アンティーク家具店のしごと日記9
東京は世田谷区にて、夫婦二人でアンティークの家具店をやっています。1900〜1940年代頃のものを主軸として、ピリッと空間がしまるような家具やランプなどを一つづつセレクトしています。
引き継いだからには当時以上に光るように、また大切にしてもらえますように!と、現代で使う場面を想像しながら修復の工程を決めていきます。
そんなお店です。
お店ではお持ち込み品の修復も応相談で行っています。
お店にいらしてじっくり見てくださる方に諸々の説明をしていると、これからも使いたいのに不具合がある家具をお持ちの方は、だいたい思い出してお話してくれます。それで、ご希望などを伺って取り掛かるのが、一番多い自然な流れかなとも思います。
そんな中で、10月は大きなお預かり品がありましたので狭い作業場で四苦八苦でしたがとても勉強になる経験をさせていただきました。そして必然的に店舗へ新しく出した商品はランプがメインです。。
そんなお預かり品がこちら。
4連のフォールディングチェアです。格好良いですね!
こちらの椅子はおそらく当時は↑のように革を張っていましたが、お客さま的に鋲張りはアンティーク感が過ぎるとのことで、板を切り出して金物で留めることに。座面は牛ヌメ革のナチュラル色をご希望でした。
折返しの部分だけ革漉きすることも考えましたが、強度が心配です。うまく収まるかな〜。。など考えつつ。。
構造上の修復から。糊が効いていないのでバラそうとすると全体の接合がリベットなので、コレ外すと新しい金物に変えざるを得ない。ので。。バラさずに1脚分ずつノリ打ちしていきます。(ついにこのためにクランプを買い足し…!)小さな裂け目も一つずつ圧着。
それから汚れ落とし洗浄をかけて..研ぎ作業。折りたたみなので、普通にやっていると触れない部分があるので。。即席のスタンドを作ってその上で作業です。↓はだかのすがた。
座面を張るときはかなり引っ張りながらやるのですが、その際の汗などで汚れがつくのが一番怖いのがナチュラル色の革です。定期的に手を洗いながら、角は結局ハンマーで潰しました。
通常よりも長いことお預かりしましたので、勝手な愛着もひとしおです。たとえば店舗の入り口にこんなチェアが置いてあったら…自然と人が集まる素敵なお店になるかと思います。
推定1890〜1930年代。お預かり品、アンティークの4連フォールディングチェア修復でした!
もうひとつ時間にすると賞味2日もかかっていないお預かり品の修復。バルボスレッグの1本脚ラウンドローテーブル。
こちらは何十年も前からヨーロッパと日本を行きしてアンティークを扱っている素敵なご近所さまから。売るためではなく、展示での什器としてやお宅で使ったりで30年近く共に過ごし、いよいよ天板がグラグラするとのことでお預かりしました。
天板にガラスをひいていたそうで、その間に小さなゴミなどが入るとこうなることがあります。↓
まずは天板を外そうとして…が一番時間かかりましたね。一本もビス(ネジ)が使われておらず、全てクギなので。。やっと外れた天板と脚の軸接合部。これは、かなりワイルドな作りだと思います!
ということで、冒頭に戻って完成です。
古い木部の経年変化や使い込まれた味を大切にしていらっしゃる方なので、最低限汚れを落としたら着色後ワックスで磨き上げて仕上げました。
それでは今日はこのあたりで。ユーカリのいい匂いがする店内より。
よろしくお願いします。