将来、自分に家族が出来た後にまた見たいと思った映画『ミナリ』
好きだと思う映画の中では、「見ている途中から好きだと思う映画」と「見終わって、少し時間が立ってから、あの映画良かったな」も思う2パターンがある。
「ミナリ」は後者の映画に当てはまった。
ここ数年、作った映画は全て話題となるA24の最新作。ゴールデングローブ賞ノミネート、アカデミー賞ノミネートと前評判が高いため、自分の中でも無意識にハードルが上がっていたのか、見終わった瞬間はどこか物足りなさを感じた。
しかし、どうしてもラストシーンの衝撃が忘れられなくて思い返すたび、この映画の家族の愛や繊細さにはまっていった。
ミナリはアンザック監督の半自伝的脚本として作られた映画らしい。
父親の農業で成功するという夢を追って、アメリカに移民してきた韓国の4人家族。父親は仕事の成功が、家族のためだと信じて取り組むが、母はそれに違和感をもち、言い合いになりながらもアメリカでの生活を送る。祖母も一緒住むようになり、家族内の関係は少しずつ変化していく物語。
少し前、独身者は人して何か不足していると思われ、結婚し子供がいる家族は人として満たされていると言われたことがある。
しかし、結婚してるからといってだから夫婦は完璧とは限らない。父や母親、祖母だって、どこか欠けているところがある。
それぞれが欠けている部分を支えあうのが家族なんだとミナリは教えてくれた。
今となって共感できる部分があった。それは、父親の仕事の成功=家族への愛、という考え方が自分の父親と思考が似ていた所である。
当時の自分はおそらくデビット同様、そんなことに気付くことなく、夢追う父に対して母が子供の世話ばかりしていて、苦労していたんだろうなとミナリを通して、あらためて気付かされた。
アメリカに移民するという特殊な環境ではなく、よくある家庭を描いた映画かもしれない。
衝撃を受けたシーンがある。
少しネタバレになるが、ラストシーン。
家族よりも仕事(農業)を優先する夫に苛立ちをもち、ついに卸先が決まったことにも喜ばなかった妻が、ラストの栽培した作物が火事で燃える時、最後の最後は妻の方が小屋を悲しく眺めていた気がした。
家族よりも仕事をとった結果、父としての家族への愛が燃えていったことに、母としてもこれで諦められるっと言う気持ちよりも、悲しさが増していたのだと。
やはり、妻も夫を認めていたのだと思わせたシーンだったと思う。
残酷だけど、夫婦の想いを感じれた良いシーンだった。
ちなみに、『ミナリ』とは韓国語で香味野菜のセリを意味し、2度目の旬が最も美味しいことから、子供世代と幸せのために、親世代が懸命に生きる意味が込められているらしい。
まさに、ミナリって映画だ。
ミナリは、おそらく見た人の立場によって、共感する部分が変わり、感じ方も大きく変わると思う。
今、独身の自分が見たけど、将来自分が結婚し、子供ができた後に、また見たいと思った映画。