#0 プロローグ 『とにかく暑かったあの夏、デザイン会社の僕らはシーサイドダイナーを作った。』
こんにちは。智原(@hktchr_)と申します。
デザイン会社 stansの代表をしています。
やっと。書く気になりました。
先日、ZIZOのみなさんが福岡を訪れた際、stans事務所に立ち寄ってくれて「DILLY DALLYの話を聞いてみたかったんです!」と言ってくれました。
それで、社内ではすっかり過去の話となったDILLY DALLYの立ち上げ話を、思い返しながら話してみたんです。すると、みなさん面白がって聞いてくれて「あの夏、僕らは特別な経験をしたのかもしれないな」と思いました。
ZIZO 坂口さんに「なんでコンテンツにしないんですか?」とキラキラした目で聞かれた僕は「メンバーからずっと言われてるんですが、腰が重くて…」とは言えず「書きます!」と宣言してしまいました。僕は有言実行タイプなので、言ったからには書いてみようと思います。
記録的な猛暑が毎日ニュースで叫ばれていた、2023年夏。
僕らstansは、大きな挑戦をしていました。
こんなお店です
DILLY DALLYは、2023年7月にオープンした福津市宮地浜海水浴場にあるシーサイドダイナー。
ハンバーガーやチキンなどのカジュアルフード、スイーツ、夏はかき氷が食べられて、海辺で楽しめる雑貨が売っていて、海で遊んだあとに使えるシャワーもある、そんな施設です。
パースですが、全体像はこんな感じです。
実際の様子がこちら。
なぜやったのか
オープン後、地元紙にインタビューしていただく機会がありました。
「なぜ、この福津市でこんな施設をオープンしたのですか?その想いを聞かせてください!」これまた、キラキラした目で聞かれたんです。
「たまたまいい土地をご紹介いただいたからで、最初は特に深くは考えていませんでした。」そう答えたのですが、誌面では綺麗さっぱりカットされていました。なんかすみません。
土地との出会い
stansには僕ともう一人の代表の大杉(創業者/共同代表)がいるのですが、ある日突然こんな話をしてきました。
大杉「智原くん、あのさ。福津の宮地浜の土地を紹介されたんやけどさ。どう思う?」
智原「ん?あ、はい。んー、やりましょう。とりあえず借りときましょう。」
事業の構想もなければ、もちろん事業計画も無い。お金はマジで無い。当時はメンバーが5人くらいで、クライアントワークで常に炎上しているような状況でした。
それでも、この土地の存在を知ったときには瞬間的に「今借りないといけない」と思いました。
福津という土地との関わり
僕の地元は福岡県の新宮町というところで、DILLY DALLYのある福津市からすぐ近くです。
小さい頃は親戚に連れられてよく釣りに行ったり、海水浴に行ったり、馴染みのある町ではありました。
地元紙のインタビューでは「福津への想い」を聞かれたのですが、正直に言うとその程度のものでした。おそらく、インタビュアーの方が期待していた答えは以下のようなものだったかと。
半分ホントで半分ウソって感じですね。
すごく正直に言うならば「僕らは株式会社で、その目的は利益をあげることで、そのための商売にベストな場所としてこの土地を選びました!」という言葉になるのかもしれません。なんだか嫌なヤツですね。
もちろん、福津への思い入れが全く無いわけではありません。
ただ「地域貢献」を旗として掲げたかったわけではないということです。僕らは、自分達のやりたいことの実現のために、自分達で責任とリスクを負ってお店を作っています。「地域貢献」を語ることはできませんでした。
DILLY DALLYがいいお店になって、そこに人が集まり、いい時間を過ごし、また来たいと思ってくれたり、だれかを連れてきたいと思ってくれたり。そうして、宮地浜や福津の人の流れが変わり、結果として町や人々に貢献することができたら。それはすごく素敵なことじゃないか!とは思っています。
DILLY DALLYの最初の夏を終えてしばらく経ってから、地元の方に「宮地浜付近の人の流れがすごく変わった」と言われました。
宮地浜には店舗がいくつか立ち並んでいます。その一つとしてDILLY DALLYが存在感を出すことで、宮地浜や周辺店舗にも足を運んでいただける方が少しでも増えたのなら、素直に嬉しいです。
「デザイン会社なのに」やった理由
これは、明確にあります。
stansはデザイン会社として、制作物やコンサルティングサービスをクライアントに提供しています。
僕らのクライアントはパーソナルジムをやっていたり、飲食店をやっていたり、不動産会社をやっていたりと、その業種は様々です。
stansでは、元々はWeb制作の案件が多かったのですが、Webを入り口にロゴやグラフィックの制作をしたり、会社としての内外とのコミュニケーション全般を監修させていただいたり、マーケティングパートナーとして商売全般に伴走したりと、その領域を広げてきました。
「このコミュニケーションのやり方が良いのでは」「この打ち手を採用してみましょう」そんな提案を日々行う中で、ずっと心に引っかかっていたものがありました。それが「実際、自分達はやったことないよな」ということでした。
もちろん、理論を学んだり、技術を身に付けたり、いろんな店舗でサービスを受ける体験を蓄積することで、より良い提案ができるように努力してきたつもりです。
ただ、日々事業の数字やお客様と向き合うクライアントの話を聞く中で「自分達にも実体験が欲しい」と強く思うようになりました。それが一店舗目のaluを始めた理由であり、DILLY DALLYにも挑戦した主な動機です。
あとは「商談のときに見せられるグラフィックの実績をもっと作りたい!」というのもありました。にしてはやりすぎですね。
「シーサイドダイナーを」やった理由
クライアントワークで何かを提案するときには「ロジカルであること」が大前提です。どんな施策もアイデアも、クライアントに説明し、納得してもらえるものでなければ形になることはないからです。
一方、自社事業について考えるときには、意識的に頭のネジを何本か外すようにしています。リスクを負っているのは自分達なので、ある程度の「責任ある無責任」、普段とは違う実験的な取り組み方が許される機会だと思っています。
現地に行き、その空気を吸い、景色を眺めて、「自分だったら、ここで何がしたい?」と問いました。
社内で話をするときにも「自分はこういう風に過ごせたら最高だな」とか「こういう場所欲しいよね!」とか、そんな視点の意見がたくさん出てきました。
「海辺のめちゃくちゃ景色がいい場所で、美味いメシをガツガツ食べれたら最高じゃね?」「なんなら、そのまま海に飛び込めたら良くね?」「夏はかき氷も食べたくね?」「ごちゃごちゃ考えずに、夕日を眺めながらコーヒー飲みたくね?」
そんな感じです。
海辺で美味しいご飯をガツガツ食べられる。
ムズカシイことは考えず、そこに行けば
最高な一日を過ごせる シーサイドダイナー
こうして、やっと「やること」が決まりました。
(みなさんはぜひ「やること」を決めてから土地を借りてください)
で、どうやって作ったの?
前置きが長くなりました。そんなこんなで「海辺にシーサイドダイナーを作るぞ!」ということになったのですが、肝心なのはここからですね。
「あんなのどうやって作ったの?」
最近よく聞かれることランキング第1位です。
カフェを作ったことはあるが、元あった建物をリノベーションしたものでした。更地にゼロから建物を建てるなんて、社内の誰も経験があるわけありません。
1から10まで、全て分からないことだらけでした。
「設計は誰にお願いする?施工は?」
「どうやってメニューを決める?」
「誰が料理を作る?」
「お金はいくらかかる?どうやって調達する?」
「どうやって投資を回収する?」
「この人数でクライアントワークと両立できる?」
「飲食店経験者も少ないけど、スタッフ教育は誰がやる?」
「本当に期待通りの集客ができる?」
「そもそも間に合うのか?!」
渦中にあった僕らはとにかく必死で、正直記憶にない部分もあります。
円安とウクライナ情勢の影響で、建築費が当初の見込みから大幅に上がっている。お金が圧倒的に足りない。でも、建物に妥協はしたくない。「やらない」選択もあるが、どうする?
このロゴが本当にベストなのか?オープン直前に社内で議論に(ほぼ口論)
テナント貸しする予定だった敷地内2店舗を全て自社直営に変更。しかも、オープン2ヶ月前くらいに確定。ダイニングと合わせて一気に直営3店舗を作ることに。
夏の繁忙期には絶対にオープンを間に合わせたい。そのためのプレオープンの予定日が迫ってきたが、全く準備が終わっていない。延期する?その分、見込み売上が大幅に減るけどどうする?
オープン直前の大豪雨で大雨漏りして大絶望
プレオープン当日の朝、飲食スペースになるはずの中庭が空っぽ。何が起きた?
繁忙期バブルでお客様が殺到、近隣の大渋滞、提供時間の大幅な遅れ、料理の品質のブレ、クレーム対応、閉店後の反省会(地獄)
提供時間を少しでも早めるため、代表2人が洗い場の守り神となる
自分たちにとっては、1本の映画にできそうなくらいたくさんのことがありました。思い出すと背筋が凍るような出来事も。
ただ、今振り返って思うのは「めちゃくちゃ楽しかった」ということです。
飲食事業の新しいメンバーと、クリエイティブのチームもほぼ総出で必死に取り組んで、トラブルも数えきれないほどあったけれど、なんとかオープン日を迎えて、1人目のお客様が店内に足を踏み入れた瞬間、全てが報われたような気がしました。ちょっと泣きました。(本当の地獄を見るのはオープン後だということを、その頃の僕はまだ知らない…)
本当はここからヤバい話がたくさんあるのですが、今日はもう力尽きたので、タイトルに「#0 プロローグ」と書き足して、筆を置くことにします。
やっと書けました
DILLY DALLYの立ち上げについて、Xに楽しそう/美味しそうな写真をアップすることはよくやっていましたが、その裏側については初めて書いてみました。
腰が重かったというのは本当なのですが、それ以上に「こんな話、果たしてみんな興味ある?」という不安が正直なところでした。
もし興味を持っていただける方がいたら、たぶん続きがあります。言える範囲で、できるかぎりのことを書いていこうと思います。
X(@hktchr_)もやっているので、よければフォローしてください。「続きはまだですか?」とリプを飛ばしていただけたら、全力で謝りつつ、続きを書いてみます。
(以下、続きのチラ見せ)
一緒にやりませんか?
この記事を読んで「おもしろそう」とか「この会社ヤバそう」とか、色々と思っていただいたかと思います。stansのことを知らなかった方に、少しでも興味を持っていただけるきっかけになれば幸いです。
stansではこれからも、クライアントワーク(クリエイティブ)と自社事業の両輪で活動を行っていきます。その活動をリードする、クリエイティブチームの強化を進めています。
それなりにキツイけど、めちゃくちゃ楽しいですよ。
一緒にやりませんか?
ここまで書いておいてアレですが、僕らが目指すのは「デザイン会社なのにお店もやってる!珍しい!」ということではなくて「クリエイティブがサイコーなデザイン会社が」「サイコーな店をバンバン作ってる」という状態です。
今年は制作をたくさんやりたい所存です。
お仕事もお待ちしています。
募集職種
以下の職種を募集中です。
ご興味のある方は、Webサイトの「careers」ページからご連絡ください。
アートディレクター
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フロントエンドエンジニア
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