禿げすぎていた男
ある所に、はげた爺さんがいました。爺さんは誇大妄想をする癖があって、今日はJ・F・ケネディのつもりでいます。急に、ダラスに行こうと思い立って、ダラスに行ったら、案の定撃たれました。幸い、一命をとりとめましたが、警察に犯人の人相を聞かれた時にニンジンみたいな顔だったと証言したので結局犯人は捕まりませんでした。次の日、傷はいえませんでしたが、もう爺さんの気持ちは青木昆陽でした。早速さつまいも作りを始めました。ところが、この芽が出る前に日が過ぎてしまいました。次の日は、ローマの遠征兵でした。未知の大陸を開拓せねばと言ってそこらを歩いていると、偶然さつまいも畑に当たったので、これを踏み潰して確たる文明の証拠として案じました。次の日はもう彼はジャン・ド・カルージュでした。決闘途中の気分でしたので、通行人をぶった斬ってしまい、牢に入れられました。それが1958年のことです。前途の通り、この爺さんは禿げていたので、翌年死にました。死に際の気持ちはベートーヴェンで、獄中で何やら鼻歌を歌っていました。