本の未来のある種の答えを示した映画『騙し絵の牙』
音楽とシンクロした演出による疾走感が心地よい。
突然社長が亡くなられたことにより、大手出版社内で繰り広げられるパワーゲーム。カルチャー雑誌「トリニティ」の新しく編集長となった速水(大泉洋)は、廃刊雑誌の候補であることを知る。雑誌の売り上げを伸ばすため、型にないアイデアで企画を行うが、そこには雑誌の売り上げ以上の目的があった。。
予想できない裏切りやテンポ良い展開、音楽と状況がシンクロしており、見ていて気持ちよかった。
「騙し絵の牙」は見る前から非常に気になっていた映画であった。
まず、原作塩田武士さんについて大泉洋さんを小説であてがきするという企画から始まったという作品。
映像化される前から大泉洋さんをイメージされた小説の待ちに待った映画化。
もちろん主人公である速水を演じるのは大泉洋さんであるが、周りのキャストも豪華。
企業内のパワーゲーム、登場人物も多いが、誰がどこの立場なのかわかりやすく描かれて非常見やすかった。
原作とは少し異なる視点から描かれているということだけど、大泉洋の人たらしだけど目標に一直線に向かっていく姿がずるくてカッコよかった。
松岡茉優の小説を愛する高野も素晴らしかった。
ただの面白いでは終わらせられない。
電子書籍の普及やAmazonなどのネット販売が当たり前になってきている今の時代に出版業界の仕組みは成り立たなくなってきている。大手の本屋以外の個人店は徐々に数が減ってきているなかで、今後どういうふうに本は生き残っていくのかについて、考えさせられる映画でもあった。
個人的には現実的には厳しいかもしれないけど、本作のラストの展開のようになっていってほしいなと思う。
これは本の未来の答えを示した映画なのかもしれないな。
そして、特に本作で印象強かったのは音楽とのマッチング。
吉田大八監督が脚本と合わせてこだわったとコメントされていた劇中の音楽。本作の音楽担当しているバンド「LITE」がとにかくカッコ良い。確かに監督自身がこだわったというコメントを体感できると思う。
あるシーンでは、キャストの動きによって音がシンクロしており、動きが止まると音も止まる、再び動き出した際に音も合わせて動くなど、シンクロ率の高さが気持ち良い。
そして、もう一つ。
パンフレットのクオリティが凄い高かった。
監督、キャスト、原作、相関図はもちろん、
会社の歴史、雑誌の工程、そして劇中に出てくるカルチャー雑誌「トリニティ」の特集が一部載っているのが素晴らしかった。
暫定ですが、今年出会ったパンフレットのお気に入りベスト3には入ってます!