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めのすのレポート

「殿が音痴!?」
2018.12.15
湘南台文化センター市民シアター
風雲かぼちゃの馬車

かぼちゃ作品のリバイバル
やっぱすごい。

今回で作品自体の上演が3回目。
藤沢市の招待が2回目。

私がかぼちゃを観るの、もう数えきれない。

開場前から大行列。
4列以上になって。
どんどん形成されて。
最後尾の看板まで出てくる。
かぼちゃの愛され具合。
半端ねぇ。

以下、ストーリーのネタバレ豊富です。






●ストーリー概略。
(再再演のため知ってる方は飛ばしてOK)
戦乱の世。天下統一を目論む天下人。
それに逆らう軍勢の戦から始まる。
主役の殿(室田)は、その戦で戦果を上げる。
逆に、失態を晒した天下人に仕えていた金剛寺は追放される。
天下人は、自身の地位の確立の為、大きな宴を開くことを決める。
その宴で、殿(室田)に歌を歌えと余興を行うように命じる。

しかし、その殿は、音痴だった。
戦が終わって、家来を労うために歌うのだが、酒の力で耐える始末。
カラスやコウモリまで寄ってくるところは、もはや神の悪戯と、宣教師にも見捨てられる。

そんな殿は、歌が上手いと評判の女金貸しの凛と出会う。
彼女は盲目で杖が欠かせないが、その歌の上手さは圧倒的だった。
殿は凛に歌の稽古をつけてもらうことになる。
最初こそ、互いに相手を信じきれてないが、殿は凛の指導で上達していき、凛は殿の誰とも違う良さを感じ、いつしか師匠と弟子の仲に。

しかし、すべてがうまくはいかない。
歌の稽古に現を抜かす殿を信じきれなくなる家臣たち。ご隠居に助言を求めるも、殿の元を去る家臣は絶えなかった。
何を信じていたのか、何を隠していたかったのか、分からなくなり、殿は絶望していく。
殿を助け、勇気づける、凛と供に居た、お長と半兵衛だった。


天下人は人知れず金剛寺を呼び出し、暗殺を命じる。
元の地位に戻りたくば、吉兵衛(殿)を斬れ。と。
悩み、苦しみ、悶える金剛寺。
戦の折り、金剛寺は家臣に「生き延びてこそ」と遺言を伝えらえ、貧民街で遭遇した殿から、家臣の小刀を託されていた。
金剛寺は、その胸に決心する。

宴当日。
室田家の存亡と命運をかけた歌。
のし掛かる重圧。
逃げ出せない恐怖。
飲み込まれる殿を救ったのは、凛の言葉と鈴だった。
ついに見事な歌を歌いきった殿に、天下人は金剛寺を差し向ける。
金剛寺の手には小刀が。
しかし、その刀は殿ではなく、天下人に向けられた。
天下人の助けを求める声に誰も動けず、天下人は刺し殺される。

その後、金剛寺は捕らえられ武士として最期を迎える。
殿は宴の混乱を沈め、お家取り潰しもなく、再興する。人手不足のため半兵衛を召し抱えたと、凛に報告する。今後も歌は続けることも。
凛は「お前はもう、音痴じゃない」と。
けれど音痴が治りきってなかったのか、また稽古を再開することに。
寄り添う二人は、師匠と弟子を越えた、強い絆で結ばれていた、とさ。

●役について
この「殿が音痴!?」は、主演の須佐さんに当て書かれていると言っても過言ではない。
ボイストレーナーでもあり、男声合唱も行い、元々は声優志望でもあった須佐さん。劇団内でも、その声の良さと音域は際立っていた。
そんな彼が、音痴の役。
なんというギャップだろうか。
初演、再演と、重ねるにつれ、演技や踊りも去ることながら、役とのリンクとハマり具合が見事。
ラストのソロの表現が、初演から通して見ていて、全く違う。
内面も、その外見とスタイルも相まって、この作品での殿は、須佐さんしか表せない、確固たるものであると、この再再演で改めて感じた。

歌の師匠の凛役。
初演再演の青木さんの良さも記憶に残る中、今回は本多さん。
圧倒的歌唱力。
歌の稽古の台詞への説得力の強さは堪らない。
目を閉じていても分かるお顔立ちの良さが、庶民のボロさのある服を着ている違和感は少々あったが、本多さんの演技が帳消ししてくれた。
二都物語のときより演技上手くなってる。

初演再演との配役違いを整理すると。
天下人
以前:客演
今回:西村さん(普段の優しさがすごくにじみ出ていた天下人。スタイルの良さが所作ひとつひとつの強さを感じた。歌声の素晴らしさがまた一段階上がっている。すげえ。)

太兵衛
以前:高橋さん
今回:兵藤さん(高橋さんの太兵衛がしっかり者と表すなら、兵藤さんの太兵衛は殿への愛が溢れてる。家臣団をまとめあげる手腕よりも、太兵衛の人柄そのものに惹かれて家臣たちは話をするように見えた。あとスタイル抜群で客席の何人かがメロメロになってた。)

小一郎
以前:政野屋さん
今回:田中さん(槍使いの腕前がほぼ披露されることはなかったが、随所随所で流れを止めない演技。血気盛んというよりももう少し落ち着いた小一郎に見えた。)

畏丸
以前:西村さん
今回:古川さん(古川さんご本人がおっしゃっていたが、西村さんの飛び抜けた気絶の仕方と表情の強さは真似できない。けれど情けない声を上げながら倒れるところが、客席から笑いが起きていたし、良いリアクションで楽しめました。)

金剛寺
再演時:水野さん
初演・今回:風間さん(金剛寺役、おかえりなさい。そして、歌がホントかっこいいなぁ。堪りません。衣装も胸元がっつり空いてました。堪りません。殺陣の所作も美しかった。やばい。かっこいい。)

宣教師ルシア
以前:長谷川さん
今回:西堀さん(辛辣さ、はんぱねぇ。あと可愛い。)

久太郎
以前:ららるさん
今回:藤丸さん(かぼちゃ初登場のこの方。可愛すぎる。どこから湧いて出てきたんですか、こんな美人。男の子役、あっていたけど、お姫様役も出来るレベル。何者ですか。歌も踊りも上手で、演技もイケてる。何卒、今後もかぼちゃをご贔屓にしてください。お願いします。)

配役の変更はなくとも。
図書助(まじイケメン。)
又兵衛(すぐ殴りかからなくなってた。)
ご隠居(キレッキレな演技。)
山太夫(動きが飛び抜けて変だった。好き。)
お長(貴女が居て良かった。)
半兵衛(相変わらずのおっぱいはなんとかした方がいい。プルプルしてた。)
踊り手(舞台を彩る大事なところでの表現力の高さに脱帽。)
歌い手(美声。)
それぞれレベルアップが止まらない。
ロマンチックが止まらない。

追加配役になった讃美歌のソロを歌う、宮崎さん。
二都物語での歌の上手さに安心してました。
アメージンググレイスを超キレイに歌い上げる。
すげえ。

更に、冒頭の殺陣に出演の政野屋さん。
お忙しい中、出ていただけて、本当にありがたい。
二刀流で殿に挑む姿と立ち居振舞い。
結局、殿に倒されはしたが、よく動き、回り、飛ぶこと。再演時よりも、ぎゅっと濃縮されて、見やすかった。もっと見ていたいと思わせるタイミングで終わってしまったのは、ちょうど良く、飽きずにいられる。

上記のとおり、配役違いを楽しめたのは勿論、再再演ならではの素晴らしさ。
今回利用したホールの空間の広さ。
充実した設備。
当日運営の対応の良さ。

なにからなにまで。
控えめに言って、最高である。
藤沢市、ありがとう。
これからも。
風雲かぼちゃの馬車を。
宜しくお願い申し上げます。


ここからは、言いたいこと。

M4「わたしには見えない」家臣団の曲。
歌詞が聞き取れない。
初演再演でもそうだった。
完全に音響負けしてる。
そもそもの歌詞のボリュームもかなりあることに、CDを買ってから知って驚いたことは明確に覚えている。
かっこいい曲調、家臣たちの不満不信の現れになっていて、削ってしまうにも惜しいところとはいえ、ここはなんとかならないものか。

一部、台詞回しが聞き取れない。


舞台の形状が特徴的とはいえ、舞台奥に寄った立ち位置がもったいない。舞台と客席の上部が空間的に空いているので、もっと前方に出ないと客席からの遠さが際立ってしまうのではと最前列で感じてしまった。


M7「君はだれ?」の歌い手さんの、謎の人物感。個人的には、既に亡くなっている殿のお母様かなとか思っていたりするが、突如として現れ、歌い、物語に絡むことなく去る。

殿の顔の傷。それを隠す仮面。
なぜ?どうしてそうなった?
初演から通して説明がない。
台詞無しでもサイレントで、殿のトラウマシーンとして出すことはできないだろうか?
あと、傷のメイクもうちょっと濃くないと最前列でも見えづらかった。

かぼちゃが好きだ。

歌って踊って人を斬るエンターテインメント集団が好きだ。

今までも。これからも。

2018.12.16
めのす