坂道狂詩曲 第10楽章
俺は、さくにド突かれた脇腹を摩りながら、
自己紹介を始めた。
◯◯:神代◯◯です。ラプソディは「〈四元徳〉正義(Justice)」で、俺自身もあんまりよく分かっていません。で、"妖霊"が…
……
◯◯:あ、出てこないみたいです、以上です。
蓮加:何で出てこないって分かるの?
◯◯:アイツ、俺の思考を一方的に読めるらしくて…呼んでも返事がなかったので。
美月:そんなことできるんだ、面白いね。
史帆:じゃあ、次の子!
さくら:えっと…遠藤さくらです、ラプソディは「教皇(Hierophant)」です。よろしくお願いします。
遥香:私は、賀喜遥香です。「女帝(Empress)」がラプソディです。よろしくお願いします。
聖来:早川聖来です〜、「悪魔(Devil)」持ってます、"ベレちゃん"おいで〜。
すると早川さんが
抱いていたぬいぐるみが、
赤い甲冑を着た青年に変身する。
◯◯:アレ妖霊だったんだ…
レオン:うぉっ!"ベレト"じゃねぇか!
急に俺の後ろに、
レオンが姿を表す。
美月:あ、出てきた。
史帆:しかも、何でさくらちゃんの姿してんの?
レオン:これか?コイツの"趣味"だよ。
レオンは俺を指差しながらそう言った。
◯◯:なっ!!…//
さくらは顔を真っ赤にして俯き出した。
◯◯:違いますよ!?…皆さん誤解しないで!
聖来:怪しいなぁ…
◯◯:で、何でお前は出てきたんだよ!!
レオン:"ベレト"と俺は同期なんだよ、久しぶりに顔見たから出てきたわけ。
ベレト:"ベレト"呼びは懐かしい限りだ。
レオン:いいから、久しぶりに話さねぇか?
ベレト:良いだろう。
◯◯:頼むから、あっちに行ってくれ。
レオンとベレトは、
丘を降りてどこかへ行ってしまった。
◯◯:はぁ…やっとどっか行った…
脱力すると、
隣でさくはまだ俯いている。
◯◯:あの、違うよ?さく、違うよ?
美月:怪しい…
史帆:それ。
明里:何が怪しいんですか?
1人バカがいて助かった。
ーーーーーー
明里:丹生明里ですっ!ラプソディは「力(Force)」です!頑張りますっ!!
菜緒:小坂菜緒です…あの…ラプソディは…
確か前に聞いた時、
教えづらそうにしてたっけ…
◯◯:小坂さん、無理して言わなくても。
菜緒:…でも、神代くんにも皆さんにも黙ってるのは申し訳なくて。「隠者(Hermit)」です…
美月:うん、言ってくれてありがと。じゃあ、まだ名前も決まってないこのチームだけど、とりあえず訓練しますか!
史帆:お〜。
聖来:訓練言うても、何するんですか?
美月:遥香ちゃん聖来ちゃん丹生ちゃんは十分だとしても、他の3人はまだ戦闘に関しての経験値が足りない。
蓮加:だから今からここで練習するってことね。
美月:正解、3年生が1人ずつ相手してあげて。
史帆:あ、でもここバーチャル空間じゃないし、普通に攻撃食らっちゃうけど?
美月:怪我させない程度によろしく。
さくら:怖い…
菜緒:…
ーーーーーー
何だかんだで6人は丘から降りた場所に散らばり、
戦闘の準備が完了した。
残る2年の3人は、
丘の上でそれを眺めていた。
聖来:何か楽しみやなぁ、みんなどんな動きするやろ。
遥香:さくの能力もちゃんと見たことないしね。
明里:みんな頑張れ〜っ!!
明里はおにぎりを食べながら応援する。
遥香:ちょっと、ご飯粒飛んでるよ!
聖来:可愛い子のご飯粒、最高やな。元の4倍くらい美味しそう。
◯◯vs蓮加
蓮加:実弾は使わないから安心して。当たったらすぐ分かるように、水にしとくね。
◯◯:お願いします、「正義〈匡正〉」。
蓮加:「流星〈Meteor〉」。
◯◯がレイピアを召喚すると、
蓮加は狙撃銃を召喚した。
◯◯:行きます!
一気に距離を詰めレイピアを突き出す◯◯。
しかしその剣先を、蓮加は体を翻しながら華麗に避ける。
◯◯:速い…
滑るように着地した蓮加は、間髪入れずに銃を構える。
◯◯:クソッ、
Uターンしてまた距離を詰める◯◯は、
レイピアを薙ぎ払う。
蓮加は慌てることなく、
更に後方に素早く飛び退く。
蓮加の足は地面から離れているものの、
銃口は◯◯を捉えたままブレない。
その瞬間、
◯◯の胸の中央から水が飛び散る。
◯◯:…マジか。
蓮加:私は遠距離であなたは近距離。インファイトを狙うのは定石だけど、こっちだってそんなこと分かってるよ。
◯◯:たしかに、そのようですね。
蓮加:あなたなりの攻略法を考えながら対応する方が良いかもね。じゃ、どんどん練習行くよ。
ーーーーーー
さくらvs美月
美月:史緒里、相手してあげて。
史緒里:かしこまりました。
美月:遠慮は要らないから、全力で史緒里を倒しにきて。
さくら:…「桜花」っ
さくらは薙刀を召喚し、構える。
史緒里:刀身が桜色ですね、可愛らしい…
さくら:やぁっ…!!
さくらは史緒里に斬りかかるが、
史緒里は避けることなく、
剣先を素手で受け止める。
さくら:え、斬れもしない…
史緒里:まだまだですね、私を斬るにはもっと訓練が必要ですよ。
そう言うと史緒里は剣先を押し、
さくらを後方に吹き飛ばす。
さくら:うぅ…っ!?
地面に叩きつけられたさくらの目には、
涙が溜まっていく。
美月:ちょっと、史緒里やりすぎじゃない?
史緒里:大丈夫ですよ、さくらさんはあの程度ですぐ折れてしまう人ではないと思いますから。
美月:そうだけど…
さくら:…もう一度…お願いします。
よろめきながら、さくらは立ち上がる。
史緒里:私で良ければ、何度でもお相手しますよ。
美月:2人とも、変なところアツいんだから。
ーーーーーー
丘の上、
聖来:神代くんもさくも、スイッチ入ったみたいでええやんか。
明里:ね!どっちもメキメキ強くなってるよ!
遥香:あの2人も凄いけど、菜緒ちゃんは初めてにしては異常だと思う。
聖来:たしかに。さっきから、史帆さんの攻撃を完璧に防いでるもんなぁ。
菜緒vs史帆
史帆は能力こそ使っていないものの、
菜緒にダメージを与えられないままである。
史帆:"水流魔法"、えいっ!
菜緒:うわっ…
のけぞりながらも、風魔法を上手く用いて
次々と水流魔法を打ち消す。
史帆:菜緒ちゃん、すごいじゃん!色んな魔法使いこなしてるし、私の動き読んでるみたい。
菜緒:いや、そんなことは…
史帆:"能力"は使わないの?私も使ってないけどさ。
菜緒:私、まだ上手く使えてるか分からなくて…
史帆:ふぅ~ん。
芽実:2人とも~、今日は終わりだって美月ちゃんが言ってたよ~。
芽実が丘の方から、手を振りながら歩いてくる。
史帆:ほいほい~。
菜緒:ありがとうございました。
史帆:菜緒ちゃんはもっと強くなると思うし、がんばろねー。
ーーーーーー
レジャーシートに集合した俺たち。
美月:今日はみんなお疲れ様。明日からもここで練習とかしていくから、放課後に他の予定入れないでね。
聖来:あのぉ、私たちも明日から練習参加していいですか?
美月:もちろん、今日は3人には暇にしてもらっちゃってゴメンね。
明里:よおし、頑張るぞ!!
遥香:その、調査のほうはいつから開始するつもりですか?
美月:現状「四元徳」がいるかもしれない、という情報しかなくて。的確な情報が入ってこないと、正直こっちからは動けないと思う。
蓮加:確かに、それが得策だね。
史帆:作戦立ててから行動するとか、カッコイイじゃんね。
レオン:良かったな、◯◯、女友達が大勢できて。
◯◯:うるさいな…
さくら:…
これから、この名前もまだ無い"チーム"で
未知の敵に挑戦することになる…
ーーーーーー
続く。