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坂道狂詩曲 第27楽章

より一層燃え上がる商店街の景観。

聖来:アカンなぁ、だいぶキツい…

聖来はところどころ火傷を負い、
衣服が皮膚に焼き付いている。

ベレト:どうすれば、アイツを止められるんだ!

2人の目の前には、
燃え盛る炎を纏うベヒーモスがいる。

体力を消耗させているものの、
今ひとつ決定打が得られない。

聖来:ひたすら耐える!絶対メンバーが助けに来てくれるからっ!

ベレト:だと良いんだがな。

ベヒーモスは再び
ブレスをチャージする。

聖来:でも、もうアカンかもな…

その時、遠くから一筋の光が伸び、
一瞬でベヒーモスが吹き飛ぶ。

聖来:なっ!?

ベレト:来たか。

そして耀の戦車が、
2人の前に着陸する。

史帆:おつおつ〜。

菜緒:聖来ちゃん、お待たせ。

聖来:みんなぁっ!!

史帆たち3人は戦車から降りる。

蓮加:凄いよ、よく耐えたね。

聖来:ま、まぁ余裕ですわぁ!でも、何でここが分かったんですかぁ?

菜緒:聖来ちゃんの意識を覗いて、商店街にいるって把握できたんだ。ゴメンね?

聖来:何だぁ、さすがやなぁ菜緒ちゃんはぁ。

蓮加:それで、あれが"業魔獣ベヒーモス"…

史帆:おっきいね〜。

ベレト:神と言われるだけある、俺たちと比べて何もかもが規格外だ。

咆哮を上げながら
体制を立て直すベヒーモス。

蓮加:丹生ちゃんは?

聖来:脚を負傷して、あっちの方でじっとしてもらってますぅ。

蓮加:分かった。なら史帆は丹生ちゃんを保護、残りはあの妖霊を全力で潰す!「流星〈Meteor〉」

史帆:おっけ〜

聖来:ベレちゃん腕痛いんやろ?もう大丈夫やから、休んでてもええで?

ベレト:バレてたか…すまん。ではそうさせてもらう。

ベレトはぬいぐるみに変身し、
聖来のバッグに潜っていった。

聖来:よっしゃ、行くでぇっっ!!

第27楽章 聖来

菜緒:うん!




ーーーーーー




菜緒:"水流魔法〈乱流〉"

菜緒は荒れ狂う大量の水を召喚し、
高圧で打ち出す。

ベヒーモスは押し出され、
再度体制を崩す。

聖来:これはイケるっ

聖来は双剣を逆手に持ち替えると、

ベヒーモスの表皮に突き刺しながら
頭部へと駆け登っていく。

蓮加:今度は、外さない…

銃口から発射された弾は、
ベヒーモスの肩を撃ち抜く。

痛みに耐えきれず、
怯み後退するベヒーモス。

蓮加:これで終わりだと思った?

蓮加は更にもう1発放ち、
首を簡単に捉える。

そしてその隙を狙い、聖来は
ベヒーモスの肩に刺さる剣を抜き取る。

聖来:菜緒ちゃん、こっちは回収したで!

菜緒:分かった…"雷撃魔法〈剛拳〉"

菜緒は聖来の合図を聞くと
ベヒーモスとの距離を詰め跳び上がり、

腹部に目にも止まらぬ速さの
ストレートを繰り出す。

するとベヒーモスは
仰向けに転倒する。

蓮加:菜緒ちゃん、ベヒーモスは殺してはいけない。

菜緒:では、どうすれば…

蓮加:あなたの魔法で解放してあげて。元はと言えば祀られる存在、誰のものでもない。

聖来:そうやな。殺したいのは山々やけど、また眠らせてあげるのが1番かもなぁ。

蓮加:それに、今殺せば妖霊は知恵に使役されている状態で死ぬ。仮に知恵がまた蘇ったら、ベヒーモスは暴れ出そうとするかもしれない。

菜緒:分かりました、やってみます。

聖来:菜緒ちゃん、これ使って!

聖来はベレトの剣を投げ、
菜緒に渡す。

菜緒:「乖離魔法〈超脱〉」

菜緒が魔法を使用すると、
剣は白色に輝く。

菜緒:行きますっ!

聖来:"深緑魔法〈封〉"

蓮加:"砂塵魔法〈縛〉"

聖来と蓮加が魔法で
ベヒーモスの四肢を拘束すると、

菜緒はベヒーモスの腹部の上に乗る。

菜緒:ゴメンね、こうするしかないの。

第27楽章 菜緒

そして菜緒は、
剣を思い切り突き刺す。

それと同時に、波動が辺りに拡散する。

ベヒーモスは呻き声をあげ暴れたが
身体を包む炎は治まり、

最後にはどこか安心したように
動かなくなった。




ーーーーーー




史帆は明里に肩を貸し、
蓮加たちに近づく。

史帆:どう〜?

蓮加:こっちは片付いたよ。丹生ちゃんは大丈夫?

明里:はいっ…全然大丈夫ですっ!

菜緒:でも、すごい顔色悪いよ?

明里:そ、そうかな…でも、皆さん…ありがとうございました。

聖来:ウチからも、ありがとうございました。多分みんなが来てくれへんかったら、せーらたち死んでました。

蓮加:お礼なんて要らないって。みんなが無事で、本当に良かった。

史帆:でも、まだまだ終わってないよ〜。私は丹生ちゃんを病院に連れてく。みんなは、◯◯くんのところに行ったげて〜。

蓮加:了解。

史帆は蓮加の方位磁石を使って、
ゲートを開いた。

そして、戦車に搭乗する。

明里:聖来ちゃん…

聖来:ん?何?

明里:ありがとねっ

聖来:うん、お大事にな。

そして戦車は発進した。

蓮加:よし、じゃあ行こう。

聖来菜緒:はいっ!

3人は一息ついて、
ゲートを通過した。




ーーーーーー




肉体が消滅し老いた知恵の力は
相当失われてしまったようで、

◯◯と遥香の猛攻を
短剣で耐え凌ぐことしか出来なかった。

◯◯が素早く重い連撃を繰り出し、
隙を狙って遥香が的確に打撃する。

遥香:◯◯くん…まだいける?

◯◯:はぁ…はぁ…全然、いけるけど?

遥香は知恵の足元を凍り付かせる。

すると◯◯は狙い澄ましたように、
鎌を縦に振り下ろす。

そして刃先は知恵の腕を捉え、
左腕を切り落とした。

◯◯:まだ終わったと思うなよ!?

更に◯◯は知恵の腹を力を込めて蹴り、
知恵の霊体となった身体を吹っ飛ばす。

知恵:う…ぐ…

◯◯:ほら、立てよ。

知恵:それで"報復"を乗り越えたとでも…思っているのか?自分をただ蝕んでいるだけだというのに…

◯◯:何?…ううっっ!?…

その時、◯◯は再度
強烈な闘争本能を感じる。

さくら:くっ…うぐっ、

レオン:◯◯、そろそろ俺とあいつの抑えられる限界に近い!

知恵:"雷撃魔法"っ…くあぁ…

隙を逃さず、
知恵は◯◯に魔法を繰り出す。

遥香:させない!

遥香は◯◯の前方に飛び出し、
盾で攻撃を受ける。

遥香:◯◯くん、本当に大丈夫!?

◯◯:大丈夫だから…

レオン:クッソ…もうもたねぇ、早く勝負を決めろっ!!

◯◯:あと少し、あと少しだからっ…

◯◯は遥香の背後から飛び出し、

瓦礫や灰が飛び散り
地面が抉られるような、

鎌を自由自在に振り回す
獣のような猛攻を繰り出す。

知恵:がぁっ…ぐはぁっっ!?

◯◯の攻撃を受けるたびに
知恵の霊体の末端は飛散し、

元の形が分からないくらい
ぐちゃぐちゃになっている。

レオン:もうダメだっ…干渉を止めるぞっ!!

◯◯:があぁぁぁっっ!!

◯◯の横薙ぎは
知恵の脚を切断し、

知恵は力無くその場に倒れる。

そして鎌は消え去り、
◯◯の左腕の鎖も消滅した。




ーーーーーー




◯◯:はぁっ…はぁっ…

遥香:◯◯くん…

大きく肩で息をする◯◯に近寄り、
◯◯に呼びかける。

◯◯:遥香さん、俺は大丈夫…さくのそばにいてあげて…

遥香:う、うん…分かった。

言われた通りに、
遥香はへたり込むさくらに駆け寄る。

さくら:終わったの…?

遥香:うん、やっと終わったよ。頑張ったね。

第27楽章 遥香

さくら:や、やったぁ…っ

そのまま、遥香はさくらを抱き締める。

◯◯:原始の魔術師…お前の負けだ。

知恵:その、ようだな…

◯◯はレイピアを召喚し、
知恵の喉元に剣先を突き付ける。

知恵:殺せ…お前がとどめを指すのだ…

◯◯:何度も言うが、殺しはしない。

知恵:馬鹿者が…お前が殺さなくても、誰かが殺すであろうに…

その時◯◯の方位磁石が起動し、
ゲートが開く。

中から蓮加と聖来、菜緒が現れる。

蓮加:◯◯くん…!

◯◯:みんな、終わったよ…何もかも。

聖来:やったぁぁぁぁ〜〜

菜緒:遂に…終わりましたね…

知恵:お祭り騒ぎか…くだらぬ…

◯◯:お前には、やるべきことが沢山ある。犠牲者の死を、お前の死で償うんじゃなくて…

知恵:良いことを教えてやろう…「正義」とは…誰かにとっては善であり…誰かにとっては"悪"そのもの…

聖来:屁理屈がクドいなぁホンマ。

知恵:二面性があるものなのだ…そしてお前はその正義の根源を理解していない…

◯◯:そんなもの興味ない。ここでお前を殺すことこそ、お前の思う壺だろ。

知恵:後悔するぞ…

◯◯:お前を刑務所に突き出して、償うべき形で償わせること…それが、今の俺の「正義」だ。

知恵:お前も所詮は…悪人だ…我にトドメを刺さなかったことを、一生後悔す…

知恵が何か言い終わる前に、

知恵の体は瞬時に真っ二つになり、
霊体は跡形もなく消え去った。

◯◯:…は?

菜緒:!?…◯◯くん離れてっ!

咄嗟に蓮加は銃を構え、
聖来は双剣を召喚する。

蓮加:お前は誰だ!?

蓮加の銃口の先には、

真紅のローブを身に付け
片手剣と盾を持った、

長身の男が立っていた。




ーーーーーー


続く。

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