一周忌

 偉大なるロックスターがこの世を去ってから、今日でちょうど一年になる。実際の報道はもう少し後だったので、一年前の今日のわたしはまだチバの死を知らない。
 未だに実感できない。あのしゃがれ声が二度と聴けないのも、嘘みたいに思える。心に引っかかる不思議な歌詞も、もう生まれてこないらしい。
 わたしにとって、やはりチバユウスケは特別だ。がなるようなシャウトのやり方はミッシェルに教わったし、フロントマンとしてのあのカリスマ性には今も憧れている。ステージの上で悪ぶってみるけど本当は優しくて育ちがいいことも、たまに天然な発言をするところも、バンド名の由来を聞かれて毎回適当な嘘ばっかり言うところも、全部好きだ。
 でも、あの報道以来、画面の中のチバを見たときの感情が変わった。今は、悔しい。惜しい。そして悲しい。わたしはあの声を生で聴けなかった。もう二度と聴けないのだ。それがどうしても、やるせない。
 一年経っても、二年経っても、十年先も、変わらず同じことを思っていられるだろうか。きっといつの間にか受け入れてしまうだろう。だけど、忘れることは絶対に無い。憧れは永遠に続く。いつか悲しみの癒えるときまで、絶対に生きてやる。わたしが世界のどこかに生まれ落ちる誰かの憧れになるまで、這いつくばってでも生きてやる。
 なぜか今日はこのまま生きていける気がする。なぜか今日は。

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