この時期の景気対策について

自分数理経済学者なんで、経済政策とか専門外なんすけど。

と言いつつ、一応マクロ経済の講義受け持ってるんで。そうするとこういう話授業でしなきゃあかんかなあ、と思って準備してたら5/8まで授業がなくてめっちゃテンパってるすたりむですよこんにちわ。

そんなわけで話す予定もあんまりなくなって空回りのネタを少々ここで話そうかと。

まず……そうねえ。景気対策一般の話で言うと、僕の所属している学校は基礎マクロでAD-ASモデルまでやれというけっこうアバンギャルドな指示出してるので(僕は他の学校でもやるけど、わりと無茶だと認識してる)、AD-ASの基準で言うと、要するに自然産出量を下回っているときに景気対策やると速やかにAD曲線が修正されて自然産出量水準への回復が早くなっていいですね、という話なわけです。なんでまあ、こういう一時的ショックで景気が大幅減したときはヘリコマネーの出番だぜ、という話になる。ばらまき政策、普段はよくないけどこういうときはいいと思うよ。

というのが一般論なんだが、安倍政権って良くも悪くも財政規律重視型なんで、いままでも日銀にマイナス金利とかいう前代未聞の飛び道具まで打たせて(これは普通の銀行が日銀に預けてる金から預かり金を徴収するという政策)、ゼロ金利なのに金融政策打ちまくりで財政政策はむしろケチり気味というか、消費税まで上げちゃったしというか、でも借金多いからこれが最善手かなあぐぬぬ、という感じだったんだけど。今回もうちょっと景気よくばらまいてもよかったんちゃう? というのが現時点での感想。いや、39兆円の財政出動するというニュースが今日流れてたので、これをうまく使ってくれればまあええわって感じではあるのだが、しかしこれそもそも単年度なのかどうかもわからんのだよな。プレスリリース見た感じ。

財政規律の重視自体は僕はあんまり批判したくなくて、なにしろ自然産出量を超過してでも無茶な財政政策を打って景気浮揚して俺の成果だ! ってやりたがる連中が多いだろうなってのはわかる。IS-LMしか勉強せずにそういうこと言ってる人間も多いよ? 例? 山本太郎とか。

けどIS-LMの前提にあるのは有効需要の原理で、有効需要の原理が強い説得力を持つのは産出力限界を需要が大きく割り込んでるときだけだ。つまりいまみたいなとき以外はあんまりそういうことをするべきじゃない。逆に言うといまでしょ、ドバるなら。ドバれ。

ちなみに、あんまりドバらないと信用不安が広がった結果貸し渋りが起こって貨幣供給が減ってさらに景気後退するっていう悪ルートに乗るよ? というのが通説。ソース? 世界恐慌を調べろ。とはいえ世界恐慌のときのアメリカと比べれば日本には預金保全のシステムが整っているのでかなりリスク低めになってるけど、それで完全に安全だという保証まではない。LMの下方シフトをちょっと警戒した方がいいかもしれない、と思ったけどゼロ金利なんだよなあ日本。異次元緩和とかやってる中で上みたいな議論成立するの? 謎。

というわけでまとめると、やっぱ数理経済学者に政策の話とか無理だわ。という無難なオチでした。あとなんかやっぱ経済学ってデータ足りなくない? あと100年はこんなんで右往左往してる気がするわ。

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