見出し画像

アイドル彼女は素っ気なくて甘くて 第23話

火曜日、朝。


昨日の夜、お互いに手を繋いで

帰ってきた俺たちは、


何とな〜くソワソワしていた。


帰ってきてから

特に会話はない。


蓮加:ごちそうさまでした。私…も、もう行くね!


◯◯:あ、うん、行ってらっしゃい…


蓮加:行って…きます。


"蓮加"は逃げるように、

家を出ていった。


家に1人になった俺は

食器を片付けてから、


ダラダラと登校の

準備をし始めた。




…ちょっと気まずいのは分かる。


昨日から手の"感触"が

鮮明に残っている。


それと、

何とも言えない"感情"もセットで。


しかも、昨日の蓮加の発言。


「私の"彼氏"」


この言葉の真意は?


……分からない。


まさか、蓮加も俺と同じ

"気持ち"を持ってたりするのかな。


いやいや、

そんなことないだろ、うん。


俺ごときが、

思い上がるなよ?


と、言い聞かせたものの…


授業には集中できず

終始ボーッとしっぱなしだった。


"眠い"とか言い訳しといて、

遥香にはバレずに済んだけど。




ーーーーーー




その夜、


気になりすぎた俺は、

ソファでくつろぐ蓮加に…


◯◯:ねぇ、蓮加。


蓮加:なぁに?


◯◯:昨日のことなんだけど…


蓮加:うん。


蓮加は上体をこちらに向け、


決まり悪そうに

髪を手櫛でとかしている。


◯◯:「私の"彼氏"」って…どういう意味?


朝、散々思い上がるなと

自分に言い聞かせた結果がこれ。


蓮加:別に…何の意味もないけど…


◯◯:いや、何の意味もない言葉発さないでしょ。


これが、"理系"の悪いところ。

…すぐ「解」を求めたがる。




蓮加:◯◯くんって、お調子者なの?


かなり機嫌が悪そうに、

顔をしかめる蓮加。


◯◯:そんなことはないけども。


蓮加:別に意味なんてないし、ヤキモチも妬いてなんかないっっ!!


◯◯:ヤキモチ?いや、ごめん、そういうつもりじゃ…


蓮加:もう、◯◯なんか大っっ嫌い!!


◯◯:え…


蓮加:寝る!!


蓮加は、

早足で寝室に向かっていった。


◯◯:蓮加、待っ…


そう言いかけた時

蓮加が寝室の中から、


俺の枕と掛け布団を

投げつけてきた。


そして鋭い目で

こちらを睨んだ後、


ドアを力強く閉め切った。




……やってしまった。


無駄口を叩き、


挙句、無駄に触れなくていい

逆鱗に触れてしまう。


ますます気まずくなっちゃうなぁ、

これは。


どうすりゃいいんだよ…


明日からの生活が

急に怠く感じた俺だった。




ーーーーーー




私はベッドに、

逃げてきてしまった。


また、

"素直"になれなかった。


いつも私はこうだ、

気持ちを伝えることができない。


何故だろうか。


まだ"本心"を知られるのに

恐怖を感じてるからなのか、


また別の理由があるのか。


◯◯くんには、

心を開けてきたはずなのに。


こんな利己的な、

自分が嫌いだ。




手に昨日の"感触"が残ってる。


…暖かかった。


父もいなくなり

祖父も他界した私にとって、


男の人と手を繋ぐのは

久しぶりだった。


私の"思い"は

すぐそこにあるはずなのに、


その「すぐ」が果てしなく遠い。


蓮加:もう…バカ…


潤んだ瞳から

涙が溢れないように、


私は無理矢理、目を閉じて

眠りについた。




ーーーーーー




続く。

いいなと思ったら応援しよう!