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美しくあろうとすることは恥ずかしくないよ

好きなYouTuberがいる。可愛いらしいお顔が好き。ていねいに暮らしていることが好き。着ているお洋服が好き。なにより、紡ぐ言葉が素敵で好き。

そんな私の大好きなYouTuberのしおちゃんが少し前にラジオを始めた。そこで「私たちは美しくありたい」という話を聞いて、長年自分の中にこびりついて取れなかった何かが落ちたような気がした。


美しくあろうとすることを私はずっとどこかで遠ざけてきた。なんだかそれはすごく恥ずかしいことで自分の身の丈には合わないような気がして、そんな自分を誰かに見られることがいやだった。

しおちゃんが話す内容すべてがこれまで自分が考えながらもとくに言葉にしてこなかったことたちで、こんなに同じ感覚を持つ人がいるんだと少しびっくりした。


幼稚園から小学校低学年の私。スカートが好きだった。ピンクが好きだった。ヒラヒラフリフリしたものが好きだった。可愛いもの全部好きだったあの頃の私。同じようにいつもスカートを履いている女の子が周りのクラスメイトから陰口を言われていることに気づいて、この世界で可愛くあろうとすることは悪なんだと気づいた。

平凡でいること、突出しないこと、すべてに置いてみんなと同じであることが集団のルールで、はみ出した者は攻撃される。幼さって恐ろしい。いつからか私はスカートを履かなくなった。好きな色は水色になった。学校に着ていく服を考えるのをやめた。洗濯で乾いた服をただ着始めた。

可愛くあろうとすることは悪である。呪いがかけられた。

中学生になると、同い年のいとこはメイクを始めた。無理やり二重にした目の上に乗るバサバサのつけまつげと、本心が見えないような真っ黒なカラコン。拙い部分ももちろんあったけれど、美しくあろうとする彼女はもうそれだけで綺麗だった。それなのに、私はどこかでずっと馬鹿にしていた。中学生でメイクするなんて、と。

呪いをかけられた私は毒されて、他人にまた呪いをかけてしまうような、童話の魔女みたいになってしまった。


高校にあがると周りは一気に大人になった。スカートを短くしてメイクをして髪の毛を巻いて、みんな自分に魔法をかけて舞踏会へ行く準備をしている。本当は全部うらやましかったのに、私は厳しかった部活を盾にして何もしないままでいた。美しくあろうとすることを遠ざけて、自分の気持ちに蓋をして過ごしていたら、トイレでリップを塗り直したり前髪を直したりすることでさえ恥ずかしくなっていた。


ただ私には救いもあった。それは母が美しくあろうとする人だったこと。そして、私のその感情を変に茶化さずに受け止めていつも助言をくれたこと。

高校生のころ、当時付き合っていた人とデートに行く日。母は簡単にお化粧してくれた。おしろいとチークとリップと、うっすらと血色が良くなるくらいの簡単なメイクだった。どこかに捨てて見ない振りをしていた、美しくありたいという気持ちを拾って綺麗に磨いて私の中に戻してくれた。


美しくありたいな、綺麗でありたいなという気持ちは確実にあるのだけど、もう私はどうすればいいのかわからなかった。メイクをしたり髪の毛を整えたり可愛い服を着たりする自分を、そんな着飾ってどうするの?と批判する自分がずっといる。頑張っちゃって馬鹿みたい、身の丈に合ってない、不相応だよって言われてる気がする。誰もそんなふうに言わないのに私が私自身を認めてあげられない。

大人になって少しずつ恥ずかしさは薄れてきたけど、それでも消えはしなかった。長年こびりついた思想はちょっとのことでは落ちてくれない。

そんなときに聞いたのがしおちゃんのラジオだった。しおちゃんは美しくあろうとすることについてこんなふうに話していた。

美しくあろうとか可愛くあろうとすることって恥ずかしくないんだって。人間誰しも当たり前に思うことで、全員が思うことで、それに向かって努力している姿は恥ずかしくないんだと。
(略)
だってさ、理由なんてないよ。だってみんな理由なく美しいもの好きじゃん。理由なく美しいもの見たらストレス解消されたりさ、なんか悩みが吹っ飛んだりさ、心が癒されたり、するじゃん。
(略)
だけん、まあ、美しくあろうとすることは恥ずかしいことじゃありません。

しおの日々ふせん/かわいくなりたいは恥ずかしくない

いつも楽しくラジオを聞いているのに、この回を聞いたときは涙が出てきた。それと一緒にすごくすごく腑に落ちた。そして、自分自身の中にある美しくありたいという気持ちは汚くて恥ずかしいものではなくきれいなものなんだと思えた。ありがとう、しおちゃん。


実際に美しくあれるかどうかは置いておいて、美しくあろうとすることを恐れない1年にしていきたい。自分なんて、と思わないこと。私自身が誰より自分を愛すること。そうやって過ごして、今年の年末に美しくあろうと過ごした自分を思いきり抱きしめてあげたい。それが私の今年の目標。

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