よくわかる均衡理論の歴史(9/終):動学的均衡モデル
これで終わりでーす。まあこの分野あんまり知らないんだけどさ。
とりあえず前回まではこちら。
まず、この均衡理論は静学モデルなんだけど、それに近い動学モデルを最初に作ったのはソローで、ジョーン・ロビンソンっていうケンブリッジの学者がめっちゃかみついて大論争になったけど、結局ロビンソンにほとんど支持が集まらなかったので不戦勝みたいになっていまに至る……ってのはまあ、わりと有名な話。ロビンソンはソローモデルのセットアップで分析できない経済現象がたくさんあることを喧伝してたみたいだけど、その頃の経済学者はもうだいたい、そういうの分析したいときにはべつのモデル作ればいいだけじゃね、と思ってたっぽいので、あまり響かなかったっぽい。
しかしソローモデルは動学マクロモデルだけど均衡モデルではない。で、誰が均衡モデル版の動学マクロモデルやったかという話だが、こっから話があいまいになるんだ。基本的に、均衡モデルの動学版は、たとえばローマーの上級マクロとかだと「ラムゼイ=キャス=クープマンスモデル」と呼ばれている。で、いまRamsey (1928)とCass (1965)とKoopmans (1965)は全部webでただで見れるんで興味ある人は見てみるといい。全部集権型だから。
分権型、つまり均衡モデルとしての動学マクロモデルを誰がやり始めたか、実は僕、未だに知らんのよ。誰なんだあれ。
ついでに、分権型と集権型は厚生経済学の第一基本定理で結びついているので出てくる解は同一、という話をよく聞く。けどさ、あれ証明ちゃんとされてるの? いや離散時間モデルだと比較的簡単にいつもの仮定から出るけどさあ。連続時間モデルでこれ、ちゃんと証明されてるの? どこに証明あるの? ついでに言うと上の3つの論文ぜんぶ連続時間型なんだけど、離散時間でやり始めたの誰よ。
というわけで、実は歴史的なこと、ホントになんもわからんのだこのへん。誰か研究してるのかね? 学説史やってるひとたちさあ、いつまでもスミスとかケインズに執着してないでこのへん整理してくれない?
以下余談。ラムゼイは割引因子で将来を割り引くのを倫理的ではないと言って退けたが、それだと分析しにくすぎるんでキャスとクープマンスは両方とも割引因子入れてるってのは有名な話。だけどざーっと見た感じラムゼイの論文、ホントに割引がないのかどうかはあんまよくわかんなかった。もっとよく読めばわかるのかもしれない。
余談その二。そもそも解の存在定理自体、離散時間だとコンパクトの直積がコンパクトだっていう定理を使って簡単に出せるけど、連続時間だと出せないよねあれ。だってc(t)に上限ねーもん。あれすっきり解決してる論文、あるの? いやまあ「オイラー方程式+横断性条件」が解の十分条件になるのはわりと簡単に示せるから、そういう経路の存在を示すことで解の存在が言えるってロジックはわかるよ。でもそういう説明ほとんど聞かないんだよねえ。このへんほんとみんなわかってんの? で拡張したときにいちいちチェックしてんの?
結局一回伸ばしたが、わっかんねえなーという煮え切らない終わり方になってしまった。まあ、そうね。そう。わっかんねーのよ。研究ってわっかんねーところから始まるんで、まあ、わっかんねー材料がいっぱいあるのは研究の種がいっぱいあるってことで、悪くないんじゃないですかね。とクソみたいな自己弁護と共に終わる。以上。
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