みたい」と言ってくれた。
その日、初めて反抗することにチャレンジした。
「友達が泊めてくれるって言ってるから心配しないでください。帰らんから。」
もちろん、孝史は、私が友人と一緒だってことにはお構いなしで、お説教を始めた。
いつまでも。え?終電過ぎてんじゃね?てくらいの時間まで。
「帰ると約束したやろう」「だらしない女や」「嘘ばっかり言ってその場を誤魔化そうとして、お前のしょうもない性格が良く現れてる」等々(笑)
それまでなら、素直に応じて、素直に帰ったでしょうが。私の目の前には、自分の力で仲良くなった、友人がいて待ってくれている。
なんと非常識な時間か、、、とムカムカしてきていた。
次の瞬間、ずっと言いなりになっていた私は、
「私の大事な友達と話してる。これ以上邪魔しないでください。」
プライドの高い孝史は、それ以上何も言わなかったけど、声は怒っていたように思った。
私は、その日初めて、自分で選んだ職場の、自分の友人たちと、自分の意志で飲み明かした。
朝方には道端で吐いてたが、それでも楽しかった。
明日、孝史にお説教されるんかなぁ。って気持ちは、少しちらついていたけれど、友人たちは、私に、大丈夫大丈夫と何度も言ってくれた。
友人が言うには、「邪魔しないで」って言った時の私が、格好良かったそうな。
心強かったし、誇らしかった、今でも仲良しの友人。
孝史への気持ちは、この件をきっかけに薄らぎ始め、反抗したという自信から、次の男へと目を向け始めた。
それが地獄の始まりなんですけどね……っと。