生き残った人と普通に生きている人
日々 災害や事件で被害者となってしまう人たちがでてくる。
被害者に関して報道されるときに、現場に居合わせて生き残った人たちが取り上げられることが多いものの、彼らは極めて特異的な傾向を示す。
生き残った自分を責める気持ち
亡くなってしまうことは不幸なことである。
しかし生き残り・生き続けるのは激しい葛藤をもたらす。
生き残った自分たちのことを良かったと言われる一方で、生き残ったことに強い罪悪感を感じ、生きていてよかったのか、代わりに自分が死んだ方が良かったのではないか、と思い悩み続ける。
そしてこの感情は他人にはなかなか言えずに苦しむ。
Survivor’s Guilt(サバイバーズギルト)と言われ、以前より指摘されてたものの注目されることは少ない。
死んだ人と生き残った人との境界はあまりにも厳然としている。同時に、生き残った人々と普通に生きている人々との差もまた厳然としている。生き残った人々は、なぜ生き残ってしまったのかと悔い、そして普通に生きている人々は、生き残った人々に対して、死ななくてよかったじゃないかとしか思えない。
生き残るということ えひめ丸沈没事故とトラウマケア 前田正治
回復するために
はっきり言えば簡単ではない。
回復するために必要な6つのこととして紹介されていたものがある(Fort behavioral health より適時訳)。
1)自分を責めない。本当に悪いのは誰か考えましょう。多くは自分たちの力ではどうしようもないことが原因です。
2)悲しみは乗り越えることができることを忘れないでください。罪悪感を感じるのではなく、失ったものや人を思い出し悲しみましょう。
3)大切に思う家族や人を考えましょう。もしあなたが亡くなっていたら悲しむでしょう。
4)運は偶然です。犠牲になった人の不運はあなたのせいではありません。
5)他の誰かのために何かしましょう。
6)自分を大切にしましょう。よく眠り、よく食べて、運動をし、必要なら他人に助けてもらいましょう。
こういったことを意識しながら、日々生活を送ることで少しずつ回復していく。
周りの人にできること
周りの人思わず「助かって良かったじゃない」「早く忘れなさい」「あなただけじゃないのよ」などの言葉をかけてしまう。
これらの言葉は本人を思いやり、本人の回復を願っての言葉ではあるものの、残念ながら深く深く傷つけてしまう。
まずはこのある種特殊なサバイバーズギルトのことを知ることが支援の第一歩である。
そして「あなたは悪くない」「助かってくれて私たちはうれしい」「亡くなった人を思いだして悲しんだり泣いてもいい」「少しずつ今できることを一緒にしていこう」と伝えていくことで、少しずつ回復に向かっていく。