フリエサポは何故、三浦知良を叩かないのか
横浜FCサポーターになってもうすぐ3年…。
どうも、ハマのdk.アコースティック&エレクトリックと申します。
(私の来歴についてはこちらにて)
今回のテーマは「フリエサポは何故、三浦知良を叩かないのか」です。
世界で他に類を見ない55歳のプロサッカー選手・三浦知良。
世界で一番諦めの悪いプロサッカー選手である彼の生き様を評価する人は、実はあまり多くはありません。特に近年、彼の周りには常にバッシングの嵐が渦巻いていました。そんな環境の中で、約15年所属していた横浜FCのサポーターだけは、三浦知良を悪く言いませんでした。
こう言うと「横浜FCのサポーターが暖かいだけじゃないの?」と突っ込みが入りそうですが、横浜FCのサポーターは、例え身内であっても、厳しいバッシングを浴びせる傾向があり(近年の下平、安永バッシングなどが代表例)決して身内に優しい土壌の中でぬくぬくとプレーしていたわけではありません。
ではなぜ、三浦知良はバッシングされなかったのか。
この記事を通じて、その答えを導き出すと共に三浦知良という男の本質的な凄さについて考える機会になればと思います。
三浦知良は何故、叩かれるのか
三浦知良少年が『キングカズ』になるまで
三浦知良…通称・キングカズ。
カズは1967年2月26日、静岡県に生を受けた。
日本に名高いサッカー王国である静岡県に生まれたカズは、サッカー指導者である父の下、サッカー少年としてすくすく育っていった。
中学卒業後、サッカーの名門校である静岡学園に入学するも、僅か8か月で退学したカズは単身ブラジルへ渡米し、苦労の末に若くしてプロ契約を結ぶまでに成長した。ブラジルでの活躍の後、Jリーグ発足と同時に現在の東京ヴェルディへ移籍した。
その後の活躍は言わずもがな。
甘いルックスと抜群のスター性、そして確かなテクニックで一躍スター選手への階段を駆け上がり、ついたあだ名は『キングカズ』。
その後もカズは、日本代表やイタリア・セリエAで活躍を見せながらも、W杯落選やクロアチアやヴィッセル神戸での苦闘といった紆余曲折を経て、2005年、当時J2であった横浜FCへやってきた。
三浦知良、38歳の夏の出来事であった。
世の中の"老害"へのヘイトがカズへ向かった
カズが横浜FCに在籍していた期間は2005年から2021年までの足掛け15年あまり。横浜FCにおける2度のJ1昇格と降格を選手として全て経験した、唯一の男である。
ここまで長期間同じクラブに在籍したサッカー選手は、それ自体珍しいものであるが、横浜FCにおけるカズの特殊性はそれだけではない。
まず、皆さんもご存じの通り50代のプロサッカー選手であるということ。
そして、50代を過ぎてからは出場機会に全く恵まれていないながらも、毎年当たり前のように契約を勝ち取っていたことである。
「出場機会に全く恵まれていないながらも、毎年当たり前のように契約を勝ち取っていたこと」
ここが、一般大衆の反感を買いバッシング受ける原因となっていた。
主な論法としては「ONODERAグループのお気に入りだから、スポンサー契約の為に無理やり契約をしている」といったもので
いつしか、カズのベンチ入りを知らせるネット記事が流れる度に「若手の枠を開けろ」「空気を読んで引退しろ」「こんなニュースを流すんじゃねぇ」などといったバッシングが浴びせられるようになった。
本記事のタイトルにもあるように、これらのバッシングを浴びせているのは、大体フリエサポではない人たち…というよりもサッカーに関心すらない人たちだ。別に横浜FCの事なんてどうでもいいはずなのに、横浜FC所属選手であるカズへのバッシングを止めない。
論理的に考えて、これはなかなか不思議な現象である。
「若手の枠を開けろ!」と叫ぶネットユーザーの大半は恐らく、横浜FCの若手の名前を言えない。「安永の枠を開けろ!」「同タイプのFWである草野の枠を開けろ!」ならまだしも、横浜FCの勝ち負けなんぞどうでもいいはずの彼らがそんなにも我が横浜FCの心配をしてくれる現象は、私の眼にはいささか珍妙に映った。あるいは、日本にはもっと多くのフリエサポが隠れているのでは…?と勘繰ってはみたものの、それならば三ツ沢の客入りが毎試合5000人前後な訳が無いので、すぐさまそれは却下した。
そんな彼らの行動の背景と理由を考えた末に私は、一つの結論に至った。
それは「日本の全老害へのヘイトが、カズへ向かってしまった」というものだ。
イエール大学とかいうよく分からないけど凄そうな大学教授の成田悠輔氏ですら、何かの動画でカズを老害の代表として引き合いに出していた(「キングカズみたいにあんまり長々とやりたくない」「現役を早めに退きたい」といった文脈で)
成田氏のような頭の良さそうな人ですらキングカズに対してそのような認識なので、一般大衆が「キングカズ=能力もないのに現役にしがみつく老害」という捉えてしまうのも無理はないだろう。
その結果、身近な上司やバイト先の迷惑客といった老害へのヘイトが、カズへと向かってしまったのだと思われる。
カズ自身は懸命に、誠実にサッカーに向き合ってストイックに現役生活と向き合っていても、バッシングをしている人たちの身近にいる怠惰で傲慢な老害が居る限り、その代表であるカズへのヘイトは増幅し続けるのだろう。
だがそれは、老害へのヘイトが大きすぎるあまりに生じてしまった認知のゆがみであると私は声を大にして言いたい。私が知っている三浦知良という男は、彼らが想像する何倍もストイックで、カッコよくて、尊敬できる大人だ。だからこそフリエサポは、カズを決して悪く言わない。
フリエサポがカズを叩かない理由
”尊敬できる大人”三浦知良
「フリエサポがカズを叩かない理由」などと大々的にテーマを打ったはいいものの、結局は私1人の意見であり感想である。個人の意見に対して主語を大きくするのはあまり好きではないのだが、それでもこのテーマを掲げたのは、カズに対して唯一「若手の枠を開けろ!」「チームの戦力になっていないなら引退しろ!」と叫ぶ権利があるはずのフリエサポから、そんな意見を聞いたことがなかったからだ。
文句を言っているのは、いつも外野だった。
誰に聞いても「誰よりも早くにクラブハウスを訪れて、誰よりも遅くにクラブハウスを去る」と言われるほどストイックなカズ。
限られた出場時間の中で最高のパフォーマンスを発揮すべく、準備を怠らない姿や、瞬発力の衰えをカバーすべく鍛えたフィジカルの強度で、50代ながらもJ1のDF陣を背負う姿を見ると胸が熱くなった。
そして何よりも尊敬できたのは、試合に出る事へのこだわりと執念だった。
「1試合でも多くスタメンで出たい」「スタメンの座を奪い取ってやる」「絶対にベンチに入ってやる」
50代にしてこの執念とギラつきを維持できているという事が何よりも信じられないというか、私やフリエサポのカズに対する尊敬と好意に繋がっていた気がする。
そんなストイックでギラついたカズの姿に好意を抱いていたかは定かではないが、カズが三ッ沢のピッチに降り立つ度、誰もが大きな拍手で後押しした。「カズの頑張りが報われてほしい」「なんとかゴールを決めて欲しい」多くのフリエサポが、固唾を吞んで見守った。
結果が出ない選手やクラブには厳しい態度を表すゴール裏のサポーターですら、カズにはリスペクトを表していた。
そして2021年、リーグ戦での出場時間がわずか1分に終わったカズは「引退するまで契約し続ける」と半ば宣言していた横浜FCを退団し、出場機会を求めて鈴鹿ポイントゲッターズへローン契約で移籍した。
この電撃退団のニュースに私は素直に「カズらしいな」「カッコいいな」と思った。
試合に出るために移籍する…至極単純な行動に見えて、全くそうでは無い。恵まれた環境を捨て過酷な環境へと身を置くその姿を、だれが批判出来よう。
もっとも、多くのフリエサポはストイックなカズの姿を常に見続けてきた。
カズのサッカーに対する姿勢や執念を知っていたからこそ、誰もカズを責めなかった。
三浦知良は、環境の整わない横浜FCに来たあの頃のように
恵まれたJリーグの環境を捨て、裸一貫で荒野へと飛び出した。
未だ衰えを知らないゴールへの渇望。
ゴールでしか満たされないその渇きを潤すため、
55歳のレジェンドは今日も走り続ける。
きっと、明日も走り続けるのだろう。