見出し画像

M&A契約の始まり ~秘密保持~

※当記事は2021.3.29にメルマガ配信されたものです。

株式会社StandbyCの平川卓二です。

福岡では桜の開花が進んでいましたが、先日の強風で散ってしまったところも多いようです。桜が咲いているのを見ると、卒業そして入学という別れと出会いの時期であることをあらためて感じます。

私のプロフィールについてはStandbyCのホームページをご覧いただければと思います。

たまたま譲受側の担当者として約20年間M&Aに携わってきました。
契約の当事者であったからこそ、譲渡側オーナーが契約の最後まで心が揺れ悩まれるのも見てきました。
最近でこそM&Aや事業承継に関する書籍も多く出版されていますが、私がM&Aの担当となった1998年当時はM&Aに関連する情報も少なく、実務を通して多くの事を学んできました。
その貴重な経験の中から少しでもお役に立つ情報を提供できればと考えています。

(1)M&A契約の始まりであり重要な秘密保持

M&Aのスタートは通常譲渡側もしくは譲受側との個別面談からとなります。まず現状把握した上で具体的な提案に移っていきますが、最初の契約は秘密保持契約となります。秘密保持契約は例えば共同研究を始めるにあたって締結される等、企業活動のさまざまな場面で締結されていると思いますが、ここではM&Aの検討を開始する際に締結される秘密保持契約(英語のConfidentiality AgreementまたはNon-Disclosure Agreementを略して「CA」「NDA」と呼ばれることが多い)の話をします。

譲渡側からすれば自社の販売先や仕入先のデータなど第三者に見せたことはまずないため、そのような大事な情報を外部に見せてよいものかとためらわれるのが当然です。そういった不安を解消するためにも損害賠償までしっかりと定めておくことが必要です。
秘密保持義務は譲受側が負うところが多いですが、譲渡側も案件の検討が進んでいる事実や譲受候補の社名等を漏洩しないようにしなければなりません。特に譲受側が上場会社の場合にはインサイダー取引規制から情報管理を徹底していますので、細心の注意を払う必要があります。
秘密保持契約は一般的には3年程度の有効期間を定めることになります。2~3年の間には、案件として進んでクロージングしているか、進まずに途中で終了しているものと思われます。秘密保持契約が終了した場合には、その契約の定めるところにより情報の返還もしくは破棄等が行われますが、契約が終了したからといって、不用意に情報を公開してよいというわけではありません。引き続き適切な情報管理を行う必要はあります。

(2)秘密保持契約で終わってしまった事例

秘密保持契約には差入形式のものもありますが、通常は当事者名と目的が記載されます。
ある社長は、個人経営で続けていくことに不安を感じ、息子が社内で働いてはいましたが、相談することなく第三者への事業承継を検討することにし、秘密保持契約締結まで進んでいました。しかし、その契約書が入った封筒を机の上に置いたままにしておき、不審に思った息子が中を見てしまったことで、この話はここで終わってしまいました。その後親族内承継が行われたどうかまでは知りませんが、秘密保持契約そのものも秘密にしておかなければならないという事例だと思います。

***

後記
先日、久しぶりに航空機による移動をしました。
航空券購入の際にPCR検査割引サービスがあることを知り、良い機会だと思いPCR検査を受けてみました。申込から数日後に検査キットが届きました。検査を受けて安心して航空機を利用してもらうことを目的としているようですが、私は航空機利用後に自宅に戻ってから検査キットを利用しました。
唾液を採取して郵送するもので、送付の翌日には結果がメールで届きました。自覚症状もないので「陰性」を確信しているもののやはり結果を確認する際にはドキドキしました。結果は無事「陰性」でした。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。
次回は「M&Aにおける企業価値評価」についてお伝えする予定です。