【脚本】LIVER


〇秋山の自宅(朝)
   ベッドで丸くなっている秋山勇太(25)。
   ピピっという電子音が鳴ると、もぞも
ぞと動いて体温計を確認する。
秋山「37度5分・・・」
   枕元のスマホをとって病欠の連絡をす
る。
   また布団に潜って。
秋山「最悪・・・」
 
〇回想・地下鉄駅のホーム(朝)
   通勤ラッシュ時間で混んでいるホーム。
   奥歯を気にしながらぼんやり歩く秋山。
   電車が入ってくる。
   駆け込んできた人に突き飛ばされて鞄
の中身をぶちまけてしまう。
   慌てて拾い集める秋山。
   混雑したホームで迷惑そうに秋山を見
ながら立ち去る人々。
広い上げたスマホの画面が割れている。
秋山「マジか!」
   電車が駅を出ていく。
秋山「最悪・・・」
 
〇元の秋山の自宅
   秋山、だるそうに体温計に手を伸ばし
て体温を測る。
電子音が鳴って、取り出した体温計を
見て。
秋山「38度って・・・上がってるし・・・」
   寒そうに布団を引っ張り上げて丸くな
   る。
 
〇回想・社員食堂
   同僚と昼食をとる秋山。しかし、全く
箸が進まない。
同僚「お前、顔腫れてるぞ」
秋山「今朝から奥歯が痛くてさ」
同僚「歯医者行けよ。ぜんぜん食べてないじ
ゃん」
秋山「痛くて食えないんだよ。歯は痛いしス
マホ割れるし、ついてなさすぎ。最悪」
 
〇回想・歯科医院
   診察台で治療を受ける秋山。
歯科医師「あー、親不知が曲がって生えてま
すねぇ。抜かないとダメだな」
   秋山、ぎょっとするがしゃべれない。
歯科医師「麻酔しますねー」
 
〇元の秋山の自宅
   布団の中で頬をさする秋山。
秋山「薫・・・」
 
〇回想・カフェ(夕)
   思い詰めた表情でテーブルについてい
る山崎薫(25)。
秋山がやってくる。
秋山「遅くなってごめん、薫。歯医者が長引
いちゃってさ」
薫「大丈夫?」
秋山「親不知抜いてきたよ。なんかもう今日
は全然ツイてなくてさぁ。そうだ、メ
シ行くだろ?どこにする?」
薫「話があるの」
秋山「メシ食いながらでいいだろ?行こうか」
   立ち上がりかける秋山。
薫「他に好きな人ができたの」
秋山「は?」
薫「ごめん。もう勇太とは会えない」
   立ち去る薫。
秋山「え?」
   抜歯の傷がズキンと痛む。
秋山「最悪・・・」
 
〇元の秋山の部屋(夜)
   布団の中で震えている秋山。
   電子音が鳴って、体温を確認する。
秋山「39度って・・・」
   震えが止まらない。
秋山「そういえば歯医者で薬貰ったっけ」
   ふらふらしながら薬を飲んで、また布
団に潜る。
秋山「最悪・・・俺このまま死ぬのかな」
   眠りに落ちる。
 
〇同(朝)
   目覚める秋山。
   体温確認すると平熱。
秋山「(ほっとして)ハラ減ったな」
   シャワーを浴びて風呂場から出てくる
秋山。洗面台の鏡で口の中を見る。
秋山「傷、塞がってるなぁ」
   歯を磨きながら
秋山「なんか俺、めっちゃ生きてる。俺の体、
すげー生きよとしてるなあ」
  身支度をして玄関を出る。
 
               おわり


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