盗癖のある人には別の世界が見えている
盗癖=盗んでしまうことが止めれない人
診断基準ICD-10では、
F63.2 病的窃盗(窃盗癖)
物を盗むという衝動に抵抗するのに何度も失敗する。個人的な用途や金儲けのために必要とされない。時に捨ててしまったり、人に与えたり、隠しもったりする。
盗む前は緊張感、盗んだ間とその直後は満足感、その後 不安、落胆、罪悪感を感じるも、それでも繰り返してしまう。
と記載されている(一部改変)
広い意味での依存であるものの、他の依存症よりもなかなか治療が難しく、家族とは疎遠となり、社会的信頼もなくし、生活が破綻していってしまうことがよくある。
時々 万引きを繰返す人を取り締まる万引きGメンの活躍をTVで放送していることがあるものの、個人的には見ていられない。
そこで広げられるのは、万引きをする人を狙い捕まえるハンターの視点であり、上から目線で注意するスタッフと警察官、その場では反省しても何度も何度も繰返す反省しない犯人、という視点である。
全員がそうという気はないものの、万引きを繰返す人たちは病的窃盗という疾患にかかってしまった人たちであり、捕まえて、上から目線で注意し、他の人たちのさらし者にすることで治ることはない。
脳の働きが異なる
興味深い話題を見たので紹介する。
病的窃盗の人の脳の働きは、人のいない店内を見たときの視線や脳活動のパターンが他を見ているときと大きく異なる。
商品や人がいる店内では健常者とあまり差はなかった。
詳細は以下を参照。
病的窃盗の人には、人がいない店内は脳を活発にさせる刺激になってしまう。
普段通り人がいる店内で買物をしていた人が、一瞬人の姿がいなくなると、今までは全く別の風景に変わり、脳を刺激してくる。
そして衝動に負けて万引きをしてしまう。
気持ちの問題ではなく、脳そのものが勝手に反応してしまうのだから、なかなかつらい状況である。
そういう状況であることを少しでもいいので知っておいてほしい。
治療方法
はっきり言えば治療は簡単ではない。
認知療法
自分が盗みをしたくなる時はどんな時なのか、どんなことを考えたときか、どんなストレスがあったときか、どんな状況なのか、そういった環境的要因や心理状況を把握し、その時にどうしたらよいかを考え試行錯誤する。
始めは「気が付いたら盗んでいた」としか言えない人が、少しずつ自分を冷静に分析し自分の感情や状況を説明できるようになっていくことで少しずつ回復していく。
薬物治療
不安やイライラが強い人や、抑うつ状態が強い人は、抗不安薬・抗精神病薬・抗うつ薬などで少し安定することがある。
といってもかなり効果は限定的である。
行動療法
認知療法に近い部分があるものの、自分が万引きをしてしまう状況を明確にし、予防方法を見つけることである。
1)徹底的に避ける
店にいかない。
2)誰かについていてもらう
人と一緒に店に行き離れない。
3)盗みたくなったときに和らげる方法を見つける
両手をずっと握っておく。
冷たいものを手首に当てる。
店から出る。
など試行錯誤して見つけるしかない。
ほめる・感謝する
アルコール依存症でもそうであるものの、うまくいったときに褒める・感謝するということは大切である。
ただし「盗まなくてえらい!」というのは、なかなか言いづらく、ほめられたほうも素直に受け入れづらいのである程度の工夫が必要である。
自分が素直に受け入れることができる、ほめ方を見つけるしかない。
「今日も人様に迷惑をかけなくてよかった」「家族を悲しませなくてよかった」などから始めるのがよい。
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