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#8 スタフェスでエンジニアとして働きながら大学院進学を決めた yui_tang にその理由や思いを聞いてみた【STAFESおくのほそ道】

「STAFESおくのほそ道」と題しまして、「スタフェスで働く人たちってどんな人なの?」をテーマにお届けしていきます!

これはソフトウェアエンジニアの吉藤がホストするPodcast、Radio STAFESのシリーズ「STAFESおくのほそ道」の公開と合わせて、一部内容を記事化しています。

ソフトウェアエンジニア 吉藤

第8回目のお相手は、yui_tangさんです。

ソフトウェアエンジニア 坂本

話し手
坂本 結衣(ソフトウェアエンジニア)

経歴
約3年前にスターフェスティバルにジョイン。
十五夜チームに所属。バックエンドやフロントエンドなど、あまりこだわらずに日々の業務を行う。
実はTwitterのフォロワーが4,800人というライトインフルエンサー。


大学院進学を決めた理由

吉藤:
yui_tangさん、大学院に進学されるということで、その話を伺いたいなと思っております。

坂本:
はい。この4月から大学院へ通い始めています。

吉藤:
なぜ進学を決めたのでしょうか?

坂本:
以前noteにも書いたんですが、簡単に言うと、我々この先まだ何十年とキャリアを続けていかないといけない立場なんですけど、ものすごく不安が強いんですよね。どんどん優秀な人が増えてくる中で働く状況で、今の手持ちの武器でこのまま戦い続けることに不安を感じるんです。それをどこかでがっと解消したいなと思って決めました。大学院進学という選択が必ずしも解消できる手段とは限らないんですけど、これまで専門的でアカデミックに、ソフトウェアエンジニアとしての地盤固めに取り組んできていないので、心のどこかで引っかかっていたんですね。なので、どこかで解消をしたいと思い、踏み出した次第です。

吉藤:
なるほど。どういう時にそれを一番感じたんですか?

坂本:
もちろんアカデミックに学んできていなくても、めちゃくちゃ優秀なソフトウェアエンジニアの方はたくさん見てきているので、そもそも大学院に通うこと自体が銀の弾丸ではないとは理解しているつもりなんですけど、例えば機械学習や AI のような文脈のとき、専門的に学んでいる地盤がないと、なかなかそこに手を出しづらかったり、その理由として過去学んできていないっていうのを言い訳にしている自分もとても嫌だったり、という背景があったんですね。

そこを解消する意味でも、一つ人生通してどこかで取り組まないといけないなという風に思っていました。なぜ手段として大学院を選んだかというと、私の場合はそういう枠に入らないとできないって思ったのが一番大きかったですね。

吉藤:
そういうことを感じられての決心だったんですね。そもそもyui_tangさんってどういう風にエンジニアになったんですか?

坂本:
大学を卒業しているんですけど、当時学んでいたのは社会学でして、その後も全く違う営業職に就いているんですね。そこから数年営業をやっていたんですが、二十代半ばから後半にかけて「手に職をつけたいな」というところから、ソフトウェアエンジニアになろうと思うようになりました。最初は Web デザイナーも考えたんですけど、感覚的なものは性に合わないなと思って、正しくプログラムを書けば楽しい答えが返ってくるという明快さに惹かれて、独学でプログラミングを始めてみた感じですかね。

吉藤:
そうなんですね。だいたいどの辺から大学院進学に繋がる課題を感じたんですか?

坂本:
極端な話、最初からずっとあったんですよね。皆さん大人になるとよくあると思うんですけど、「大学時代にもっと真面目に学んでおけばよかったなぁ」とか、「なんとなくで決めた学部選択のタイミングに今戻れたらなあ」とか。

一番強烈に感じたのは、前の職場に同期入社した新卒社員と仕事で関わったときだったんですけど、もう圧倒的な差なんですよね。その同期達が、アカデミックに学んできた中でも特に上澄みメンバーであるって言う事は理解していたんですけど、それでもものすごい知識・技術を身に着けた状態で社会人1年生として入ってくるという状況を目の当たりにして、真剣に学んで、学生時代から研鑽してる人たちはこれだけ能力が高いんだなと。自分が培ってきたバリューは簡単に抜かれちゃうなっていう実感があったので、追いつかなくとも、ちょっとエンジン載せ替えたいな、という気持ちはそこで強くなりました。コロナ禍でプライベートの時間が増えたのもきっかけの一つとしてはありましたね。

吉藤:
なるほど確かにね、そういう人たちを見ると思いますよね。コロナで考える時間も増えましたしね。

坂本:
もう1点挙げるとすると、直接仕事には関係ないですけど、STEM教育っていわゆる理系の教育プランを指すんですが、それを受けたかったというのがあります。個人的にジェンダーギャップみたいなトピックに興味があって、ソフトウェアエンジニアの業界の中でも男女比のようなジェンダーキャップってたくさんあると思うんですよね。でも仕事をしていく中で、ジェンダーや能力に差がないと感じる業界なので、こういう業界こそどんどん平均化されていってほしいな、誰でも参入できる状態になってほしいなっていう意味で、昔から興味があったんです。

この課題に対して、例えばソーシャルで何かしらの取り組みをされてる方であったりとか、会社的に取り組んでいる企業であったりとかたくさんあると思うんですけど、私もどういう形かでこの問題に貢献できないかなあというふうに考えていたんですが、そもそも私自身が  ”STEM教育を受ける” という経験をしてきてないなと。その状態で声を上げることに対する後ろめたさもありましたし、実際の経験をもとに課題に対してアクションを起こしたいという気持ちが強まったんですよね。なので、大学院進学の選択をしたっていう感じですかね。目指しているところが明確な分、モチベーションの一つにもなっています。

吉藤:
行動としても大きな一歩ですよね。

坂本:
現職を継続しながら、ということで上長のOK をいただいたのですけど、プライベートの時間がめちゃくちゃ削られることになると思うんですよね。外堀を埋めるべく、私は進んでそれを選択したんですけど。ライフステージ次第では、その選択が取れない人が多いことも理解しているからこその、”今” なんですよね。
例えばこの先、病気だとか、病気でなくても身体のこととか、親の介護とか、いろんな変化で進学という選択ができなくなった時に、「あの時やっておけばな」っていうふうに思う可能性も高いじゃないですか。「今挑戦しておかないと絶対、5年後10年後の自分に怒られそうだなあ」と思ったので、そういう考え方で一歩踏み出した感じですね。

何を学んでいるか

吉藤:
具体的にどういったことを学んでいますか?

坂本:
修士学位自体は情報科学というところです。 Information Science なので、ソフトウェアエンジニアリングと同じ流れになるんですけど、簡単に言うと、今話題にもなってますけど AI とかの文脈に入っていくことになっていて、例えば画像解析であったりとか、私の研究計画の中にもあるんですけど、 Multimodal って言って色々な言語情報であったり画像であったりとか、そういうものをインプットして、機械学習やディープラーニングを回して色々なものを解析するようなことをやっていくイメージですね。

吉藤:
研究計画みたいなものを事前に提示して入学するっていう流れなんですかね?

坂本:
そうなんです。私が選んだ大学院は、研究計画自体が入試の課題としてあったのと、あとは事前にその研究室の先生ともコンタクトを取って研究室配属の事前の内諾みたいなものをもらったりもするんですよね。
そこのコミュニケーションの中で、どういう研究計画を立てているかっていう点もいろいろサポートもしてもらったりしていました。

吉藤:
すごい。大変そうだけど楽しそうだなっていう感覚もありますね。

坂本:
そうですね。そのプロセスも新鮮で楽しかったですし、自分の興味の範囲も広がると言うか、わからないことが多すぎたので、いろいろな事をインプットするいい機会になりました。

吉藤:
どれぐらい通うかって決まってるんですか?

坂本:
修士課程なので最短1年なんですけど、一般的には2年です。ただ、社会人コースということもあって、長期履修制度というのもあるんですね。2年分の学費で3年間通えるっていう。その制度を利用する方も多いということなので、一旦2年を狙いながら、あらゆる判断で決めようかなと。例えば研究がなかなか辿り着けないとか、例えば履修したい授業が多かったとかで、結果的に3年ということになる可能性は全然あるなと思いながら、今のところは頑張って2年で卒業したいなぁという気持ちでおります。

入学に至るまでの準備

吉藤:
期待で胸が高鳴りますね。
入試の話を伺いましたけど、具体的にどういう準備をしたか、もうちょっと細かく教えていただけますか?

坂本:
学生時代は社会学を学んだとお話しましたが、高校時代からずっと文系だったんですよね。なのでそもそも数3、数C、なんなら数Bもやってなかったかもしれません。算数が別に不得意ってことはないんですけど、数学を本当に学んでいなかったので、微分積分や三角関数のレベルから学び直す必要があって、独学で学び始めました。

最近は情報源がたくさんあるので、最初は参考書と YouTube でちょっと頑張ってみたんですけど、わからないことが多すぎたのが正直なところでした。偶然、家の近くに小さい予備校があって、そこが社会人入試も受け入れている予備校だったんですね。完全に個別授業の形をとってるんですけど、そこの門をたたいて「数学だけこの1年間みっちり教えてくれないか」と、数学を学ぶためにその予備校に通いました。

それ以外に関しては、例えば英語はなんとか独学でいけるかなという判断をしたので、特別やったって言うとやっぱり数学ですね。1年間ひたすら数学の問題を解いて、なんとか背伸びして一応入試に耐えうるレベルまで学んだというところは、経緯として一つ大きなところとしてはありますね。

吉藤:
なんだか僕も大学受験を思い出しちゃいました。

坂本:
私は高校も大学も推薦で入っていたので、まともに受験したことがなくて。”受験”というものが本当に初めてだったので新鮮でしたね。 

吉藤:
ペーパーテスト以外での試験入試のための材料って言うと、先ほどの研究計画みたいなものですかね?

坂本:
そうですね。入試を2校受けたんですけど、結局入学した大学院はペーパー試験がなくて、研究計画とそれを元にした面接のみだったんですよね。
数学を勉強してきたことも特に問われないんですよ。面接の中で、どういう準備をしてきましたか?っていう質問に対して、数学を勉強しましたって言ったらそこを深く掘られることはあったんですけど、面接一本勝負!という感じでしたね。

吉藤:
研究計画について、僕は「研究計画準備しよう」って思っても何から準備したらいいのか分かんないんですけど、どういう準備をするものなんですか?

坂本:
大学院に行くなら本当に自分が興味を持てるものをテーマにしようってのは大前提としてあったんですよね。ただ自分の興味と、自分のソフトウェアエンジニアとしてのキャリアを伸ばすためのやるべき事って、必ずしも一致しないと言うか、一致する人って大学院行かないでもできるのかなあと思うんですけど、興味のある分野と技術を磨くための勉強とで、ちょっと乖離があったんですよね。

何なら一番最初、大学院に行こうって思った時に、情報工学以外の社会学をさらに突き詰めるって言うところで、全然違う社会学もちょっと検討したんですよ。ただその中で「それ両方できないかなあ」と思ったんですよね。それを研究室の先生に相談したんですけど、その中で、「じゃあ解決したい、研究したいっていう社会学の問題に対して、機械学習 AI でアプローチしたらいいんじゃない?」というようなアドバイスをもらって、それはすごい楽しそうだなぁと思って。

そういうコミュニケーションをもとに作ったのが今の研究計画になるんですけど、そこに至るまでって、みんな多分そんな感じなんだと思うんですよね。研究計画って私も初体験だったので全然勝手もわからなかったし、どういう基準で認められて褒められて、逆にどれが NG なのかとも全然わからなかったんですけど、私が入学したJAISTっていうところでは、研究室の先生がすごいオープンに相談に乗ってくれたんです。相談したら私の興味や経験を元に一緒に壁打ちをしてくれたので、そこまで事前に準備しなくても良かったのかなという感じがします。だから学びたいけど何すればいいのか分からないっていう状態でも、道はあると思っているので気軽にやっていけば大丈夫だと思います。

吉藤:
そこの相談から乗ってもらえるんですね。

坂本:
そうなんです。全く別の大学で体育の先生をやってる友人がいるんですけど、受験前に、その人にも壁打ちと言うか、色々相談に乗ってもらったんです。
先生にしろ友人にしろ、もちろん「自分で考えてください」っていうタイミングはあるんですけど、どんな研究をしたいか見当もつかないっていう方々をたくさん受け入れてる経験をお持ちなので、心強かったですね。

吉藤:
そうなんですね。社会学と AI って言うね、興味のある分野の掛け合わせで学ぶのが面白そうですよね。

坂本:
アルゴリズムとか、計算量とか、コンピューターサイエンスを突き詰めた研究計画を出してる人ももちろんいるんですよ。多分一番正統派なのかなという気がするんですけど、まぁ私が通っている大学院では社会学都の掛け合わせのようなものも受け入れてくれるというところで、それで決めたっていうのもあるんですけどね。

吉藤:
なるほど。社会学ってちなみにどういう学問なんですか?どういう動機でそれを学ぼうと思ったんでしょう?

坂本:
それこそ先ほど STEM 教育云々とか、ジェンダーギャップ云々とかっていう話をしたと思うんですけど、方向性としてはそういうものですね。元々フェミニズムとかの延長線上でもっと色々学んでいきたいなぁという気持ちがあったんですけど、そういう興味の一部と自分が身につけたい技術とが掛け合ったって感じです。

吉藤:
わくわくしますね。

坂本:
先輩から授業が始まったら絶望が訪れるよという事をお伺いしてるので、今はドキドキもしています。シラバスを読んでいても、単位認定要件が多かったり、その授業を履修するターゲットはこういう知識を身に付けてる人ですっていう前提のハードルが高かったり、頑張らないとな・・と思っています。

吉藤:
予備知識も相当求められるということですよね。確かにそれは大変そうだな。

坂本:
そういう環境に身を置きたいと思ったのは自分なので頑張りたいと思うんですけど、このモチベーションがどこまで続くか、自分のことながら見ものです。

吉藤:
応援しています。

坂本:
ありがとうございます。

学んだ先でやりたいこと

吉藤:
これまで、大学院進学の動機や思いを教えていただいたんですけど、だいぶ先の話にはなりますが、卒業するとき、学んだ結果として、どういう風にキャリアに活かしていきたい、こうなっていきたいという思いはありますか?

坂本:
上長含め選択を後押ししてくれたみなさんにどういう形で返せるかってところなんですけど、今後学んでいくのは先ほどもお話した通り、AI とか AI 機械学習を使って研究を進めていく分野になるんですね。

スタフェスで言うとデータエンジニアリングとか、ytakeさんっていう優秀なエンジニアを始め、数少ない方々を起点に社を挙げて取り組んでいこうとしている中で、そこに関わっていきたいなという気持ちです。データとか、データを活用した AI によるサービスの向上や、お客様の利便性向上に関して、学び終えたらその知見を還元していけるという確信もあります。

長い道のりになると思っているので、半年後にどうこうっていうことではないですし、短期的なベネフィットを求めて進学したわけでもないので、今の仕事を継続しながら、いずれはもっとデータ活用にも携わる形で、大きな意味でのソフトウェアエンジニアリングっていう文脈の中で、今までとは違う武器も振るえるようになって社会に還元できていけたらいいなぁと思っています。

吉藤:
ありがとうございます。すでに大活躍されてると思うんですけど、更に武器を増やして、どんどん強くなっていくということですね。また研究が進んだら詳しくお話聞かせてください。
今回はyui_tangさんの大学院進学のお話を伺いました、ありがとうございました。

坂本:
ありがとうございました。


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編集者から

最後までお読みいただきありがとうございました!

yui_tang さんが大学院進学をされた背景を語ってくださった回でしたが、働きながらのその選択は正直想像したこともなく、チャレンジングな決断だなとただただ感動しました。

興味のある社会学的課題に AI からアプローチしていく研究をされるということでしたが、実は筆者も学生時代に社会学を専攻しておりまして、社会学って本当に幅広いというか、汎用性が高いというか、柔軟な学問だったなあと思います。統計×社会学、環境×社会学、宗教×社会学、などなど。
ちなみに筆者は社会心理学というものに興味津々で、「なぜ日本人は群れるのか」というテーマで卒論を書きました。尖ってたなあ・・・。

話が脱線しました。

驚いたのは yui_tang さんの院進学、ひいては学びにおける熱量です。
予備校に1年間通っていたなんて初耳でした。通常業務をこなしながら受験勉強を行うなんて、中途半端な気持ちではできないはず。同じチームで働いていないとは言え、そんな素振りを全く見せなかった yui_tang さんの本気がすごいなと。

多くの人は後悔がコンプレックスになっていると、筆者は思うんです。
「●●をやってこなかった未経験な自分」とか、「ルートAの選択をしなかったルートBの自分」とか。
想像できうる中では、学問や仕事においては取り返しのつくものがほとんどだと思うのですが、取り返しに行くのにどこまで費やせるかという話。自分の時間やお金をどう工面するか、どこまで ”後悔の払拭” の優先順位を上げるかということ。

エンジニアとして、クルー(スタフェス社員)として、社会人として、様々な可能性を想像させていただいたお話でした。
パワーアップした yui_tang さんが数年後に語ってくれる、新たなステージでの活躍が今から楽しみです。

スタフェスおくのほそ道、今回は yui_tang さんの大学院進学についての回でした。
次回もお楽しみに!!


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