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紙が買えずに試験が中止!

財政悪化が著しい、南アジアのスリランカ。

コロナ禍が始まる前の2019年は、国内総生産(GDP)の12.6%を観光産業が支えていました。他には、繊維製品、紅茶やゴムなどが外貨獲得源です。

でも、コロナ禍で観光収入が大きく落ち込み、さらに最近の原油価格高騰で、2022年2月末時点の外貨準備残高は23億ドルまで減少…。

ちなみにタイの外貨準備残高は、スリランカ同様に観光収入が落ち込んでいるとはいえ、それでも2,500億ドル前後。スリランカの100倍以上確保しています。これをみても、スリランカの外貨準備残高の少なさは、目を覆いたくなるほどです。当然のことながら、石油や一般消費財を輸入に頼るスリランカとしては、外貨準備残高の不足は輸入品の支払いに深刻な影響を与えます。

だからここのところ、火力発電所をフル稼働できず、1日最大7時間30分もの「計画停電」を行わざるを得ない…。

こんなこと、1983年から2009年まで続いた内戦時代(スリランカ政府と、スリランカ北部タミル人多数派地区の分離独立を目指した「タミル・イーラム解放の虎」との戦争)でも、ここまでひどくはありませんでした。

スリランカは内戦終了後、復興を目指す中でバラマキ政策が行われ、財政が一気に悪化した…まさに「政治の判断ミス」です。先行きの見通しをしっかり立てずに、不必要な公共事業を乱発。その中でも、99年間もの港湾運営権を、破格の金額で中国に譲渡せざるを得なくなったハンバントタ港は、その最たるものでしょう。この港湾開発は、当時のマヒンダ・ラジャパクサ大統領(下の写真)が承認したものですが、2008年に建設工事が始まった時点から、この地域に大規模な港湾は必要とされていませんでした。しかし同大統領の政治地盤だったことから、港湾建設によって、地元に大きな経済的利益をもたらそうとしたのだと、当時を知るスリランカの人たちは受けとめています。

ハンバントタ港はひとつの事例ですが、採算無視の公共事業が各地で行われたことから、建設資材や建設機械の需要が急増し、大切な外貨がどんどん国外に流出してしまったのです。

その結果。
スリランカの経済中心地、コロンボを抱える西部州(Western Province)は、3月28日に予定していた学年末試験の中止を発表。これにより、同州内の学校に在籍している学生、合わせて約300万人が試験を受けられなくなりました。スリランカの教育制度では、学年末試験の結果が進級の可否に大きく影響しますから、これはもう、たいへん深刻な問題です。

なぜ、こんな事態になってしまったかというと…。
西部州が必要とする、試験問題を印刷する紙とインクの購入(どちらも、主にインドから輸入)が、外貨不足のためにできなくなってしまったから…。スリランカ政府が、紙とインクの購入に充てる外貨を、高騰する石油価格に対応するためそちらに回すことにしたのです。

こんな理由で、大切な学年末試験が中止に。スリランカ国民にとっては、たいへん恥ずかしいことのようです。

外貨不足のため、ガソリンや食糧など、輸入に頼っている一般消費財の流通が、すでに滞っています。それゆえ買い物に長い列ができ、一方で反政府運動が各地で行われています。しかし今、反政府活動に力を入れたところで、すぐに外貨が手に入るわけじゃない…。インドはここぞとばかりに、スリランカに財的支援を行っていて、「おまえ、中国とは距離を置くんだぞ」とスリランカ政府に圧力をかけています。中国政府は…どうやら今は、スリランカ支援に関わっている余裕はなさそう…。

外貨準備残高不足。この影響は、かなり深刻です。しかも短期的な解決策は、どこかの国か国際機関に緊急援助を頼むこと以外にありませんから、根本的な問題解決をしようにも、これは長期化します。

政府のトップが判断ミスをすると、国民にこれだけの大きなツケが回ってくる。

ヨーロッパのどこかにも、同じような状況下にある某国があるような。こちらのケースでは、国民に回ってくるツケは、さらに大きなものになるかも知れません。

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