LADウィル・スミスのエクステンションは割高
日本時間3月28日にLADとウィル・スミスが10年140Mのエクステンションで合意したと報じられました。第一印象はありえないほどの格安契約と個人的にも思いましたし、多くのMLBファンもそのように感じているようでした。
◯冷静に比較するとむしろ割高
割高である具体的な理由は動画でも取り上げたので是非ご覧いただけますと幸いです。
比較対象は過去に高額FAで契約した捕手とエクステンションした捕手です。簡単に言えば35歳以降はロスター入りさえしていない選手ばかりです。怪我でコンバート又は引退に追いやられたバウアー、ポージー、35歳までの契約を終えて、引退又は1年2.5M以下のマッキャン、マーティン、グランダルを見れば、スミスを35歳以降囲うのはほぼ無意味である公算が大きいと思います。
ヤディ―ア・モリーナですらWARが2.0を超えたのは35歳シーズンが最後でしたし、リアルミュートも32歳にしてWARは1.5まで低下。他の捕手との比較を考慮すると、バウンスバックの可能性は低く現行契約終了後は契約に苦しむ立場に追いやられると考えます。コントレラスは1年目からWAR2.4なので尚更その可能性は高いでしょう。
このように考えると現状一番マシなリアルミュートとの契約と並べてみてもスミスは割安とは言えません。スミスの契約を調停期間2年、FAイヤーの最初5年(31-35歳シーズン)、FAイヤー最後の3年(36-38歳シーズン)に分けて、普通に調停してFA市場に出てリアルミュートと同様の契約を結んだ場合を考えた表です。23年オフにスミスは調停2回目を1年8.55Mで回避したので、3回目を分かりやすく11.45Mとして2年間の合計を20Mとしました。そのうえでFAイヤーの最初5年をリアルミュートと同額にすると、36歳以降の3年は4.5Mとなります。一見安いように見えますが、36歳以降に4.5Mより多く稼いだのは前述の選手ではモリーナのみです。
後払い分を現在価値に割り引いていないという反論もあると思いますが、そもそもスミスがFAまでリアルミュートと同様の契約が得られるだけのパフォーマンスを維持できるか分からないリスクをLADが背負っています。LAD視点で見れば、後払いによるディスカウントはリスクプレミアムに見合っているとは思えません。
また、相場が上がっている点を踏まえたとしても、あくまで30代前半のサラリーをどのように想定するかという話に過ぎません。たしかにもう少し数字を積めばLAD視点でのリスクプレミアムは増えると思いますが、それがFA前のスミスの怪我やパフォーマンス低下のリスクに見合うかと言われると疑問です。さらに捕手の選手寿命が延びるわけではないので、35歳以降をコントロールできることはメリットでも何でもないという結論は変わらないと思います。
今回、自分も含めて第一感で安いと感じたMLBファンが多かった中、よくよく調べると大いに異なる結論になったと思ったのでnoteに取り上げました。