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結果がすぐに分かるということ

選挙が終わるとすぐに各社は開票速報を公表する。開票速報には全く興味がわかないものの、投票終了直後、時には開票が始まる前から当選確実が出るのが問題である。各社ともにいろいろな取材をもとに、出しているとは思うもののその悪影響は大きい。

早い段階での当選確実は、ほとんどの場合は組織票の力と投票率の低さで決まる。

 

結果がすぐに分かることの弊害

開票とほぼ同時に当選確実が出るのを何度も見ると、私を含めたほとんどの人は投票の興味や意欲がそがれる。自分の一票が何かの役に立つ、自分の意見が投票で反映される、ということは無いということを思い知らされる。

もちろん選挙速報がなくても、選挙結果は直接的には変わらない、しかし選挙速報を毎回のように見ていると、組織票に属していない人は投票意欲がなくなり結果として組織票の持つ力があがる。

もちろん、TV局は多額の人と金を使って選挙速報をすることには意味がある。いち早く当選確実を出すことは国民へ、そして特に当選した政治家に、自分の局の情報力を知らせしめ、万歳のシーンを全国放送し政治家の宣伝にも協力することで、政治家に対しある程度の影響力をもつことができる。

しかし選挙速報が過熱すれば過熱するほど、国民の投票に対する期待が低下し、投票意欲が下がっていくという状況は困ったものである。

 

結果がすぐにわかるということ

結果を早く知りたい、可能な限り早く知りたいと思う気持ちは理解する。しかし、結果がすぐ分かるということはその人を幸せにするとは限らない。

パチンコやパチスロは、リーチがかかり長々と大当たりになるか、ならないかという展開がしばらく続くからこそはまる人が増える。これが玉が入った瞬間に、あたり、はずれとだけ表示されるシステムであれば、これほどまではまる人はいない。もちろんパチンコにはまらない方が幸せという考え方もできる。

 治療の場面でも「良くなるでしょうか?」「今回の薬は効きますか?」「どれくらいの期間待ったらいいですか?」と聞かれることは多く、人によっては「データはありませんか?」「何%の確率で良くなりますか?」などのデータを聞いてくるときもある。

 

結果はすぐに分からない方が良い

医療の世界においては結果がすぐ分かるということは、結果を悪くすることが多い。

例えば抗うつ薬。この薬を飲めば60%の確率でHAM-Dが50%以上改善します。しかし50%改善しても、○あるいは○という症状は軽度残ると考えられます。他の人は4週間待っても20%程度しか改善しません。その場合。別の薬に変えても改善する可能性は50%です。そのまま待っても改善する可能性は20%ですが改善したとしても、寛解に達するのは30%程度です。

ということは、今まで出ているエビデンスからおおよそ分かる(数値は論文によってある程度上下し、残り得る症状は薬によって多少異なる)。

しかしこういった「結果」は本人の「これを飲んで治ろう!」「これを飲んで休んだらきっとよくなるだろう」という、希望、期待を著しく低下させ、結果的に治療効果を損ねてしまう。結果がすぐわかる、はっきりしたデータがあるということは必ずしも本人を幸せにするとは限らない。良い意味で期待させるということは医療にとっては重要な要素である。


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