新米起業家の資金調達黙示禄
金調達はあくまでも事業戦略・組織戦略の延長線上で語られる要素の1つでしかありません。そのため、起業家が資金調達するタイミングは「戦略的に必要な状況」となります。
事業は基本的に「価値仮説」「成長仮説」の2つで成り立ちます。
価値仮説は、作ろうとしているプロダクト/サービスが顧客に価値提供ができるかを検証するもの。
成長仮説は、価値検証できたプロダクト/サービスを顧客に広く知ってもらい急成長できるかを検証するものです。
起業家は自社の状況がどのフェーズにいるかを理解した上で、適切なタイミングで資金調達を行います。では、戦略的に必要な状況とはどういったタイミングか。例えば以下のような事例が該当します。
事業アイディアを仮説検証するプロダクトを作りたい
作った製品が市場に受け入れられるか判断するために広告・営業等をして検証したい。
価値検証の完了した製品を一気に成長させるための人員増強・組織体制の構築をしたい。
つまりは、資金調達ができれば事業が上手くいく(≒仮説検証が進む)状態が出来ているタイミングとなります。
投資ラウンドとは
投資ラウンドとは「投資家が企業に対して投資をする段階」を指す言葉です。スタートアップ企業に投資する代表的な存在がベンチャーキャピタルですが、ベンチャーキャピタルは利益を最大化するため、
「自分の投資目的を果たしやすい時期」の会社に投資を行うという特徴があります。
ラウンドごとの資金調達のポイント
シード
シードとは起業前の段階を指します。
ビジネスモデルだけが決まっている段階、法人設立前の段階、商品を開発中の段階、などが当てはまります。ですから、投資家の心をつかむためにはビジネスプランを練り、質を高めることが大切です。
また、同じビジョンを持つ投資家に出会うことができれば、人柄で投資を受けられる可能性もあるので、人脈を広げることも重要です。
実際のビジネスがスタートしているわけでないので、具体的に資金が必要となる場面はまだ少ないかもしれませんが、設立費用や調査・研究費を捻出することが必要になる場合もあります。
このステージでは、まだビジネスプランの準備段階でもあるので、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの出資が多いです。投資の規模としてはあまり大きくなく、数百万円程度となります。
アーリー
アーリーは、起業直後の段階を指します。
創業融資などで設立費用を賄うことが多いので、この段階では赤字経営の企業も多いです。また、ビジネスに着手している分、投資家から見ると投資のリスクが高い状態です。
ですから、投資家の納得感を得るためにも、ビジネスプランの実現可能性を強くアピールすることが、良い資金調達につながります。
ベンチャーキャピタルからの出資などに頼ることもできますが、金融機関からの借り入れや補助金・助成金などを活用できる時期でもあります。
国や金融機関、自治体の創業支援を活用して効率的に資金調達を行いましょう。
シリーズA(エクスパンション)
シリーズAと言われる段階では、サービスや商品のリリースを開始し、マーケティングも本格的にスタートします。
シリーズA以降は、ベンチャーキャピタルからの出資が得られやすい企業ステージです。ベンチャーキャピタルからは、資金だけではなく、経営に対するアドバイスや、社会的信用を得ることができます。
それらを得るためには、自社にあったベンチャーキャピタルを見つけるのが最大のポイントです。ベンチャーキャピタルによって重視するポイントや、アドバイスしてくれる内容も違うので、それまでの投資先の状況なども調査し、選ぶようにしましょう。
ビジネスの方向性がある程度分かる時期でもあるので、ベンチャーキャピタルからの出資が得られやすくなります。資金調達の規模は、数千万円から2億円程度が多いです。
シリーズB(グロース)
シリーズBは、商品やサービスが軌道に乗りはじめ、会社をより大きくするための資金が必要となる段階です。
日本では、この段階で会社の売却や株式上場を行う企業もあります。会社規模もある程度大きくなってきて、複数のチームが並行して活動できる状況です。
ここでも、ベンチャーキャピタルからの出資が大半を締めます。投資額としては、数億円が目安となります。エグジット間近の段階なので、黒字化が一層求められます。ベンチャーキャピタルの最終目的は、エグジットを実現させて投資金額を回収することなので、それが実現可能というビジネスプランを強く示す必要があります。
資金調達額も大きくなるので、1社のベンチャーキャピタルですべてを獲得しようとするのではなく、複数のベンチャーキャピタルからの出資を検討するのもひとつの方法です。
シリーズC(レイター)
スタートアップの目標のひとつでもあるエグジットをするために、十分な利益や売上げの確保が求められている段階です。全国展開や海外進出、買収など、大きな変化を取り入れるために多額の資金を必要としています。
そのため、調達資金の額も一番多く、10億円を超えるケースがあります。