訪問STのちょっとエエもん紹介①~京都の酒蔵が開発したバリアフリー酒編~
皆さん、いかがお過ごしですか。
暮らしの中に”笑顔”と”感動”を!
言語聴覚士(ST )の八田です。
私は、在宅療養されている方のお家に訪問して、リハビリテーションを提供しています。
京都・伏見で360年以上続く酒造・北川本家が嚥下障害のある方にも飲んで欲しいと開発した「斗瀞酒(ととろさけ)雅香(みやこ)」というお酒があります。
今日は、このお酒について紹介します。
この「とろみ付き日本酒」は、嚥下障害のある人や高齢者はもちろん、一般の方も楽しめる「バリアフリー酒」です。
さて、商品紹介のその前に。
少しだけ「嚥下障害」について説明したいと思います。
下の図は、私たちの顔を横から見た図になります。赤色で○をしているところは、専門用語では「喉頭蓋(こうとうがい)」と言いますが、難しい用語は覚えなくて大丈夫です。
要するに。
食べ物が気管に入らないようにする「蓋(ふた)」です。重要ポイントです!
飲み込みに問題がない人は、下の図のように食べ物を食べたり飲んだりした時に、この蓋がパタンと倒れて蓋をしてくれます。食べ物は、肺に入ることなく、食道から、胃に運ばれていきます。
病気や加齢等で飲み込みが難しくなってしまうと、この蓋がしっかり機能せず、飲食物は肺に入ってしまいます。特にサラサラとした水分が先に流れて肺に入ってしまいます。
こうなると、誤嚥性(ごえんせい)肺炎を起こしてしまいます。
嚥下障害の程度によってやや異なる部分はありますが、一般的に、このようになると、やわらかく飲み込みがしやすくされた食事を提供したり、飲み物等の水分にとろみを使う事が多いです。
何故とろみを使うのか?
嚥下障害のある方は、ただの水分であると、気管を蓋で閉じる前に、さらさらと肺に入ってしまい、誤嚥につながる事がある。
⇒のどに落ちていくスピードをゆっくりにし、気管に水分が入りにくくなるようにとろみをつけることが勧められる。
じゃあ、数ある日本酒にとろみをつけたら良いんじゃない?そう思われた方もいるかもしれませんね。
さて、前置きが長くなりました。
本題に入りたいと思います。
「斗瀞酒(ととろさけ)雅香(みやこ)」は明暦3年(1657年)に京都・伏見にて創業の北川本家(京都市伏見区)で造られています。看板商品「富翁」で知られています。
製品部長の松味利晃さんはこう話されています。
「開発に当たっての手始めに、市販されているとろみ剤を調べてみました。ざっと20種類ぐらいが見つかり、「どれか1種類ぐらい、そのまま使えるものもあるだろう」と期待しました。ところが、順番に試してみるとすべて、味が変わったり、香りがなくなったりします。早い話が、おいしくないんです。そこで、「とろみをつけるために使われている成分は何か」と調べ上げ、今度はその成分ごとに試しました。結局、たったひとつだけ大丈夫だったのが、昆布から抽出されるアルギン酸です。私たちの製品は、お酒をビン詰めするときに、これを一緒に入れています。」
「斗瀞酒 雅香」は、天然由来の増粘剤「アルギン酸ナトリウム」を使用。日本摂食嚥下リハビリテーション学会が発表している学会分類2013の「薄いとろみ」を基準とし、純米大吟醸の風味を損なうことなく飲み込みやすい「とろみ」濃度を実現したそうです。
高齢化に伴って健康寿命やQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の重要性が高まる中、「酒蔵として、できることはないだろうか」と考え、「できるだけ長く、無理のない範囲でお酒を楽しんでほしい」という思いにたどり着いた結果、誕生したのが今回の「斗瀞酒 雅香」なんだそうです。
企画から開発まで4年。
2020年2月6日から全国発売なっています。
私も訪問先のお宅にこのお酒を持っていく事があります。お酒が大好きなご利用者さんは、飲み込みのリハビリに取り組む意欲がアップしますね。
在宅では、主治医、歯科医師、歯科衛生士、ケアマネージャー、看護師、リハビリ、訪問管理栄養士、ヘルパー、訪問入浴、訪問マッサージ、福祉用具、沢山のスタッフが関わっています。重度の嚥下障害がある方でも「どうしたら食を楽しめるのか」をご本人・ご家族にお話を聞きながら皆で考えています。
「これ、本当に美味しいわぁ。」胃瘻があっても。例え少量でも。ご本人の食べたい物を口に出来た時の笑顔を見ると私は本当に嬉しいです。そして、ご家族や関わるスタッフが皆同じ気持ちで支援出来る事も喜びです。
商品概要です。
<品目>
リキュール(日本酒を元にしていますが、酒税法上リキュール表示となっています)
<内容量>
180ml
<参考小売価格>
594円(税込)
<原材料名>
米(国産)、米こうじ(国産米)/増粘剤(アルギン酸 Na)
<アルコール度数>
14度
オススメの飲み方は、冷酒、ぬる燗だそうですよ!
嚥下障害がある方も、ない方も楽しめるお酒です。北川本家のホームページから買えます。あなたの大切な方と飲んでみてはいかがでしょうか。