見出し画像

AI技術を使ったレジ無し自動決済システム導入における5つのハードル

小売業における劇的な変化は、大小さまざまなテクノロジー企業のレンズを通して見ることができます。小売業者は顧客体験の向上が急務であり、レジ無し自動決済システムほどエキサイティングな小売テクノロジーはないでしょう。真のレジ無し自動決済システムは、買い物客が店内に入り、商品を手に取り、そのまま帰ることができるようになっているべきです。この分野に参入する企業は、さまざまなアプローチでこの問題を解決しようとしています。これらの企業のうち、どのようなアイデアであっても市場で通用するソリューションにするために必要なレジ無し自動決済システムの5つのハードル((プライバシー(privacy)、拡張性(scalability)、経験(experience)、柔軟性(flexibility)、洞察力(insights)略して「PSEFI」))に取り組んでいる企業がいかに少ないかには驚くばかりです。
 
プライバシー(Privacy)
 
一度規制や条例を度外視するとしましょう。顧客のプライバシーを保護するために最善を尽くすことは企業の責任です。技術が進歩すればするほど、規制する側ではなく、その進歩をもたらす側が、自分たちが奉仕する人々を守る責任を負うことになります。とはいえ、規制や条例はソリューションが満たさなければならない最低限の条件を設定するガイドラインとしては役立ちます。例えば今年4月に提訴されたウォールマートに対する集団訴訟では、レジでの顔認証の使用を廃止する内容が含まれていました。この訴訟の結末がどうであれ、私たちは生体情報、特に顔認証はレジ無し自動決済システムには不要だと考えています。買い物客は、プライバシーを侵害されることなく、自分たちのニーズに応えることができるソリューションを与えられるべきです。
 
拡張性(Scalability)
 
レジ無し自動決済システムを導入する際、テクノロジーを導入するだけのために店舗を閉鎖することはできません。また、棚に設置されたセンサーやカメラを使用することは、チェーン全体に展開するためには現実的ではありません。 なぜならば、小売業者はすべての商品を棚から降ろし、すべての棚を交換し、新しい棚を補充するか、既存の棚をすべてセンサー付きに改修しなければならなくなるからです。これらの選択肢はいずれも、少なくとも数週間は店舗を完全に閉鎖する必要があるため、小売業者にとっては現実的ではありません。さらにこれはチェーン全体の展開を意味し、完了までに何年もかかる可能性があるため、小売チェーンはそれを市場のソリューションとして受け入れません。理想的なソリューションは、数時間という短時間で設置できる軽量のAI搭載カメラです。これらの設置は、顧客や業務に支障をきたすことなく、夜間に行うことができます。設置の必要性が低いため、労力が軽減され、導入が迅速になります。また、ハードウェアと労働力の削減は、コスト削減と売上減少の減少にもつながります。
さらに、オーバーヘッドカメラのみの導入となると、メンテナンスの手間や運用の煩雑さを軽減することにもつながります。
 
 
経験(Experience)
 
世界中の200以上の小売チェーンと話をした結果、1つはっきりしたことは、顧客体験が急速に変化しているということです。 ECの出現により、小売業者はオンラインショッピングの利用者を呼び戻すために、店舗での体験を見直す必要に迫られています。 ECからの圧力が小売を抹消することはないでしょう。しかし、ECによりショッピングの意味が再構築されたことで、小売業者は競争を余儀なくされています。アメリカの小売業が顧客から受ける最大の不満は、(1) レジでの長い待ち時間、と(2) 接客の悪さ、です。レジに並ぶ必要を失くすことで、小売業者はより多くのリソースを店内の顧客体験の向上に充てることができます。レジ無し自動決済システムは、バーコードスキャナー以来の小売業における大きな変化であり、今後もさらに進化していくことでしょう。近い将来、買い物客はスマートフォンなどを取り出すこともなく、店内に入り、買い物をして帰ることができるようになるでしょう。 私が話を聞いた多くの小売業者は、レジ無し自動決済システムを導入した後の店舗をどうするか、すでにユニークな体験を思い描いています。簡単に言えば、レジ無し自動決済システムは、小売業者が顧客により良いサービスを提供する機会を与え、買い物客を喜ばせるために既存のチェックアウトスペースを再創造する柔軟性をもたらします。
 
柔軟性(Flexibility)
 
小売業の環境は複雑で、常に変化しています。セールスは瞬時に行われ、商品は買い物客と共に店内を移動し、インターネットはダウンし、在庫とコンプライアンスの問題はダイナミックで、ディスプレイとプレゼンテーションは小売業者のブランドと一貫性がなければなりません。レジ無し自動決済システムによって、小売業者は顧客とともにブランドを増幅させることができるようになるはずです。レジ無し自動決済システムで使用するハードウェアの種類が少なければ少ないほど、店舗は商品化とブランド体験に柔軟性を持たせることができます。フラッシュセールは、この柔軟性の一例です。1日以内に賞味期限が切れそうな焼き菓子を想像してください。「とりあえずあそこのテーブルに並べて、50%オフのシールを貼っておきましょう!」という戦略を立てたとします。棚センサーを使用する場合、すべての商品をその棚に置く必要があるため、このシナリオは不可能です。このように、店長が顧客のニーズに合わせて臨機応変に対応しなければならないケースは数多くあります。支払い方法の柔軟性も重要です。現金、クレジットカード、その他の一般的な支払い方法に対応できるソリューションが必要です。私はまだ、自分の店では現金の取り扱いをやめるつもりだ、と言っている小売業者に会ったことがありません。
 
洞察力(Insights)
小売業の分析データは貴重ではありますが、プライバシーというレンズを通して見る必要があります。小売業者やブランドは多くの情報を収集することができますが、それらは特定の個人との関連はないはずです。しかし、データを活用することで、小売企業やブランドは顧客へのメッセージを明確にし、欲しいと思うような商品を作ることができます。手に取られるものの、購入にまでは及ばない商品はどのようなものなのか?ブランドキャンペーンや広告に対して、買い物客はどのように反応しているのか?店頭の在庫は今どうなっているのか?これらの疑問は、現在ECを通じてのみ回答されていますが、AIベースのコンピュータ・ビジョンは、実店舗の小売業者にとって競争の場を平準化することができます。レジ無し自動決済システムは、世界最高レベルの小売業者が想像する新しい体験の数々を後押ししてくれることでしょう。しかしながら、テクノロジー企業がそれらをマーケットに持ち込める唯一の方法は、この5つのハードルをクリアすることだけなのです。

*この記事は2018年8月10日マイケル・サスワル 
(CoFounder & Chief Business Officer, Standard AI  https://www.linkedin.com/in/michael-suswal-51b45421/)によって書かれたものです。