酒乱国家に於ける状態

全権を酒とする酒乱国家にあっては、海外酒の登場というのはまさに幕末に於ける黒船の来航と同じほどの衝撃があった。
この国では、大統領シラフでは暮らない。国民も同様国民も同様である。無論、子供も例外ではない。血中アルコール濃度を0.05%に保ち、ほろ酔い状態にすることでとても愉快に暮らしている。治安の良さは尋常ではない。全国民が赤子の時から血管にアルコールを投与されていて、生まれてこの方アルコールをアルコールを断った事がある人は皆無であるから、どんな理由があろうと殺人などという凶行に及びことはない。大抵、そういうことは忘れてしまうのである。流石に平均寿命は短い。62歳である。しかし、死ぬ人も、送る側もどちらもほろ酔い状態なので、明るくすませる。車の運転では、たまに警察に捕まって、酒気を帯びていないと拘束されることがある。
そういう彼らが飲んでいるのは、主に蒸留酒である。もちろん他のものも飲むが、主はそれである。何故かというと、石村干物(いわむらかんぶつ)という男が、
蒸留酒は太らない
という自説を国会にて語ったことに由来する。一応根拠はあるらしい。尚、石村は国会議員であったが、彼らもシラフではない。後、外務大臣、大統領を歴任して、68歳で死んだ。この国では出生率が高く、平均寿命が比較的短いために、生産年齢人口が多く皆が闊達である。
又、余談であるが、この国の大統領を任るものは皆名が変である。前述の石村干物や鹿手袋玉蔵、高橋高橋男、三田黒子造などがその例である。
この項を終わる。

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