呼吸を忘れるほどに作品に引き込まれる話

BG第5話が未だ処理しきれずにいる。

第4話後の予告を見て「来週は沢口メイン回だ!ワクワク!」なんていうややお気楽なテンションだったのだが、観終わった今はお気楽テンションだけでは済まされないテンションになっている。勿論、前作でメイン回らしいメイン回もなかった沢口くんを思うと、今まででいちばんメインをはってた!と嬉しく思える納得の内容だった。これは間違いない。本当にありがとうございました!!

しかし、納得のメイン回だったからこそ、その濃密さを処理しきれずにいるのだ。
このBGという作品は開始から終了までずっと視聴者を作品のなかに引っ張りこんでくれるような世界観の構築がなされている。
だからこそ、沢口くんのこころのうちを想像してしまってちょっと苦しい、のである。
もう少しで彼女と半年記念だと自慢する顔、彼女を本気で心配する顔、まゆさんに「なんでもないです」と言葉を濁す顔、彼女との写真のなかの顔、沢口くんのいろんな顔が見られた。特に、終盤の複雑なこころのうちを表すような苦しそうな顔。前シリーズから通して、あんな顔は初めて見た。

沢口くんの基本的なキャラは「ノリが軽くてちょっと調子のいいヤツ」ってな感じである。でも、そんな彼だが、沢口くんは結構自分のなかでいろんなことを考えている人だと私は勝手に思っている。前シリーズ、課長が撃たれたときだってそうだ。一報を受けて狼狽て、すぐに飲み込めなかった沢口くんはきっとあの後ひとりでボディーガードという仕事について考えたことだろう。
島崎さんに「やめ、たいの?辞めたい?」と問われた時に正直にわからない旨を述べた沢口くんは一生続けられるような仕事ではないのではという気持ちもこぼしている。あのシーンは「ややこしいことは考えてない若手」的なポジションの彼が、彼なりにきちんと考えていることが垣間見える良いシーンだった。自分がいちばん若手という環境のなかで、自分の立場やポジションが「わかっている」タイプに見えるときもある。

そんな沢口くんの心の中は、第5話はきっとめまぐるしかっただろう。
愛する彼女がひったくりに遭って怪我をしたかと思いきや、本当は以前からストーカー被害に遭っていて、信頼できる先輩たちに警護をお願いしたのに当の彼女は不審者に遭遇してもなお大丈夫だから!と言う。挙げ句の果てにストーカーの正体は彼女の上司だし、自分を守ってくれようとしたのが理由とはいえ彼女は話してくれていなくて、物語の最後には距離を置こうと言われてしまう。
「凪子を守りたかった、だから話して欲しかった」と「せいちゃんを守りたかった、だから話せたかった」がすれ違ってしまった。お互いを思うが故の結果だから、余計にその心境は複雑だろうと想像する。
もうすぐ半年記念、というのもまた絶妙。凪子さんの部屋に飾ってあった2人の写真や凪子さんのスマホの待ち受け。まだ半年経ってないけどきっと2人にはいろんな思い出がある。沢口くんが将来を考えるほどの幸せがそこにあったのだと思う。
凪子さんと沢口くんは単なる男女の関係性に留まらず「大切な人どうしの関係性」が育まれていく過程にあった。だからこそ「ストーカー事件解決!まるっとハッピーエンド!」なんて、簡単にはいかずにあの結末を迎えたのではないかと想像する。これまで基本的に「一件落着的スタイル」だったから、余計と今回の話は余韻が効いてくる。
たびたび私はこのドラマの本質を「自分で考えて行動する」ことだと言ってきたが、島崎さんと高梨さんがそばにいなくなったことで沢口くんはひとりで考えて能動的に行動する場面が増え、その分自分で考えて動く力も磨かれてきたことだろう。そういう意味で、今回の話は沢口くんの成長も感じられた。と、同時に、まだまだ伸びしろがあることも感じた。先輩たちとはまだちょっと違うのだ。少しずつ成長していく、そんな沢口という人物の一面を見た。

なんだかわかりにくい表現ばかりしてしまったけど、伝わってるだろうか。それくらいの複雑な気持ちが第5話にはあった。


島崎さんと社長の対峙シーン以降の沢口くんの表情は苦しい。
少し話が全般的なほうにいってしまうが、間宮さんが演じるキャラクターの苦しそうな表情は観ているこちらまで苦しくさせるほどの力があると私は思っている。
たとえば間宮さんが主人公の女の子の兄を演じた2019年の映画『ホットギミック』のとあるシーン、妹を見つめる表情と目はあまりにも苦しくて、劇場で初めてそのシーンを見たとき私は文字通り息を止めてしまった。「どうしてそんなに苦しそうな顔ができるんだ」と思いながら息を止めてしまった。
私は芝居に関してド素人である。ドラマや映画を観るのが大好きなだけの一般視聴者だ。そんな私の抱く感想だから極めて感覚的なもので、個人的なものなのだが、間宮さんが表現する苦しさや胸の中がぐちゃぐちゃになったような複雑な心境の表情は観るものをどきりとさせる、と思う。
演技、作品ということをその瞬間ふいに忘れて、登場人物の存在がそのままリアルな、実在として目に映る。
本当に個人的な感覚的なものだ。見た瞬間、胸のあたりズキッとするというか、グッと持っていかれるというか、ゾクッとするというか。なんと言えばこの感覚が伝わるのかわからないのが口惜しいが、登場人物が台詞として口には出さない心の中をぶつけられた感覚になる。その人物の深淵を覗き込んでしまったような感覚になる。(うーん、少し大袈裟かな)

でも、それは苦しいのだけれど、同時に好きな感覚でもある。もう本当に個人的な考えだが「推しの芝居を見てそれほどまでに感情を揺さぶられること」はあまりにも幸せだと思うからだ。凄まじい芝居は時に「怖い」と思わせる力すら持っていると私は思っている。私は何度かある。あれは幸せだ。劇場からの帰り道、推しの芝居の魅力で頭と心がいっぱいになれる幸せ。


少し話が逸れてしまったが、そんな話をしたくなるほどにBG第5話は濃密な1時間だった。
最後の社長とのシーンの沢口くんの表情も気になってしょうがない。ラスト2話、どんな展開が待ち受けているのか、早く観たい気持ちとまだ終わらないでという気持ちが私のなかで喧嘩しそうだ。

願わくば、沢口くんと凪子さんにはまた元に戻る未来がくればいいな。


2020.7.17  saki

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?